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■ CREATIVE #06

時代の潮流をつかむ視点 vol.1

時代の潮流をつかむ視点

今回はインテリアデザイン界のジェットセッターとして国内外で活躍され、最近では日本のものづくりや伝統・地場産業のブランディングプロデュースも出掛けておられる、株式会社ゼロファーストデザインの佐戸川清氏と、佐戸川氏を師と慕い、地元関西から東京へ新たなビジネスにチャレンジされた元カメラマン、有限会社スタジオテックの佐野真士氏の対談です。今回の取材は、佐野氏が新たにオープンされた渋谷区の自然光溢れるハウススタジオで行いました。お二人には、常に時代を先読みしようとするパッションと、あくなきチャレンジの意気込みに尊敬の念を抱かずにはいられません。 「経営って楽しい」と仰る佐戸川氏の言葉には、すべての経営者への愛情が込められています。
新たなビジネスチャンスを求めて
佐戸川氏:いいスタジオだよねえ。ついにやりましたね。

佐野氏:ありがとうございます。佐戸川社長にこの物件を紹介していただいたのが4月、それからすぐ契約して7月オープンしましたからね。

佐戸川氏:僕がミラノから帰ってきてすぐだよね。

佐野氏:そうなんです。帰国されてすぐ連絡いただいて、「面白いものあるから見に行け」って言われて。で見た時に「わっ、これは絶対いける」と思っちゃったんですね。

スタジオはもう4つ目なんですけど、いつもぱっと見て「ここはいける」と直感的に思ったら必ずいってますね。

佐戸川氏:とにかくやっちゃいましたよね(笑)ここは貸しスタジオなんでしょ?佐野さんの本業って何になるの?

佐野氏:貸しスタジオ業もやりますが、本来はビジュアルソリューション、主にインテリア関連の撮影業です。壁紙やカーテンのメーカーさんが見本帳を作るのに、商品をインテリアのある空間で撮影するというのをやっています。

佐戸川氏:そこでスタジオを借りるより自分で持ってるほうが効果的だし効率的だと思ったんだね。それもビジネスセンスだよね。人から借りるとコストもかかるし、思うような空間を作れたらクライアントのためにもなるってことだよね。

佐野氏:ええ。他社にできないこと、他社との差別化をどう作るかがビジネスの基本だと考えて、スタジオを作るのはその一つです。

これまでも見本帳のアイデアをクライアントにはいろいろ出してきたんですけど、2.3年したら必ず他社がマネしてくる。そうなると値段の競争になる。常に人がマネできないことをやらないとビジネスで勝てない。

大手企業は資金があるけど細かいところはできない。フリーのカメラマンは技術の高い人は沢山いるけど、お金をかけてスタジオを作ることができない。ちょうど真ん中にいる我々ができることって何かをずっと考えてきたんですね。

そこで、自然光が入って、いろんなセットが組めることが特長になるっていう、非常にニッチなニーズなんですが、他社にマネできないスタジオを作っておいたら、きっとウチに頼まないといけなくなるんじゃないかと。

佐戸川氏:なるほど。最初は商品の見本を撮るカメラマンだったけど、「インテリアの空間」を撮ることに絞り込んだってことなんだね。勝つために絞り込んでこれに特化してやろうというその勢いがいいよね。

ビジネスって散漫になってることが一番非効率なわけじゃない?オリジナリティをどうやってだすか、どうせ特化するなら他人がマネできないことをやってやるってすごいことだよね。

俺に追いつけるもんなら追いついてみろよって感じだね。そりゃもうカメラマンじゃないよね。そういうことをするような運だったんだ。

佐野氏:ええ、今のほうがカメラマンの時よりイキイキしていると思いますね。

佐戸川氏:そもそもなんで関西でやってたの?

佐野氏:見本帳の制作って京都を中心に始まったというのがありますね。着物の反物の芯を作る業者が見本帳の側をつくりだしたということもありますし、繊維業界は関西が中心だったんです。

佐戸川氏:なるほどそういう歴史的な背景と需要があったのね。

佐野氏:うちが始めたころって、(他のカメラマンは)見本帳の仕事なんて見向きもしなかったですね。結構細かくて大変な仕事ですから。みんなファッションのほうに行きましたね。華やかだし、楽しいし。

佐戸川氏:でも今の社会って、食も足りて、衣も足りて、これからは住居だよ。住居の中を如何に快適に過ごすかとなると、周辺の環境を整えるって必要だからね。そこでインテリアを選んだのは良かったんじゃない?

ぼくの仕事のインテリアデザインも如何に時代の潮流をうまく捉えるかって大事でね、やっぱり先のない仕事というか、衰退する産業よりも、勢いや成長性のある業界に時代を見て、自分のポジションを置くことなんだよね。そこで将来のビジョンを作ることって大事なことだと思う。

でも関西が中心ってことは競争が激しいんじゃない? あ、もう引き離しちゃったわけね。がーんと追従を許さないことになってるんだ。

佐野氏:いえいえ。まあそれを目標にしていますけどね。追従を許したくないというのはありますね。絶対に負けられないという。

佐戸川氏:その負けられない精神ってどこからきたの?もって生まれたもの?ガキのころからケンカ強かったの?(笑)

佐野氏:いやいや(笑)6年ぐらい前ですかね。このままじゃダメだと必死で考えたときがありましてね。でも自分で何かやろうと思ったらカメラの知識だけじゃダメだと思ったんです。

佐戸川氏:ああ、病気になったころね。

佐野氏:ええ。それで経営に関する本を100冊くらい読みましたね。それと周りの成功してる経営者から何か吸収してやろうと貪欲でしたね。

佐戸川氏:佐野ちゃんって行動が先に立つんだよね。直感のようなもの、その感性をすごく感じるわけよ。

よく「考えて、やらない人」っているよね。いろんな先生業の人たちからは、数字が読めなかったり論理的でなかったりするとビジネスは成功しないって話をたくさん聞いたりするんだけど、人間って論理ではいかないことってあるじゃない。特に我々の仕事は感性が仕事だから。

佐野氏:僕は成功している経営者としか遊ばないですね(笑)

佐戸川氏:それ(成功している経営者)を見つけるのも大事なんだな(笑)。勢いのある人とかね。

佐野氏:勢いのある人たちって、みんな直感的なんですね。そういう方たちを見て、これをまねしたらいいんだと(笑)。経営の論理や数字を見るよりも、どっちかというとそれ(直感)を優先してる感じがしますね。

佐戸川氏:それは一つあるよね。やっぱり時代を見据えて潮流を捉えることとさ、将来のビジョンをちゃんと持つことと同時に、勢いのある人とどれだけ多く出会うかということが自分の肥やしになるよね。それを狙っているわけだ。

佐野氏:そうです。めちゃくちゃ狙っています。

佐戸川氏:ってことは、俺も勢いがあるってことだ(笑)

佐野氏:そうですよ。一番最初の出会いが社長ですから。

佐戸川氏:上げるねえ(笑)。人から吸収するだけで自分の持ってるものを出さない人っているよね。相手に何も与えないって人。僕はそういうタイプじゃないんだけど、経営に一番大事なのは「前広」の動きなんだよね。

前を広げて、なんでもいらっしゃい、なんでもやってやろうとか、自分の思ってることを素直に表現しようとか。そうするとそういう「前広」のタイプの人たちが集まってくるというのもあるよね。飲み屋いってもそうだよね(笑)。

佐野氏:そうですよね。僕はうるさがられますけれども(笑)

2012/07/04


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