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経済成長の軌跡で見るアジア進出 vol.1

経済成長の軌跡で見るアジア進出

今回のフィナンシャル対談は、ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社 代表取締役副社長の仲川康彦氏と、ベトナムを始め、日本企業の海外進出を支援されている小山貴広氏との対談です。

多くの日本企業が海外進出に興味を持ち、実際に進出されている昨今、その情報は入ってくるようで、実状は解り難いと言われます。海外進出の中でも、なぜアジアなのか。経済成長の軌跡から俯瞰した現地の実情と、金融の世界から見たアジア進出についてを、お二人に語っていただきました。
小山氏:今アメリカの不動産をやりたいという、ベトナムの富裕層が増えているんですよ。

仲川氏: ベトナムの富裕層ってなんかピンとこないんですけど、ベトナムはまだ一人当たりのGDPってまだ3,000ドル越えてませんよね。

小山氏: ええ、全然。2,000ドルも超えていませんから。

仲川氏:通常経済の教科書的にいくと、一人当たりのGDPが3,000ドル超えると、そこから経済成長が加速すると言われてますけど、ベトナムやASEANはまだそこまでいかなくて、日本でいうと1960年代ぐらいの経済状況ですよね。でもその中でも富裕層というのはいるんですか。

小山氏: ええ、いますね。1%くらいで本当に少ないですけど。

仲川氏:なるほど。それだけ経済がすごく伸びているということですね。新聞やマスコミを見ると、アジアは5%から6%の経済成長率だと。でも、私もタイやカンボジアに行った事もありますけど、道路もガタガタで整備されていないし、街もあまりキレイじゃない。

小山さんはしょっちゅうアジアに行っておられて、日本の投資家の方々をアテンドされていますけど、そういったダイナミズムをどういうところで垣間見たりします? やっぱりどんどん投資してくださいという感じなんですか?

小山氏: 経済成長率が5%とか6%という話はよく出てくるんですけど、現地に長くいたり慣れてくると、そういう数字に全く関心がなくなりますね。

仲川氏: 関心がなくなる?

小山氏: ええ。その5%とか6%という数字で、その国の実態経済は図れないですし、またその差がどのくらい違うかということも判らないですから。

例えばベトナムだとハノイやホーチミンなどは、10%や12%といった成長もしていますから、局所局所で見ると、すごく栄えているところもあるし、全くのダメなところもある。そこで全体で5%という数字になると、それがどういう意味があるのかと思うんです。

仲川氏: 確かにそうですね。地域によっても違うし、業種業態によっても全然違うでしょうね。アジアの成長と言えば、どうしても「世界の工場」といったイメージの発想になるんですが、やっぱり潤っているのは製造業なんですか?

小山氏: うーん、そこに大きな誤りがあるんですよね。

仲川氏: あ、違うんですか?

小山氏: ええ、なぜそういうイメージになるかというと、日本が今まで高度成長してきたメインが製造業でしたから、どうしても日本人の思考回路の中にそれが埋め込まれている。だから、アジアといえば製造業、という話が真っ先に出る。でもそこが問題で、もう少し柔軟に考えるべきですね。

仲川氏: 具体的にはどういう問題が?

小山氏:仲川さん、ベトナムって今、景気が良いか悪いかどちらだと思います?

仲川氏:どちらかというと不景気ですよね。

小山氏: ええ、ものすごい不景気なんです。現地の経営者に聞いても、商売が廻らない、全然ダメだと言うんですね。日系企業に就職している人たちも、仕事がないから月の半分が休みになると。そういったことが頻繁に起きているんです。

仲川氏:ベトナムは先の経済政策に失敗していますからね。投資の世界でも、数年前のベトナム(投資)ブームでベトナム株に飛び乗ってドボンして。いまだにベトナムファンドをやってる投資家を見ると、にっちもさっちもいかない人がかなり多い。でも、もうこのままダメなのか、長い目で見るとどうなのか、というと?

小山氏: そこがすごく重要で、やはり時間軸。時間軸を考えるのが必要なんです。べトナムが1986年に経済開放政策が導入されて、そこからの10年、さらにそのあとの10年とでは、発展産業が全く違う。

例えばベトナムとミャンマーを比べると解り易いですね。ミャンマーは昨年市場開放と民主化が進んで、今ものすごくたくさんの日系企業が行ってますよね。今まで海外なんか行ったことない人まで、ミャンマー行ってくる、とかね。いきなりミャンマー?って思うんですけど(笑)

一方ベトナムは1986年の経済開放政策から現在まで、その間に通貨危機もありましたし、リーマンショックもありましたけど、一応なんとかやってきていますよね。

世界の経済も全体が上がってきていますし。じゃあ、ミャンマーとベトナムが、同じように成長をするかというと全然違うんです。

まず国の転換期に最初に入るのは足の速い資金。つまり不動産や証券といった金がまず入って、そこでどっと盛り上がるから、如何にも成長しているように見える。

これから来るぞ、新興市場もできるぞという話で皆飛びつくわけです。でもその資金は足が速いから、すっと冷めてしまう。これがベトナムで起こりましたから、ミャンマーでも絶対起るんです。

仲川氏: ええ、同じ事が起こりますよね。絶対起こると思います(笑)

小山氏: でも経験していない人は解らない。ベトナムもこれまでも工業団地があったんですけど、そんなに本腰じゃなかったんですね。目先の金を獲得したいからと不動産、証券に走った。けれどダメになった。やっぱり製造業をやらないといけないんだなと政府も気がついたんです。

ただ、製造業というのは足が遅いんですよね。それで今までと同じように成長できるかというと、じわじわ、じわじわしないと成長しないんです。なぜかというと、お金がお金を生むときって、不動産だと資金を突っ込めば良いんですけど、製造業の場合、製品1つ作るのに部品も要る、原材料も要る、技術も要る。全部用意してから最後の完成品なので、ものすごいスローなんですね。

なので経済もなかなか盛り上がらない。ですから、日本の国内がダメだから、他の国、アジアで製造業をと言われても、まあ方向性は間違いではないけれど、じゃあ今年?来年?となると、うーんという感じです。

 

2013/02/04


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