■ MANAGEMENT #02

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■ MANAGEMENT #02

組織改革と労使問題

組織改革と労使問題

今回は、組織力分析テスト「マネジメントプロファイリング」を開発された、一般社団法人日本人材開発研究所 代表理事であり、松山大学キャリアマネジメント論講師の奥野嘉夫氏と、社会保険労務士 酒井誠氏の対談です。経営者目線の労使問題について語っていただきました。
問題発起してからわかる就業規則
奥野氏:酒井先生、最近はどういったご相談が増えています?

酒井氏:経営者さんからのご相談で多いのが有給休暇だったり、休職や解雇の問題ですね

奥野氏:それらの問題ってどこから上がるのが多いです?

酒井氏: 今はネットの発展で情報が増えて知識が増えたというのもあるんですが、相対的にいわゆる法令意識の低いところから起きやすいですね。非正社員層に権利を主張してくる割合は多いです。

奥野氏:なるほど。評価されにくい対象でもありますね

酒井氏:そうです。中には就業規則がないというケースもありますし、見たことがないという人もいます。あまり評価されていないと感じる人からの問題発起が多いですね。

奥野氏:私は主にベンダーさん、いわゆる店舗などのサービス業にクライアントが多いので、正社員も非正社員も、一つの組織内とみなしますから、一緒に対応するんですね。仕事の評価は正社員もパートもないですから。

企業からするとそうではないんですね。評価されないと感じるとだんだん様々な行動に出てきます。最近はうつ傾向の方が増えてきていますね

酒井氏:多いです。本人に自覚がある場合はいいんですが、ない場合はいろいろ困ることもありますね。

就業規則に、そういった想定の項目がないケースが多いので、経営者にとっては問題に直面してから始めて慌てるってことあります。

奥野氏:今はうつと診断されても、解雇できませんからね。

酒井氏: そうなんです。本人が自覚ない場合は、家族に相談して、本人に説得して、病院で診断という流れになるんですが、なかなか休職扱いにできない。でも業務には支障があるし、とても困りますね。

奥野氏:そんなときの説得役は総務部長ですね

酒井氏: そうです。ですが、予め想定して就業規則に盛り込んでおくと良いのですが、これもあまり盛り込みすぎると、企業からすると、義務が増えるということにもなりかねません。
就業規則と評価制度
奥野氏:就業規則に盛り込みすぎて履行できないと、結果企業のためにならない。逆に権利の乱用というものもやはりあるんですか?

酒井氏:ありますね。たとえば、有給休暇を繰越40日取れるとして、「まとめて取ります」と言われたらどうするか。

権利としては法令で取れるんですが、実際問題、40日も休まれると周りの業務も滞ってしまいます。

奥野氏:ホリデーとバケーション、認識の違いですね。欧米は一人で完結する仕事がメインですが、日本はそうもいかない。

習慣的にバケーションを取ることってやはり難しい。ところが、権利だけを主張してこられると、義務か実務かで経営者は悩むことになる。

酒井氏:そうなんです。就業規約って、会社としたらあまり見せたくないもの、という風潮があるもんですから、いくら規則に唱っていても、知らなかったということもおきてきます。

奥野氏: 就業規則を日常的に周知させましょうという土壌って、大企業にはありますが、中小企業にはまだまだないですね。定期的に見直しましょう、周知しましょうというしくみってないんですか?

酒井氏:大手企業にはあるようです。社内グループウェアからネットで確認できるような。でも、中小企業にはまだまだですね

奥野氏:就業規則もそうですが、評価制度にも問題があると思いますね。

私は上司が部下を評価するという風土はおかしいと思うんですね。それって思い込みや好き嫌いも入る。

かといって絶対評価は規模や業種によって難しいですから、こまかな評価基準って必要だと思いますね

酒井氏:私は人事評価制度もやるんですが、中小企業の場合、30人くらいまでなら、社長の感覚で評価できるんです。

それも的確なことが多いですね。でも30人を超えると、直接評価はできなくなるので、システムの導入が必要になってくる。そうなるとやはりコストがかかるので、そこで躊躇してしまうんです。 手作業やアナログで管理すると、どうしても「評価されない」と感じる人は出てきてしまう。
企業を守るために
奥野氏:どういった評価の希望が多いです?やはり賃金ですか

酒井氏:賃金もそうですが、やはり認めてもらいたいという希望が多いように思います。

それが役職でだったり、仕事の責任度だったり、それに対価としての賃金ですね。相対して、自分を認めて欲しいといった要求は多いです

奥野氏: 能力と年棒が比例しているか。ということですね。会社にとって必要な人材にも、対価に不満があると、必要な人材まで失うことになる。

どう評価するかというのは、人材を守るためでもありますね。ですが、あれにだせば、これもださなきゃと、誰に評価すべきか、しないでおくかの判断ができない経営者もいるんですね。

酒井氏:いますね。会社に余裕があるならいいですけれど、言われるままには通常出せないわけで、やはりここは経営者の決断が必要ですから、会社の状態を見極めて判断してもらいたいですね。

奥野氏:どのみち、経営者にとって恨みは買うものとしての決断は必要ですが、企業というのは継続してナンボ。経営者一人には限界もありますから、残したい人材を残せるような組織つくりが必要ですね

酒井氏:就業規則と評価制度は、組織にとって重要な問題ですね

奥野氏:中小企業の場合、社員一人ひとりを把握する必要ってあるんですが、この距離のとり方がわからない経営者や管理職が増えていますね。

酒井氏:経営者が社員と面談することは、風通しがよくなって良いんですけどね

奥野氏: 面談も「相談」にしちゃいけない。なんでも話をきいちゃうと面談にならないんですが、聞いちゃう経営者がいる。評価する際に私情が入りますから判断がまた鈍る。

面談の目的をはっきりさせて割り切らなくちゃいけないんですが、実際難しいですね。だから、ここは第三者が聞くほうがうまくいくケースもあります

酒井氏:日常の細かなコミュニケーションが少なくなっていますから、ここぞのときには互いにしんどいと思いますね。そういう意味では、社労士がかわりに聴くことで、公平な面談は可能ですね。

奥野氏:会社が長続きするには変わっていくことを把握しなければいけない。それはやはり人によって変わっていくわけですから。第三者が公平な立場で存在することは重要だと思います。でも、やはり我々はあくまでも経営者側の人間ですけどね(笑)
酒井 誠
社会保険労務士
行政書士
社会保険労務士法人リードSK
代表社員

1963年生まれ。大阪府堺市出身。サラリーマン生活(民間企業の人事・総務)を経て、平成7年に社会保険労務士・行政書士として独立開業。 主に、中小企業の人事・労務の相談・手続を中心に業務を行う。 平成21年2月社会保険労務士法人リードSKを設立。代表社員に就任。 近年は、有料老人ホームの労務管理から、入居者の成年後見制度の業務まで幅広く業務を行う。
奥野 嘉夫
松山大学キャリアマネジメント論講師
マネジメントプロファイラー(組織分析論 提唱者)

1954年大阪生まれ。近畿大学卒。リード大学院大学経営学修士(MBA)取得。営業職を経て、教育トレーナー芝原敏昭氏との出会いからDIP方式の訓練並びにトレーナースキルを習得、教育コンサルタントの道へ。小売業という待ちの営業と外販という攻めの営業の経験を生かし、現在必要とされる教育形態を模索、オクノビジネス研究所創業。コーチングスキルを通して営業力強化と組織力構築支援するため、有限会社マネジメントプランニング設立、H.R.システム(個人行動分析・組織分析)を開発。多くの商社、ベンダー等に導入の実績を持つ。 現在は松山大学経営学部キャリアマネジメント論で教鞭を10年以上執り、個人行動分析・組織分析の研究を重ね、組織力を分析・人材マネジメントツールとして「マネジメントプロファイリング」を開発、「マネジメントプロファイラー」として組織力分析の指導者養成にあたり、企業との連携により研究を重ねている。一般社団法人 日本人材開発研究所代表理事

一般社団法人 日本人材開発研究所
HP: http://www.nhdi.or.jp/index.html
撮影:菅野 勝男/取材:2017年8月

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