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■ FINANCIAL #04

プロとして真贋を見極める vol.1

プロとして真贋を見極める

今回のフィナンシャル対談は、ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社 代表取締役副社長の仲川康彦氏と、FP業界の第一人者として、毎日のようにさまざまなメディアに登場されている有限会社ファイナンシャルリサーチ 深野康彦氏との対談です。

いつもは投資の啓蒙や家計管理の重要性を、わかりやすい解説で説いておられる深野氏に、今回はあえて企業の経営者向けに、また同じ業界であるフィナンシャルアドバイザーの方々へのメッセージとして、プロとしてあるべき真贋について語っていただきました。
仲川氏: 深野さんはFPの第一人者として活躍されていて、業界の流れの変遷を見てこられましたが、20年前にFPをスタートされてから今日に至るまで、世の中の経済も大きく変わってきていますし、また個人の資産運用についての考え方や、金融商品のサービス自体も大きく変わってきていますね。

深野氏:FPが日本に入ってきたのが86年、協会ができたのがその翌年なんですが、最初にFPがブームになったのは実は資産税なんです。当時のバブル景気の相続税対策に一番ニーズがあって、我こそはFPだと言っていた人たちは、圧倒的に税理士の方が多かったんです。

当時は「税テク」とか「財テク」という言葉が流行りましたけど、税理士がいかに節税させるか、それがFPという形になった。企業の経営者も、資産をどう繋いでいくか、あるいはより有効に活用するために、土地有効対策や保険を節税でどうするかといったことが一番強かったですね。

仲川氏: なるほど、当時のバブルで膨張した資産を、どう守るかが主眼だったということですが、バブル崩壊後には、いわゆる資産デフレに陥ってしまったという時代の変遷を経て、今日現在は政権も変わり税制改正となると、今度は取得税や相続税などの問題に、資産家や企業経営者は頭が痛いことになっていますよね。

深野氏: 圧倒的に節税が多かった時代からバブルが崩壊して、節税なんかしないほうが良かったんじゃないかということにもなった。そこでここにきて「ライフプラン」という話になってきていますけど、また何か来れば節税と、行ったり来たりということになるんでしょうね。

その中でも、税制に対して中小企業がどう対応しているかというのは、バブル当時も今も変わらないと思うんです。その案件の数が多いか少ないか、或いは金額が大きいか小さいかの違いでしょうね。

仲川氏: 資産家や経営者の方々にとって根っこになる部分、つまり資産を守るということに変わりはないと。

深野氏: ええ。資産を保全と共に継承していくというところは変わらないと思います。

それよりも、ここ4,5年くらい前からですかね、日本経済が破綻するといったようなトンデモ論が蔓延してきて、そこに対する真贋というものがないじゃないですか。

そこに非常に興味があるというか、「本当のところはどうなの?」という不安がありますよね。知人の税理士の先生に聞くと、やはり最近はそういった話が多いと。

中小企業の経営者の方にすると、いままでの資産の保全といった中長期な尺度から、日々の業務や銀行の破綻不安といった、近視眼的な見方になってきている。世相的にも、経営をどうやりくりしていけばよいのかということなんでしょうね。

仲川氏: 大局をつかむ予測は難しいですし、悲観論というのは非常にグサっと来るので、マスコミにしても受け易いというバイアスがかかってしまうのでしょうけど、日本は借金大国で、国債が暴落してどんどん冨を失ってしまう、もう崖っぷちに来てるんだかのような懸念がなされていることに対して、深野さんはFPとしてどう見ておられます?

深野氏:そのトンデモ論に対して、真贋の目を持つ経営者さんは少ないわけですから、不安になってしまうのは仕方ないことだと思うんですよ。それこそメディアに対して苦言を呈することになるんですが、そもそもメディア自体に真贋があるのかということなんです。

まあメディアも商売ですから、バイアスが多少掛かるのは仕方ないとしても、どうなんでしょうかね、酷な言い方をすれば洗脳しているというか、プロバカンダになってしまっている。そこで真贋を見る目を養えないとなると、そこに流れてしまうんでしょう。ただそうした中でも、きちっとモノの本質を伝えている方もいらっしゃいますから、そういう方々にどんどん表に出ていただくとか、広めていくことも私の役目なのかなと思っています。

仲川氏: 今FPと名乗られる方というのは、以前に比べるともう、爆発的に増えていますね。その中でまさにキーワードとなる真贋を見極めるスキルや能力が問われるかと思うんですが、FPの第一人者である深野さんから見て、真贋を見極めてアドバイス業務ができている方というのは、ざっくりどのくらいおられると思います?

深野氏: 1割もいないでしょうね。そんなこと言うと怒られるかもしれないですけど。私自身FPで懇意にしている人って少ないんですよ。なぜかというと、やはり視野を狭くしたくないというのがあるんです。やはり違う分野の方と接することによって吸収できることのほうが多いですから。

仲川氏: 全く共感します。深野さんはこの業界が良くなって欲しいという想いで活躍していらっしゃる。私はインデペンデントフィナンシャルプランナーという、いままで日本に無かった業種をこれから広めようとしているんですが、私が危惧していることに、業界に人が増えてくればくるほど、玉石混淆になってくる。

そうなると、もしその中でスキルの低いコンサルしかできない人が出てきてしまうと、「なんだ、たいしたことないじゃん」というレピュテーションが業界で下がってしまうことが非常に良くないことかと。

深野氏: それは本当に仰る通りで、FP業界もまさに玉石混淆で、メディアに出ても、トンデモないことを言ってる人もいっぱいいるんですよ。それをメディアのほうも真贋が無いからそのまま載せてしまう。それって如何なものかと苦言を呈したこともあるんです。

これだけFPが粗製乱造でどんどん増えてきて、それこそ誰でも資格取ればFPと名乗れるわけですよ。そうなるとカタチ上、お客様から見ると「先生」なんですね。その先生の真贋や力量なんて、一般の方には判らない。キャリア何年やればいいかというと、それも別問題ですから。

そう考えるとやはり、日々切磋琢磨して自分のことをもっと知らなくちゃいけない。私から見るとFPは勉強しなさすぎですよ。物事を俯瞰して見る目が全くない。俯瞰して見る目がないということは、これ新聞と同じなんです。新聞というのは今起きている現象、事象を伝えることはめちゃくちゃ上手い。でも時間軸を長くして中長期の視点となると、何かの特集以外ほとんど無いでしょ。日々を追ってもせいぜい1週間くらいですよ。それに皆慣れてしまってるんです。

 

2013/01/31


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