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■ FINANCIAL #02

世界から俯瞰する日本の経済 vol.6

やがて起こりうる危機
仲川氏:私が恐れているのは、昔の徳川埋蔵金が無くなったこと同じ現象が日本の株式市場でも起ってくると思うんです。子供の頃TVで「徳川埋蔵金を探せ」というスペシャル番組がありましたよね。

古文書なんかを解読して、例えば、赤城の山なんかをブルドーザーで掘るんですが、掘っても掘っても毎週出てこない(笑)。

これは専門家たちの中では有名な話で、そもそも徳川埋蔵金などなかった。日本は300年鎖国していて金と銀の交換比率を知らず、当時の金と銀が約1:16、それを開国後に1:4くらいで全部巻き上げてられてしまってるんですね。

それと同じことが90年代のバブル崩壊後日本の株式市場でも起きて、ソニー、トヨタ、キャノン、ホンダなど日本の優良企業の株主が全部カタカナになってしまった。

これは第二の敗戦とも言われ、徳川埋蔵金と同様に日本は、国富にはあまりにも無防備だったということです。

岩本氏:そうですね。

仲川氏:バブル崩壊当時、たとえばアジアで高炉を一つ作るにしても、当時の新日鉄とか川鉄とかの株を、暴落してバーゲンセールのうちに51%ほど取得すれば、わざわざ何兆円もかけなくても作れるんじゃないかとか、また、日本の国土38万km2のうち約7割が森林で、そのうち大半を製紙会社が保有しているから、じゃあそれら製紙会社の株を50%超取得すれば、日本の国土をほぼ押さえたことと同じだという話もありましたけど、今もまさにそういうことが起きようとしている。

まだ株価は低迷しているけれど、水面下で優良企業が買われているわけですよね。日経平均もPBR(株価純資産倍率、一般にPBRが1倍であるとき、株価が解散価値と等しいとされ、それ以下だと割安株として扱われる)が0.9倍を割れてしまっている。これって異常な状態だと思うんです。

つまり今の株価は、会社を解散してもおつりが来るという価格になってしまってるということですから、もう大バーゲンセールですよ。間違いなく「ごっつぁんです」って人たちが出てきます。通貨も株式市場も、国家財産という観点でいうと社会的公器ですから、そこを守っていくには何をしなければいけないかを考えなくてはいけないですね。

最後になりますけど、岩本さんが書かれているように、近い将来バブルがやってくると。

今の世界的な過剰流動性を考えれば当然どこかで来るだろうと推測できますが、国民は日本株になど見向きもしないような状態ですけど、実は世界的に見て、国自体もしっかりしてるし、経済成長も良いほうだし、良い会社もいっぱいあるとなれば、今の安いうちにこっそり買っている人が増えて、どこかでバーンと弾けたら、いままで傍観者だった人たちが一斉に乗ってきますからね。そうなるともう、国家の財産がごっそり収奪されるんじゃないかという危惧を感じます。

岩本氏: 本当に仰るとおりです。この本のセンセーショナルなタイトル(最後のバブルがやってくる)に惹かれる方が多いんですけど、決してバブルを礼賛しているわけではないんです。

バブルというのは必ずジャブジャブの資金がないと発生しませんが、今どう考えても各国でジャブジャブに資金を供給しています。アメリカも今はサブプライム危機でダメ、欧州もユーロ危機でダメ、また、欧州やアメリカの投資資金が入ってる新興国にも陰りが出ている。そうすると消去法的にどこにしようかとなると、日本へと流れてくる。

仮にどっと流れてきた場合、冨の略奪をされないように用心しておかないと、バブル後はさらに酷くなる。そこでバブルをどう活かすかを考えたほうが良いんじゃないでしょうかというご提案なんです。

仲川氏: そうですね。またあのバブルが来るから、皆さんどんどん投資しましょうということではなくて、実はバブルの後こそ悲惨なんですよ、と仰ってるんですよね。

金融市場って博打場じゃないんですから、日本株なんか儲からないからいらないよ、じゃなくって、きちんと良い企業に投資して、その対価として配当なり値上がり益を享受するという原則に還っていかないと、知らない間に徳川埋蔵金になってしまうような気がします。

岩本氏:長期的なスタンスで、全体として日本国が安泰な方向を目指す。そのための経済状況の判断では、とにかく「バイアスはニュートラルに」ということをお伝えしたいですね。

仲川氏: そうですね。バイアスはニュートラルに、ですね。

岩本 沙弓
金融コンサルタント・経済評論家
大阪経済大学経営学部客員教授
Office 『W・I・S・H』
 
青山学院大学大学院 国際政治経済学科修士課修了。1991年より日・米・加・豪の金融機関にてヴァイス・プレジデントとしてトレーディング業務に従事。日本経済新聞社発行のニューズレターに7年間、為替見通しを執筆。金融機関専門誌『ユーロマネー』誌のアンケートで為替予測部門の優秀ディーラーに選出。現在、為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、英語を中心に私立高校、及び専門学校にて講師業に従事。政権政策会議などの講師に招かれる。主な著作に『円高円安でわかる世界のお金の大原則』(翔泳社)、『新・マネー敗戦』(文春新書)、『マネーの動きで見抜く国際情勢』(PHPビジネス新書)、『為替占領』(ヒカルランド)他。



HP: http://www.sayumi-iwamoto.com/
FB:sayumi.iwamoto
仲川 康彦
ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
代表取締役副社長
 
1966年京都府出身。近畿大学法学部経営法学科卒。日本インベスターズ証券(NISCO) 取締役・IFA事業部長、SBI証券 顧問兼IFA部長等を経て現職。過去10年弱に渡り一貫して、金融機関に属さないお客様の立場に立った会計事務所や保険代理店、ファイナンシャル・プランナー等と協調する金融商品仲介ビジネスに従事し、投資家の”金融知力”向上のための啓蒙活動を、全国のパートナーと推進している。

ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
HP: http://www.hibiki-fa.co.jp/
撮影:菅野 勝男/取材:2012年9月

 

2012/09/26


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