■ CREATIVE #10

HOME» ■ CREATIVE #10 »関西アートシーン~ツムテンカクの世界 vol.2

■ CREATIVE #10

関西アートシーン~ツムテンカクの世界 vol.2

関西独自のアートシーン ツムテンカクの世界
皿田氏:僕らがこうして他ジャンルと交流するようになって、自分のやり方じゃないものに対して刺激を受けたとか、面白いから取り入れようとかってこと何かありました?

山田氏:他ジャンルのプロの目を気にするようになったということはあるかな。インターフェイスのデザインをするときも、彼らに見られても大丈夫なクオリティを意識してる。

堤氏:その意識って、業界の先輩や師匠に対するのとは違うものなんですか?

山田氏:どうかな。昔、餅は餅屋でプロダクトデザインの業界ももっと狭かったと思うけど、今はプロダクトデザイナーだからグラフィックやりませんって頑な人っていないからね。

皿田氏:業界の垣根は下がってきて、他ジャンルの領域に入っていくことは多いですよね。特に建築とインテリアの業界は仲が悪かったけど(笑)

堤氏:某有名建築家の時代はね。

山田氏:あ、そうなんだ。

皿田氏:インテリアデザイナーという職業が確立されてから、建築家がインテリアデザインをすることについて、どうなんだという議論があったんです。

山田氏:あ、そうなの? 今普通にやってるよね。

皿田氏:ええ。こっちにするともう超えてるんだから、インテリアデザイナーが外をやったりしてる。

山田氏:躯体関係は無理かもしれないけど?

皿田氏:そこは建築士さんに頼めばいいだけですから。そうして僕たちもいろんな他ジャンルに手を出す、というか挑戦してるけど、実際には業界のトップの人たちには敵わないわけですよ。

で、今こういう交流することによって、他ジャンルのできる人を立てたほうが仕事はしやすいと思うんですけどね。

山田氏:確かにその業界の人に頼めば安心感もあるし間違いないんだけど、その一方でコストがないとなると、「ほな、こっちでやりましょか」ということになるんだよね。

皿田氏:わかります。僕らにもロゴも作ってくれって言われることがありますから。

山田氏:あるよね。今ヘタにPCがあるから、みんなソコソコできてしまう。細かいディティールの違う部分はあるかもしれないけど、同じクリエーターだから押さえ所はわかるし大外ししないんだけど。器用貧乏というところかな。

皿田氏:特に関西はデザインにかける費用が低いから?

山田氏:大阪って目に見えないものには金を出さないって言われるじゃない?でもそうじゃなくて、まだまだデザインって、モノを売るための魔法の粉みたいなイメージを持ってる人は多い。

関西はデザインやアートに対する根付き方がまだまだ薄いと思うね。東京の人はカッコつけてるからアートを見に行くけど、関西人は行かないって言うけど、カッコつけてでも見てるのと見てないのとでは違いは大きい。

皿田氏:確かに。僕らも良いモノを望まれているなら感度高くできるんだけど、クライアント自身はどうなのかというと、そこは疑問になっちゃう。

山田氏:デザインやアートの感度といえば、ツムテンカクも一番初めは、自分たちのモノを提案したい、作品を見せたいだけだったんだけど、それが少しづつ回を重ねてきて、もっと関西のデザインやアートのシーンに触れる機会を増やそうよという話になってきた。

でもこれって、実はそれぞれが持つ隠れた不満の裏返しなのかもしれないよね。

堤氏:たまに施主さんと「デザインのコストが・・」という話になった時なんか、まあデザイン削っても死にはしませんしねって、僕のほうから言うこともあります(笑)

皿田氏:ははは(笑)

山田氏:だめだよーそんなの(笑)

堤氏:そういう空気になったらもう、逆にこっちから言ったほうがね(笑)

皿田氏:確かに形あるものとして理解できるかというと、申し訳ないけど関西では稀薄だよね。

山田氏:でも関東の展示会ってなんで関西人だらけやねん(笑)みんな大阪弁でしゃべってるやん(笑)場がないから向こうに流れて行くんだよね。

皿田氏:関西の悪いところなんだけど、待ってたら何かあるんじゃないかっていうのがあるよね。

展示会に参加してみたけど、あれ?今年もダメだった。また今年もダメだったって、いったい何回言うのか(笑)

山田氏:ちょっと評論家チックにね(笑)でもツムの場合、僕らは逆に言われてる側なんじゃない?僕らも数年前を思い返すといろんなイベントに対して、なんだこれって言ってたもんね(笑)

皿田氏:でもツムは場を作るけど、全体を作ってるわけじゃない。普通はこういうブース枠があって、この枠に入るものを探しましょうというのが基本だけど、ツムにはその枠がない。しかも「皿」しか用意しないから(笑)

山田氏:だから説明がほんと難しいのよ(笑)あくまでもお皿だから、ここがお肉スペース、とかないんだよ。あとはもう自分が用意するしかない。よく言われない?1ブースいくら?って。

堤氏:言われますね(笑)

皿田氏:普通そう思うでしょ(笑)

山田氏:関西には発表したい人がいっぱいいるのに、単体で個展やっても全然人が集まらない。見に行くという習慣が無いからね。だから1つの所に集めてみたら何か起るんじゃない?というのがツムテンカクだよね。

皿田氏:でもそれって1回目やってから気付いた。最初一回目やる前はそこまで思ってなかった(笑) 

山田氏:そりゃそうだね。自分の作品を出したかっただけだから(笑)

堤氏:そうそう(笑)

皿田氏:出してみて、ふと隣の人は何やってる?あれ?全然違うことやってる。こういうのを見に来る人がいるんだって気が付いた。そんなイベントって大阪に無かったでしょ。

山田氏:ないない。皿だけしか用意しないなんて関東にもない(笑)

アートだけじゃなくて音楽やパフォーマンスもある。去年は企業プロモ活動もあってと、要は何かをしたい、何かを出したい人が三日間そこに存在するよということだから、来てもらうのは誰でもいい。

皿田氏:関西は東京に比べて人口も少ないし、業界も趣味にしても、1つ1つの輪は小さい。だけどそれが繋がれば輪も大きくなる。

いろんな他ジャンルのクリエーターが交流すると大体繋がってきて戻ってくる。ということはそれだけ近いところにいるってことでしょ。友達の友達が客だったりするような。

こういうことが今まで無かったし、デザインのイベントをやってもやっぱり狭かった。つまり垣根を低くしてこなかったんだよね。同じ業界の人が来るなら行ってみよう、みたいなね。

山田氏:業界のバイヤーは大阪のイベントなんか来ないよ。行くならミラノか東京に行く(笑)

皿田氏:逆に業界のイベントにしか行かなかったクライアントやバイヤーが来てくれて、面白いねって形になる場になれば良いよね。

僕が思うのは、ツムテンカクで始まった人たちが最終的にメジャーになることが一番の成功。そうなれば、場を作ることが成功に繋がるという道筋ができる。

何かワイワイやってるだけじゃなくて、ちゃんと考えて本当に意味ある形になるんだという。そこはしっかりやっていかないといけないと思うね。

山田氏:それは大事だね。

皿田氏:僕らは上の人たちが何十年もやっていて、その順番待ちしてる人が多い。早く上の人がいなくならないかなって(笑)

50代60代の現役がいっぱいいて、まだそこに40代の人がいるとなると、僕らの残りがほとんどない。つまり順番を待っていても仕事にならないし、自分の形を作りにくい。

でもその列と列の間は誰も歩いていないかもしれないから、そこで他ジャンルの人と組んで、誰もやらなかったことができれば先駆者になれる。

でもよく考えるとプロダクトもインテリアも、最初はそこから始まったと思うんですよ。なのに僕らがただ、列に並んでいるだけじゃやっぱり将来はないよね。

山田氏:長いレールがあって、しかも僕らって結構後ろのほうの車両だよね(笑)

皿田氏:そうそう新幹線並みの16両編成ぐらい長い(笑)

堤氏:昔は道徳的に引退するということがありましたよね。下のためにもそろそろ引退してやらないとあかんなあと。それは今ないですもんね。

山田氏:今の50代60代の人のパワーってすごいもん(笑)

皿田氏:その人たちはそうやって自分たちで作ってきたんだから、そりゃパワーが違う(笑)だからこそ新しいところに自分達のラインを見つけないと。ピラミッド型の頂点を目指す人は下にもたくさんいるから肩もたたかれるし(笑)

山田氏:怖いよね(笑)

皿田氏:怖いです。そうならないように考えてるのが今の30代なのかなと思う。特に、新しい仕事のやり方や、仕事の作り方に興味持っている人がすごく多い。面白いって共感する人が増えている感じがする。

2013/03/14


■ CREATIVE #10

powerdby