■コンサルティング談 #08

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■コンサルティング談 #08

中小企業のマネジメントシステムを支えて

第8回のゲスト・新木啓弘さんは、ご自身の得意分野からお客様先に入り込み、着々と業務の幅を広げ、支援先も増やし、大変ご活躍の中小企業診断士です。物腰柔らかで、周囲を優しく包む雰囲気でありながら、高い行動力をお持ちです。これまでどのようにして事業を広げていったのか、また、多くのお客様を抱える中でのタイムマネジメントなどについても語っていただきました。
 

営業の仕事が転機に
 
平井:中小企業診断士資格を取得しようと思ったきっかけは何でしょう。
 
新木:サラリーマン時代は、 SEとしてネットワーク関連業務に携わっておりましたが、途中で営業へ異動になりました。富士ゼロックスの子会社でしたから、それまではグループ企業向けの仕事中心だったのですが、外販強化が叫ばれ、会社の方向転換を機に、営業を経験することになりました。
 最初のうちは、営業成績を残すことができたのですが、急に成績が下がっていきました。振り返ってみれば、成績が良かった頃は、主要取扱商品がプロダクトライフサイクルの成長期真っ只中で、自分の営業力によるものではないことがわかりました。
 当時はプロダクトライフサイクルがあることに気づきませんでしたが、原因を探ろうとマーケティングの本をパラパラめくっているうちに、面白くなってきたんです。「何か資格を目指そうか。それなら、中小企業診断士だ」というのがスタートです。
 
平井:営業に異動して、見え方が変わったのは大きいですね。勉強中に独立を意識されましたか。
 
新木:資格は、会社の中で何かに活かせればいいという程度で、当初は「企画やマーケティング部門ができて、任せてくれたらいいな」くらいの気持ちでした。
 その頃、 ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)のコンサルティングに携わっていましたが、「この事業なら、自分で独立してもやっていけるのではないか」という思いが芽生えました。ちょうど会社方針の変化もあり、そのタイミングで辞めました。
 
平井:勇気がありますね。
新木さんはお父様も中小企業診断士ということですが、取得にあたって相談はされたのですか。
 
新木:相談はしませんでしたが、受けるときに報告し、応援の言葉をもらいました。独立するときには「辞めると思っていたよ」と言われましたが、父は中小企業診断士の先輩として、この仕事の面白さをわかっていたのだと思います。自分では、独立のイメージはそれほどなかったのですが、取得してからさまざまな活動をしていると、中小企業にかかわっていきたいという思いが強くなってきました。


ゲスト:新木 啓弘氏

 

セキュリティ関連から広がる事業領域
 
平井:独立後の営業活動はどのようにされていますか。
 
新木:お客様や中小企業診断士仲間からの紹介でつながっていることが多いですね。特に営業活動はしていません。独立して 6年ですが、情報セキュリティを入口にして、その後、経営全般の支援へと業務を広げています。情報セキュリティだけを専門にする方は多いのですが、そこから経営全般につなげることができるのは大きな強みと考えています。特に、人材育成のテーマで取り組むことが多いです。情報セキュリティの一番の対策は、不正をしようと思わない企業文化の醸成や従業員満足向上であり、情報セキュリティの取組みともつながります。
 
平井:情報セキュリティの領域から人材育成などの経営全般に踏み込むスタイルは、独立当初からイメージされていたものですか。
 
新木:そうではありません。最初のうちは、ほかのことがやりたくても、情報セキュリティしか自分に強みがなかったので仕方がないと思っていたんです。ですから、その点から経営面に踏み込む手法は、入り込んでいくうちに見つけていきました。 ISMSもマネジメントシステムですから、経営者と話ができる点は大きかったですね。担当者レベルで話している仕事では、先に進めなかったと思います。
 本来、もっと広げたいのは情報セキュリティではないのですが、情報セキュリティがきっかけで仕事がつながっているため、そういう意味で良いツールだと思っています。


インタビュアー:平井彩子

人の活用に悩む経営者のそばで
 
新木:経営者の悩みは、資金繰りと人の問題の2つに尽きます。そうすると、事業は二の次になりがちです。本来はそうではないはずなのですが、現状は違うため、人の部分だけでもお手伝いできたらと思っています。
 
平井:具体的にはどのような取組みをされていますか。
 
新木:経営戦略を立てたうえで、従業員のどの点を伸ばす必要があるかを考えます。そして、計画の中に月 1回、 2時間程度の研修を組み入れます。また、週報の確認作業に第三者である私が入って、アドバイスやフィードバックをすることもあります。
 
平井:そこまで入り込むと、会社の中が見えますね。
 
新木:生の現場から入って、経営者の思いと従業員の目指す方向をつなげる役割を担います。外部の視点が入ったほうが効果的な面もありますからね。私自身がスパイス役になって、 PDCAを回しやすくなるように支援しています。
 
平井:でも、結構大変ではありませんか。
 
新木:楽しいですよ。週報の確認も、 1対 1で行うのではなく、社長もほかのメンバーもメールの CCに入れて、全員の状況が見えるようにしています。
 
平井:全員に見られているという意識が、緊張感とともにモチベーションコントロールにつながりそうですね。
 
新木:そうなんです。 Aさんを褒めると、 Bさんも頑張らなきゃいけないと思うような効果もありますからね。そのあたりも考えてコントロールしています。
 
平井:中小企業ですと、週報や日報などの報告モノは継続性が難しいですよね。
 
新木:はい。口頭でも十分に伝わるということで、文書に残す習慣がないことがあります。ですから、文書に残すことの重要性を伝えることからスタートすることもあります。そのうえで、内容の精査に入っていきます。取組みの規模感が伝わるように定量的に書くことや、周りを巻き込めているのかというあたりに重点を置いて確認しています。
 
 
「ビジ塾・朝活」の開催
 
平井:「ビジ塾」という活動をされているようですが、これはどのようなものですか。
 
新木:月 1回、土曜日の午前中に自主開催している勉強会です。これまで私のセミナーなどに参加された経営者を中心に開催しています。いつも地元の方が10人くらいは来てくれていますね。
 
平井:「朝活」も主催されているとか。
 
新木:はい。月 2回、開催しています。内容としては、テーマを決めて皆で語り合うパターンと、 1人の発表者に講演していただくパターンを交互に開催しています。ビジ塾と違って、こちらは経営者だけではなく、他士業の方の参加も多いです。
 
平井:新木さんは「旗振り役」なんですね。活躍されている中小企業診断士の方には、そのようなタイプの方が多い気がします。
 
 
皆が楽しく元気よく
 
平井:「皆が楽しく元気よく」と名刺にも HPにも書かれていらっしゃいますが、これはどのような理由からでしょう。
 
新木:サラリーマン時代の経験などを含めてです。自分自身、楽しく仕事ができていれば、もっとモチベーションを上げられただろうと思います。楽しさ 1つで、いくらでもモチベーションを上げられますからね。 1人ひとりのモチベーションが高まれば、周囲が気持ちよく働けますし、成長を感じられる仕事ができる環境があれば、人生も充実すると思います。ですから、この言葉は経営者だけではなく、中小企業の従業員にも向けた言葉です。
 
平井:新木さんご自身は、どのようなときに楽しいですか。
 
新木:顧問先の従業員の成長を感じられたときです。それに尽きますね。従業員から週報を提出してもらっている会社もあると話しましたが、 1人ひとりと向き合ってフィードバックし、アドバイスをすることが大事だと思います。相手に関心を示すことで心がほぐれ、話がスムーズになりますし、何より仕事を見守ってくれる人が外部にもいるということで、モチベーションアップにもつながっていればと思います。
 
 
タイムマネジメントの工夫
 
平井:コンサルティング先を10社以上抱えていらっしゃって、毎日お忙しいと思いますが、時間管理はどのようにされているのですか。
 
新木:午前、午後 1、午後 2と、 1日を 3つに分けると、 3件のお客様を回れます。月曜から金曜までで15コマ。土曜日は午前・午後の2コマとして、合わせて 1週間に17コマを持っているという考え方で仕事をしています。これは、さまざまな会社のお役に立ちたいという思いから、できるだけ多く訪問できるようにするためにできた考え方です。終日の仕事で 3コマ 1社という日もありますが、17コマ17社を理想としています。
 
平井:地元密着ならではですね。 1日 3件は大変ではありませんか。
 
新木:そうですね。でも、荒川区、台東区は坂道が少なく、自転車でスイスイ行けます。
 
平井:コマは全部埋まっている状態でしょうか。
 
新木:はい。ありがたいことです。でも、最近は17コマのうち、 1週間前までは 1コマは空けておくようにしています。埋めてしまうと、機会損失をすることが多いんです。「次にお伺いできるのは、 1ヵ月後です」では、さすがに失礼だと思いますから。少しバッファを持たせることも大切だと実感しています。
 
平井:そういう意味では、事務所を新たに構えられたので、お客様に来ていただくこともできますね。
 
新木:そうなんです。従業員がいないところで話したいという経営者もおられますし、そういうときに事務所は使えます。私自身、事務所を構えることを、働き方が変わるチャンスだと思っていますからね。
 
 
 
常に 20%に入る気持ちで
 
平井:今後やりたいことを教えてください。
 
新木:事業がしたいです。いまは、組織もないし、固定費も少ないし、口だけですからね。雇用をして、事業を起こしたいという思いがあります。現時点では漠然としていますが、出身地の徳島県と関係しているような事業をイメージしています。何か、架け橋的な役割を担えたらと思っているところです。
 
平井:自分自身の事業計画は、これまでもしっかりと立てられているのでしょうか。
 
新木:経営者の方に「作ってください」と言っている割には、キチッとしたものはまだ持てていません(笑)。でも、意識していることはあります。独立中小企業診断士は、損益分岐点が低いため、悪く言えば「これでいいや」と思いがちだと思うんです。ですから、損益分岐点の意識をもっと高いところに持って取り組まなければいけないと思っています。「ここまで達成しないとつぶれる」というラインを高く設定するということです。
 
平井:緊張感のある良い目標ですね。どうしても売上目標を立てがちですから、損益分岐点の意識も重要です。
 
新木:中小企業診断士は、合格率が 1次試験約20%、 2次試験も約20%ですよね。ですから、何かを目指すにしても、20%の世界に入っていくという意識を、いまも続けています。
 独立後は、独立コンサルタントの中の20%です。計ることはできませんが、意識として20%の中に入っていくという目標です。
 
平井:パレートの法則ですね。20%に入るのは大変そうだけれども、 1番や 2番とは違って目指しやすいですよね。
 
新木:そう、気楽がいいです。これからいくつの20%の壁があるかはわかりませんが、楽しみながらクリアしていきたいと思います。
 
 

撮影協力:カメラマン わたなべりょう
PROFILE
 
 
新木 啓弘 平井 彩子
Yoshihiro Shinki Saiko Hirai
新木経営情報研究所代表
中小企業診断士
中小企業診断士。平井彩子事務所代表

1992年大学卒業後、鉄道情報システム株式会社入社。以後、株式会社四国情報通信ネットワーク、富士ゼロックス情報システム株式会社を経て、2009年新木経営情報研究所開所、独立。経営診断、経営戦略立案・支援、IT戦略立案・支援、異業種連携をはじめ、ISO.IEC27001(ISMS)認証取得、情報セキュリティ規程策定支援、BCP策定支援のほか、人材育成支援、社内ビジネススキル研修にも携わる。『企業診断ニュース』をはじめ、執筆多数。

独立系ソフトウエア開発会社でプロジェクトマネージャを担当。証券会社向け、ベンチャーキャピタル向けシステム等、金融機関向け業務システムの構築現場を数多く経験。2010年からは、中小企業向け経営改善をメインとするコンサルティング会社に勤務し、会計業務支援、資金繰り改善、事業計画策等を担当。

2012 年平井彩子事務所を設立し、コンサルタントとして独立。人材育成を中心に、業務改善、システム構築支援など、現場が自分たちの力で実行する仕組みづくりから支援を行っている。

URL : http://www.shinkikjk.com/ Facebook:https://www.facebook.com/saiko.hirai
 

 

2015/11/15


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