■ ADV(アドボカシー)な人々 #02

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ウナギトラベル代表 東園絵 「いまのきもち」 vol.3

片岡氏: 僕の友達にも、外資系金融業界に何年か勤めて、30歳後半になって突然辞めて、夫婦でラーメン屋をやるとか、なんか物を作るのが面白いとか、ちょっと変わり種だとお寺の住職になっちゃうとか、そういう方たちはよくいるんですけど、こういうことを始める時、ご家族は何も言いませんでしたか?いい意味でも悪い意味でも。心配したり応援したり。

東氏: 何をやっているのか分かってなかったでしょうね(笑)

片岡氏: そもそも何をやってるのか?(笑)

東氏: ええ。銀行入るときも転職したときも何も言いませんでしたし、大学院に行くのも、全部自分の貯金で行きましたし。何の口出しもしなかったので、「また何か始めたよ」ぐらいの感じです(笑)逆に、家族や身内より、全く知らない人の声のほうが厳しかったですね。

片岡氏: どう説明されたんですか?

東氏: 「ぬいぐるみをお預かりして旅をさせるんです。」(笑)

でもそれは物理的なことだけではなく、旅ができない方がそれを通して世界観を広げる。できないことをできるようにするところに価値があると思ってます。

谷本氏: 東さんのされていることって、ソーシャルビジネスに近いですね。以前、東さんがいらした外資系金融のような資本主義と反対にいるけれども、その中庸があってもいいと思うんですよね。つまり、こうしたソーシャルビジネスにおいても、ある程度稼がないと沢山の人を助けることはできないですよね。そういった意味で、今後この事業を大きくしていこうとか、稼いでいくぞ、みたいな気持ちってあるのですか?

東氏: 対個人のツアーは、粛々と今後も続けていくと思うんですね。ただそれだけだと限られてしまうので、安定という意味も込めて、いくつか柱を作っていきたいなとは思っています。メディアのおかげで今企業や政府の観光局、地方自治体からもお声掛けをいただいて、企業のプロモーションの一環や、地域活性化の切り口でのツアーをさせていただいています。個人と密着して直でやりとりするツアーもやりつつで、そういった柱を設けながら拡大していきたいなと思っています。
片岡氏: BtoBが加わるということですね。

東氏: ええ。いくつかお声掛けをいただいています。

片岡氏: 確かに目の付けどころはおもしろいから、コマーシャル作るのもキャンペーン張るにも良いですよね。

谷本氏: ほんとそうですね。

東氏: ツアーの行き先も、京都や広島というメジャーな地域だけでなく、ちょっと苦戦しているような地方へぬいぐるみたち連れていって、ご本人だけでなく他の方にも見ていただくきっかけになると意義があるのかなと思います。

谷本氏: 今後は雇用も考えてらっしゃるのですか?

東氏: マスコミのおかげでいろんな方々に知っていただくきっかけになりまして、当社に入りたいという方々からたくさんお問合せをいただいています。その中でも熱意のある方が数名いるので、ちょっと試験的に考えています。

今海外の政府観光局からお問合せいただくんですね。北欧にも連れてきてもらいたいと。それを通して日本人に北欧に観光で来てもらいたいということだと思うんです。そういったことをいくつかトライして、春ぐらいには安定を考えていきたいと考えています。

谷本氏: こうしたビジネスのアイデアって男性には思いつかないと思うんですね。女性であったり、帰国子女だった方じゃないと、こうした新たな、ニッチだったりユニークなものを生み出せないんじゃないかという気がするのですが、そこに関して何か思うところはありますか?

東氏: 確かに日本人のお客様の9割は女性なんです。このサービスにピンとくる人は女性が多いので、女性だから思いついたのかというと、その要素は大きいかもしれないですけど、実は海外のお客様は男性が多いんです。
片岡氏: 男性が預けるのもぬいぐるみなんですか?

東氏: そうです。ABC Newsによると、アメリカの成人男性の4人に1人が、ぬいぐるみを持って出張に行くらしいですよ。

谷本氏: ほんとですか(笑)

東氏: アメリカにぬいぐるみ文化があるのか、人の目を気にしないところがあるのかわからないですけど。私自身、帰国子女ってもう小学生の時の話で、それからずっと公立で普通の教育を受けたので、帰国子女だからというわけでもないと思うんですね。

片岡氏: 男性だからというと言い訳になっちゃうんですけど、僕は最初お話を伺う前、誰が何に対して消費してお金を払うんだろう?と、このビジネスモデルの意味がわからなかったんですよ。

だけど考えてみたら、これ(ぬいぐるみ)を行かせたい理由が必ずあってみんな違うわけですよね。でもいわゆる営業となると声のかけようがないじゃないですか。そのへんの人に、あなたのぬいぐるみを旅行させませんか?とは言えないし。全部インバウンドで来るというか、口コミで広がるしかない。

東氏: そうなんです。なのでマスコミの力が私にとってはすごくありがたかったですね。取り上げられるまでは非常に厳しかったです。ほんとに口コミだけで、友人知人が広めてくれたり、友達が参加してくれてFacebookでシェアしてくださったり。

なのでマーケティングというところには苦戦していました。たまたまNHKの短いドキュメンタリー番組で取り上げていただいて、そのダイジェスト版がおはよう日本でご紹介いただいたんです。そうするともう北海道から九州まで知っていただくきっかけになりました。

参加していただく際にアンケートにお答えいただいてるんですね。お名前・性別・食べ物アレルギーがあるとか、船酔いしますかとか(笑)それと合わせて申し込みの動機も伺っているのですが、物理的に旅行が困難な方だけでなく、いろんな思いがあることに驚かされています。
片岡氏: すごく野暮な質問ですけど、一番高い旅行でどのくらいの金額なんですか?

片岡氏: オーダーメイドもあるのですか?

東氏: 一応ありますけど、申し込む方はあまりいないです。

片岡氏: やっぱりパックが人気なんですね。

東氏: ええ。先日ある企業さんにアンケートを取ったんですね。26名ぐらいの方にお答えいただいただけなのですが、26人中26人全員が横の繋がりのコミュニケーションが楽しいって仰るんですよ。

片岡氏: 同じ「趣味」と言ったらいけないんでしょうけど、同じ目的を持った方同士?

東氏: そうですね。(ぬいぐるみが)一人で旅をしても意味がないって仰るんですよ。Facebookに日々この子達の写真を撮るんですね。そうするとFacebook上で会話が生まれるんです。それが楽しいって仰るんですね。

この中では全員が平等なんです。この人は脳性マヒの方のですとか、引きこもりですとか一切言いませんから。カルフォルニアからやってきたチャビーさんですって、それだけなんですね。性別ももちろん明かさないですし。Facebookだと実名で登録されているのでわかってしまうのですが、この繋がりが楽しいって。

片岡氏: 動機はさまざまで、キャラクターもさまざまだけど、自分の代わりに行ってもらいたい場所だけが共通してるんですね。

東氏: 皆さんすごい感じが良いんですよ。

2013/12/22


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