■ MARKETING #01

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■ MARKETING #01

価値社会とマーケティング vol.1


今回は長年にわたり大手企業の広告・マーケティングプランナー、マーケティングアドバイザーとして活躍されてきたアゴラクリエイション櫻井公氏と、幹部候補などエグゼクティブクラスを対象にスカウトを中心とした、関西では老舗の人材紹介会社、株式会社バンステーション岡田政之氏の対談です。広告と人材。全く異なる業界のトップ同士ですが、根底にあるマーケティングの捉え方について共通する洞察、異なる視点を語っていただきました。
取材/山部 香織 撮影/菅野 勝男  
 

マーケティングとは

櫻井氏: 近年、日本にカタカナ用語がよく使われるようになったんですが、そのハシリのひとつが「コミュニケーション」だったり、「アドバタイジング」だったり、「マーケティング」だったりなんですね。

その中でもマーケティングという言葉は、昨今さまざまな意味に捉えられているように思います。

マーケティングというのは、「商品」と「販売」と「コミュニケーション」、この3つですが、「調査」「リサーチ」と勘違いされていることが多い。

マーケティングってもっと深遠なものであるはずなのに、正しく理解されていないんですね。

マーケティングとは「売れる環境づくり」。いまどきの言い方をすれは、「どうすれば買ってくれるか」。
つまり、「買われやすい環境づくり」これがマーケティングの本来の解釈だと思っているんです。しかし昨今、マーケティングそのものが疲弊しているような気がしますね。

岡田氏: それは、どういったことですか?

櫻井氏: たとえば、大きな川が流れているとしますね。戦後60余年間ずっと流れているわけです。川からはいろんなモノが流れてきた。あの「がばいばあちゃん」の話の中みたいにね。

かつて仕事と称するものは、その川に行って流れてくるモノを取りに行く「作業」が仕事だったんです。それだけでよかった。それから、時代は変わり、流れてくるモノが少なくなってきたもんだから、源流まで探しにいくと、源流そのものが枯渇しかけている。やがて川も干上がってしまう。

そういう状態が現在の様子だと思うんです。つまり、モノが溢れすぎて、人々が必要とするモノ、欲しいと思うものがなくなってきたんです。

じゃあ、どうすれば良いか。他の川を探すか、源泉を掘り起こすか、いろんな方法を考える。これが「作業」とは違い、「仕事」になるんです。

だけど現状は、いつまでも作業というものはを仕事だと思い込んでいるところに問題がある。
今まではそれでよかったから、考えようとしないんですね。

岡田氏: 過去のやり方にこだわっていては、いけないということですね

櫻井氏: 他社や他人と同じものを売るとか、買うとか、使うとかをやってると負けてしまう時代が来たんです。

大量生産の時代を経て、衣食住すべてのものに対して、持っているものはもう欲しくない。

「商品を売る」ということは至難の業になっている。こうなると社長も役員も社員も、考え方を180度変えていかなければいけない。
岡田氏: マーケティングの概念は基本的には同じだと思うんですが、私たちは人材を扱っている立場(人材紹介業)のスタンスでいうと、さらに重要なことは、旬というか、タイミングだと思うんです。

人材にも企業にも、必要とするものを必要なときにベストな状態で提供する。それが最も重要であり難しい。

例えば、ある人材が過去に華々しい実力を持っておられたとしても、次の会社で同じ実力を発揮できるとはかぎらない。それは、その人の旬なタイミングもあるんですね。もちろん環境もある。

伸びしろも考慮して、さらにステップアップできる環境を、その人の旬に合わせて提供する、また、企業に対しても、戦略やニーズ、タイミングに合わせて的確な人材を提供する。まさに人材業界のマーケティングなんです。

人におけるマーケティングとは、固有能力+旬の上にタイミングもある。商品の販売とはまた違ったシビアな難しさが存在しますね。

櫻井氏: それはマーケティングのバリュー(価値)の方程式でいえば、「P・Q・S・T」つまり、プライスのP、クオリティのQ、サービスのS、そして、最後はおっしゃっているタイミングのTなんです。これらは掛け算なので、どれがなくてもゼロになる。

フレンチのコースをおなかいっぱい食べたあと、美味しいラーメンをどうぞと言われたら、その人はどう思うか。ですね。

岡田氏: モノの場合は、おなかいっぱいだとそれ以上は要らないということになりますが、人材の場合、そこは違うんですね。

人の力は足し算ではない世界があって、ある会社に一人の方が入ったことによって、その会社の500人が変わることもある。生産力もさらに相乗して変わることもある。

人の力や可能性は無限だということ、つまり人間力こそマーケティングの原点じゃないかと思います。

 

 

2011/12/09


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