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■ INNOVATION #07

日本の経済構造・地方再生のカギ vol.1

今回は経済評論家の岩本沙弓氏と、国内外で約15年間、株式ファンドマネージャーを経験され、企業再生やM&A、債券ストラテジスト等一貫して投資運用の世界で約30年間過ごしてこられた柳下裕紀さんとの対談です。お二人とも金融業界の現場で培われたグローバルな視点から、日本経済について常に言及されています。同じ大学出身でもあるお二人が出会い、考え方の真髄を打ち出しながら手厳しく、今の日本とこれからの日本経済の再生について語っていただきました。取材場所は、桃山時代の絵師、長谷川等伯ゆかりの「京都 本法寺」塔頭「尊陽院」さんにご協力いただきました。
取材 / 山部 香織
岩本氏: 柳下さんは、日本経済が再生するためには、地方のパワーを有効に活用することだと仰っておられますが、今日はその具体的なお話をお伺いしたいと思います。さまざまな問題を紐解いていくとまず、70年代あたりまでの輸出主導による日本経済の活性化、柳下さんの言葉をお借りすれば「護送船団方式」のようなスタイルはもう、今の時代に通用しなくなってきていますね。日本の経済構造についてどのようにご覧になりますか。
 
柳下氏: その輸出主導型というのも、基本的には輸出中心の大企業が政治的な力を持っていることから、輸出立国的な言い方をされていますが、日本は今だかつて一度たりとも輸出立国だったことは無いというのが私のスタンスです。
 
岩本氏: 輸出産業の裾野が広いので、そういう見方はあるのでしょうけれど、例えばトイツのGDPにおける輸出比率は4割以上、それに対して日本は1割、明らかに日本の輸出比率は少ないですよね。
 
柳下氏: 日本の場合中小企業の数が多いので、圧倒的に内需の産業が多いですし、経済的な売上げレベルで見ても、内需主導のはずなのに、大企業など力を持っているところが優遇されている。その中で頑張っている中小企業は、必死に食らいついているにも拘らず、追い討ちをかけられ続けている状態ですから、やはりそこをまず是正していただきたいと思いますね。
 
日本にはそうした神話的なところが色んな面で多いので、やはりトップに立つ政治家の方たちが、その感覚を変えていただきたいと思っています。特にこれから少子高齢化という中で、マーケット的にどんどん縮小し、ディレバレッジといって、大型の設備も不要なスクラップ化の動きが大きくなってきています。そうした中で「ジャイアン的な」というか、高度経済成長のような方向性は辞めましょうと。GDPの成長拡大が国民の幸せではないので、そこを感覚的に直していきましょうと私は言っているんですけれども。

岩本氏: まず日本のリーダーの方たちは、日本は内需の国だということをご存知ないようで、一般国民も同じように錯覚されているのかなと感じます。大企業・外需を中心にした、中小企業や内需を疲弊させるような経済政策をとられていているのに、内需関連企業はこれだけ冷遇されて、よく頑張っておられるなと思いますね。
 
税制の面でも、大企業は研究費も含めて潤沢にありますが、中小零細企業の方々は自力だけですから。投資面から見てもきちんと自分たちの中で物事を解決し、且つ補助金も無しで頑張ってる企業のほうが、はるかにポテンシャルが高いと柳下さんは仰っていますが、具体的にどんな例があるかいくつか教えてくださいますか。
 
柳下氏: 自治体でも少しづつ動きは出てきてはいます。国土交通大臣賞を受賞された岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」もそうですね。「朽ちるインフラ」という東洋大の根本教授の著書にある通り、今後インフラ改修に毎年8兆円が50年間必要になってくるという中で、どんどんハコモノを作るような流れ、特に補助金に頼るようなインフラはもう止めて、インフラ自体が稼げるような動きを作っていきましょうということで出されたプロジェクトなんですね。その変革アプローチやキャッシュフローを産み出す動きが出てきたことが画期的だと言われています。
 
あと徳島県上勝町の「いろどり」さん。地域の高齢者の方たちを活性化させるという部分を含めて、非常に画期的ですね。やはり一番キーワードになるのは危機感や焦燥感。このままでは朽ち果てるというか、このままではここは終わってしまうとなった時に、じゃあどうすればいいか。今ここにあるもので、とりあえず稼ごう、差別化して強みにしていこうという動きが、少しづつですが地方から出てきています。
 
あと地元密着型の企業が増えてきています。グローバルニッチトップの多い地域として、四国の企業をブログで御紹介しましたが、まず四国という地理的な問題。東京から遠いこともありますし、マーケットとしてはそれほど大きくない。その中でどういうふうに生き残っていけるかという危機感と焦燥感の中で、やはり結局は、地域の絆を強めていくことや、徹底的に顧客のニーズを聞いていくといった、非常にアナログではありますが、そこのしくみを徹底して創り上げていくと、非常に強い企業になり、強い地域ができあがっていくということも見てきました。

岩本氏: それはもしかして、皆さんが一般に想像していることとは全く逆の発想かもしれないですね。よく、もう少し外に目を向けなければいけないとか、グローバルスタンダードに合わせなくちゃいけないという、いきなり広い範囲の話になりがちです。基本は地元のニーズを汲み取ったものを作り上げた上で、その延長線上に海外へ、そういうこともあるなという感じでしょうか。
 
柳下氏: 四国の企業には、水族館で使われている、非常に透明度が高く、強度も強いガラスのようなアクリルパネルを作っておられて、グローバルシェアで7-8割を持っているようなグローバルニッチトップに入る企業もあります。
 
岩本氏: 元々そういう製品を作っておられた訳ではなく、違うものを作っておられたのですか。
 
柳下氏: そうです。時代と共に自分たちの技術が陳腐化する危機感は常にもっておられますから、いろんな展示会でニーズを目にしたり、ちょっとした雑誌の記事で見ては、自分たちの技術が活かせるヒントを得て、新しいものを次々に作り出すという意識の中で動いておられる企業は多いですね。
 
その企業のエピソードもやはり日本らしいというか、忸怩たるものがありまして、最初、国内じゃ認められないんですね。いろんな企業からも皆似通ったパターンを聞くのですが、国内でその技術を持っていくと、実績が無いとか、中小企業だから規模が小さいといったことを言われて門前払いを食らってしまう。そこで海外に持っていくと、飛び込み営業であっても、その技術の良さを認められて、すぐに採用しようという話になると。
 
コンペの際にも、これを実績にする為に妥協しようと値段を下げようとすると、製品の価値に自信があるなら、値段は下げるんじゃないと言われて、そのままの値段で採用してもらったといった話や、海外で実績を積んでから、日本に逆輸入すれば国内で認められたというパターンが非常に多いですね。そういう気質も変えていかなければと思いますね。

岩本氏: 実際に変わるかというと、なかなか変わらないでしょうね。
 
柳下氏: 日本は1億2千万人もいて、経済規模としては非常に大きいですが、それが功罪あるんですね。国内である程度満たされてしまって、ガラパゴスという言い方をされていますが、これだけの規模がある中で、外に出ていこう、何かを変えようという意識があまり働かない。ジリ貧だけどとりあえず生きていけるからそのままやっていこうという。
 
岩本氏: そこも危機感の無さに通じるものなのでしょうか。
 
柳下氏: 外から見るとどうしても異質な感じがありますが、逆に今後の展開を考えて、海外の評価を利用する手もありますから、日本にももっとチャンスはあると思います。
 
岩本氏: 大量生産して海外へ輸出するというプロトタイプの話ではなく、企業の戦略の一つとして、どう海外市場を利用するのか。
 
柳下氏: ニッチトップや規模の小さなところは、スピード感と徹底したものづくりが重要だと思いますので、そこに海外の意識や市場の成長を利用しながら深堀りしていくということも、ストラテジーの一つだと思います。

 





 

2014/07/04


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