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■ BRANDING #02

士業・プロとしてのこだわりとは vol.1

士業・プロとしてのこだわりとは

今回は多くの国内・海外の機械系特許や、ブランディングを含めた商標戦略を専門とされる弁理士・松田朋浩氏と、アジアを中心に国際的に活躍されている行動派の弁護士・曉琢也氏の対談です。お互いを「アツい弁理士」「アツい弁護士」と言い合う仲のよいお二人に「アツい」とはなにかを語っていただきました。
プロとしてのこだわり
暁氏:同じ士業ですが、プロフェッショナルとして何か意識されていることはありますか?

松田氏:弁理士は、技術的アイデアないし技術そのものを文章で表現することが仕事なんですが、技術的アイデアのような無形の観念を、誤解無く論理的に正確に解くには、日本語にこだわる必要があります。それも、徹底的に。

なぜなら、日常の日本語は、論理的文章を作成するには向いていないからです。この感覚は、弁護士さんよりも鋭いと思います(笑)

暁氏:日本語にこだわる?

松田氏:日常的に綴っている日本語で技術を表現すると、たちどころに論理矛盾というか言葉足らずの説明不足になります。

一例を挙げましょうか。『この部品は断熱材に覆われていて保護されています。しかし、外気温が一定温度より高くなると損傷を受けることがあります。』・・・

この文章、普通の日本語の会話ですよね。でも、損傷を受けるのは一体何だと理解できますか。部品?それとも断熱材??弁理士は、このような論理的詰めの甘い文章を書いてはいけません(笑)

暁氏:では、きっちり詰めた文章とは、どのようなものですか?

松田氏:一つのこだわりは、徹底的に主語を設けることです。できれば100パーセント主語を付けて技術を説明する。要するに、英語で表現すればどのようになるかを意識しながら文章を作成する。

これで、相当論理的文章になります。でもね、これって、やってみると簡単じゃないんですよ。慣れないとほんとに骨が折れるし、日本語として幼稚で味気ない文章になりますね(笑)

暁氏:なるほど!弁護士も契約書をドラフティングする際には、人によって意味の取り方が変わるような記述を徹底的に排除しなければならないのですが、特許の出願においては、より厳密な論理性が求められるのでしょうね。
松田氏:それから、商標を扱うことが多いんですが、やはり業務として商標を扱う弁理士は、『ブランド』に興味を持つことが重要です。

そもそもブランドに興味がないのに、商標をどのようにブランド戦略に組み込むかについて議論やアドバイスができるはずがないと思うんですね。

だからと言って弁理士は皆、ブランド品好きってわけじゃないんですが(笑) ブランドはすなわち魔力です(笑)。

その魔力の本質は何か、なぜは人はブランドに惹きつけられるのか、その回答を持たないならば、商標権取得のための手続きのアドバイスはできても、ブランディングなど不可能です。

暁氏:なるほど。松田先生はいつも上から下までピシッとしてらっしゃいますから、ブランドに対する理解はばっちりですね(笑)

松田氏:いえいえ(笑)、ただブランドには畏敬の念をもって接しています。

商標一つ取ることにおいても、そのブランドの特徴やトンガリをどう出すか、また、そのブランドをどう育てていくのかといったマネジメントがそこに必要になります。ただとれば良いんじゃなくて、戦略的に商標を取ることが必要だと思うんです。

曉先生はどうですか?やはり弁護士として、身辺をキレイにしなくちゃとか?(笑)

暁氏:はい、身辺はいたってキレイな方です(笑)。

弁護士として身辺をキレイにすることは、やはりポリシーとして重要だと思いますね。他人のトラブルを扱いますから、自分の身の回りがドロドロしていたのでは、冷静で正確な判断ができない。

弁護士という職業柄、依頼者のおかれた境遇情況に共感する一方、冷静に分析することが必要となります。やはり冷静な視点を保つことも、プロとして重要になりますね。

松田氏:弁理士の仕事というのは、いわゆる手続屋であって一見無味乾燥なイメージがありますが、大事なことは弁理士自身がそのアイデアに感心することです。

我々は、発明者のアイデアをその根本的問題点と一緒に見せられるわけですから、そのアイデアに一向に感心しない傾向にあります。 そのアイデアや発想を生み出すクライアントの背景にも注目し、そのワクワク感をいかにクライアントと共有できるか。

これがプロとしてとても大切だと思うんです。 そこから、そのアイデアをどう事業に展開するか、将来の事業展開をどのようにもっていくかの視点が重要になります。

暁氏:では、弁理士の業務において、「法律の理解」と「技術の理解」では、どちらが優先になります?

松田氏:これはどちらが欠けてもだめですが、弁護士さんの仕事が訴訟案件、すなわちある事実についての認定、それに対する法の適用と利益衡量だとすれば、弁理士の仕事は、その前提となる事実を確固たるものとする手続案件なんです。

もちろん手続は法に基づいてするものですが、まず、その技術とそこに込められた想いの理解なしには、将来の訴訟に耐えれる事実を作ることはできない。 だから、極論すれば、技術の理解が優先します。

暁氏:なるほど。我々弁護士は、裁判となる場合は、あくまでも裁判としての結果を求められるので、やはり法律の理解がより重要ということになるかもしれません。

ただ、裁判というのは、ある事実に法律を当てはめて結論を導くものなので、真実を見抜く力が非常に重要になります。この力を磨くためには、社会でおきているできごとの理解やさまざまな雑学的な知識が必要となります。これがないと、一つの案件の背景を洞察することはできません。

 


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