■コンサルティング談 #09

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■コンサルティング談 #09

常に実践を意識して

第9回目のゲスト・吉成篤さんは、30代前半での突然の独立ながら、それまで嫌いだった「営業」を武器に、コンサルティングや研修だけでなく、大学教員としても活躍している診断士です。独立までの道のり、仕事に対する思いなど、幅広く語っていただきました。
 

営業がやりたくなくて
 
平井:最初に入社したのはシステム会社ですね。
 
吉成:正直に言って、営業をやりたくなかったので、システムエンジニアを選びました。2000年の ITバブルでシステムエンジニアが大量採用されていましたので、システム会社ばかり受けていました。いまでこそ営業担当者の支援をしていますが、その当時は営業が嫌いでした。
 
平井:システムに興味はあったのですか。
 
吉成:当時はそこそこ企業名が通っているところを選んで、何も考えずに面接を受けていただけでした。その分、入社してからは苦労しましたね。好きでもないプログラムを勉強して、新人研修の時点でついていける感じがまったくありませんでした。 8人採用されて、新人研修最後のテストがブービーだったのを覚えています。そんな状態だったので、システムエンジニアとして働いているイメージは湧きませんでした。
 
平井:気が重そうなスタートですね。
 
吉成:入社した年の12月に、「もう続けられません」と上司に言った覚えがあります。でも話をしたら、「俺が放っておきすぎた」と謝られ、結果「ずっと俺について来い」と言われました。本当にいい上司でした。そのおかげで、何とか続いたという感じです。
 
平井:助けられましたね。
 
吉成:でも、仕事自体は楽しくありませんでした。あの頃は、まだ学生気分が抜けてなかったのかもしれません。少し甘かったのでしょう。厳しく言う先輩もそれほどいなかったので、呑気にサラリーマン生活を過ごしていました。休みも取りやすかったですし、残業代も全額出ていましたからね。


ゲスト:吉成 篤氏

 

会社を良くする仕事とは
 
平井:なぜ、診断士を目指すことになったのですか。
 
吉成:システムは、“動いて当たり前”と思われることが多いですよね。無事に動いてもお礼も言われず、止まった瞬間に文句しか言われない世界だと感じてきました。「もっと会社全体を良い状態にしてあげられる仕事はないか」とネットで検索していたら、「日本で唯一のコンサルタントの資格です」と診断士の文字が目に入って。勉強はすぐに始めなかったのですが、頭の片隅に診断士という単語が存在するようになりました。
 
平井:何がきっかけで勉強を始めたのですか。
 
吉成:資格の名前を知ってから少し経った頃、もう 1度よく調べてみました。すると、平均学習期間が 1年以上と書いてあって、そこで尻込みしてしまいました。でも、いまでもはっきり覚えていますが、ここが 1つの転機でした。尻込みした翌日、仕事仲間が休憩中に、「俺、また今日は学校だ」と言い出したんです。「学校って何ですか?」と聞くと、「資格の勉強をしてるんだよ。中小企業診断士」と計ったように出てきて、「私も興味があるんですよ」と言ったら、「それなら、学校に通えば? 友だちもできるし、モチベーションも維持できるよ。いい先生を教えるから」と誘ってくれました。それで、その日のうちに申し込みに行ったのがきっかけでした。
 
平井:頭の中で気にしていると、違う形で出会うものかもしれませんね。


インタビュアー:平井彩子

転職してまさかの営業
 
平井:システム会社からコンサルティング会社に転職されましたが、その会社は経営コンサルティングがメインのサービスラインだったのですよね。具体的に独立を意識していたのですか。
 
吉成:受験校で講義を受けて、良くも悪くも独立の厳しさや楽しさを教えてもらいました。その中で漠然と、「俺もいつか独立しようかな」と思い始め、「それなら、転職して実務を学ぼう」とコンサルタント会社に入社することにしました。人前で話すことやコンサルタントの仕事を学ぶつもりだったのですが、実際に入社してみると、あれだけ嫌だった営業まで自分で行う仕事だったのです。
 
平井:「営業はやりたくない」という強い思いが、逆に営業を引き寄せてしまいましたね。
 
吉成:はい。初めての営業です。成績は、初年度はブービーで、小さい仕事を 2社取れただけでした。しかし、 2年目以降には社内のトップセールスになりました。また、コンサルタントとしてセミナーの講師なども行うのですが、その満足度で社内表彰されるようになり、社内に 4種類あった表彰制度のうち、 3つを取れるまでになりました。
 
平井:巻き返しを図るのは大変だったでしょうが、その忙しい中での勉強はもっと大変だったのではないですか。
 
吉成: 1次試験に合格した時点で、時間やコストを考えて確実なほうを取ろうと、大学院の養成課程に進むことを決めました。
 
平井:働きながらの時間確保は難しいと思いますが、仕事はどうしていましたか。
 
吉成:そういうこともあったので、「大学院に行くので、 3月に辞めます」と会社に伝えました。ところが、「貢献してくれているのに、わざわざ辞めなくていい」と社長が言ってくださり、変則勤務が認められることになりました。朝 7時に会社に行ってメールをチェックして、午前中の授業に 9時半から出席し、午後は空いていたら会社に行き、夜はセミナーに登壇することもありました。とても忙しい日々でした。でも、その特別待遇を面白く思わない社員もいたようで、「会社側から変則勤務を許可しておいて申し訳ないが、社内にこういう考えの人もいて…」と社長に言われ、急遽、退職することを決めました。
 
平井:突然の独立になりましたね。
 
吉成:はい。でも運良く、「辞めるのなら、うちの会社の面倒を見てよ」という会社が現れました。おかげで、いきなり収入が途絶えることはなく、ありがたかったですね。養成課程も 3月で修了し、ようやく2011年 4月に診断士登録と思った矢先、東日本大震災が起きて、何件か仕事がなくなり、診断士としてのスタートは本当にドタバタになりました。
 
平井:それは不安になったのではないですか。
 
吉成:サラリーマン時代に住宅も購入していましたので、本当に不安でした。そこで、研修会社に営業に行ったり、紹介をいただいたりして仕事を進めていきました。
 
平井:コンサルティング会社での営業経験が活きたのでは。
 
吉成:そうですね。そこで営業のトップになったということをウリにできましたからね。
 
 
大学の教員として
 
平井:現在は、どのような仕事をしていますか。
 
吉成:配分としては、コンサルティングが 2割、研修が 6割、大学教員の仕事が 2割くらいですね。
 
平井:大学では何を教えているのですか。
 
吉成:科目はリーダーシップ論で、経営学部の学生に教えています。私は、サラリーマンと個人事務所の期間を合わせてまだ数年ですが、経営経験はあるので、指導の際も学生が社会に出てからのことを意識しています。言っているのは、「遅刻はするな」と「宿題の納期を守れ」です。これが守れないと、社会では通用しませんからね。
 
平井:そうですね。大事な点ですが、学生時代にはわからないものかもしれません。
 
吉成:でも、いまの学生は私の時代と違って、とても熱心ですよ。「スチューデントアシスタント」といって、私の講義を補佐してくれる学生がいます。 1年生の講義では、 2年生がアシスタントに立候補します。立候補してくれる人は頭の回転も早いし、一緒に仕事をするのがとてもやりやすいです。
 
平井:時代とともに変わりますね。そういう意味では、情報端末の進化は、如実に変化を感じる部分ではありません。
 
吉成:そうですね。「宿題を印刷して、講義に持参して」と言うと、忘れたらすぐにタブレット端末やスマホから出してきますからね。メーリングリストも、 LINEのグループでやりとりをしています。「集まって意見交換をしなさい」と言っても、 LINE上で話していることもあるくらいです。
 
平井:コミュニケーションの方法は変化しますね。便利とは言え、ビジネスでは通用しないマナーもありますし、学生と社会人の間に大きな溝があるので、社会に出てからが大変そうですね。
 
吉成:絶対にそうですね。便利になったら便利になったで構わないので、使い方を間違えないようにして、当たり前のことを当たり前にやることだけは教えたいですね。
 
平井:吉成さんも、 3年目までは学生気分だったようですが…。
 
吉成:そうですね。でも、いまの自分があるのは、社会人として失敗した経験が活きているからです。「だから、学生の気持ちがわかる」という話ができる。いい話だけをする支援者や先生にはなりたくないですね。
 
 
「明日から実践」を目指して
 
平井:研修の仕事も多いようですが、心がけていることはどのようなことでしょう。
 
吉成:「楽しい研修だった」という感想がほとんどだったときは、「失敗だったな」と思います。そうではなく、「これから教わったことをやってみようと思います」、「とりあえず明日から実践してみようと思います」という感想をいただけるような講義を心がけています。自分で明日からやると決めさせることは、大きいですからね。
 
平井:そうですね。それは講義だけでなく、コンサルティング先でも同じですよね。
 
吉成:営業担当者の支援もしていますが、皆さんが実践して行動するようになると、会社も変わります。自発的に動いてもらえるようになれば、直接言わなくても変わっていくものですからね。
 
平井:そうですね。その場限りのコンサルティングや研修では意味がないですから、実践に結びつくことが大事ですよね。
 

独立して
 
平井:独立前に抱いていたイメージがあると思いますが、現状との違いはありますか。
 
吉成:独立して楽しいですよ。不安な点もありますが、働く時間がサラリーマン時代の半分くらいになったので、随分と楽になりました。そういう意味では、イメージとは合っていないかもしれませんね。もっと、死ぬほど働かなくてはいけないと思っていましたから。
 
平井:それは、サラリーマン時代には相当働いたということですね。
 
吉成:朝 6時半から、会議で終電までということもたくさんありましたし、時間的にも体力的にもキツかったですからね。
 
平井:プライベートの時間もまったくない状態だったわけですね。
 
吉成:そうですね。でも、そのコンサルティング会社での経験があってのいまですからね。
 
 

撮影協力:カメラマン わたなべりょう
PROFILE
 
 
吉成 篤 平井 彩子
Atsushi Yoshinari Saiko Hirai
中小企業診断士
セールストレーニング研究所代表
中小企業診断士。平井彩子事務所代表

1980年生まれ。大学卒業後、大手化学品メーカーグループのシステム会社に入社し、システムエンジニアとして活躍。その後、中小企業をターゲットとした監査法人系コンサルティング会社へ転職し、コンサルティング、研修講師、営業職と並行して3つの仕事を経験、営業ではトップセールスを獲得する。その後独立し、現在に至る。大学の兼任講師も担当。著書に『「失敗率0%」の営業術』

 

独立系ソフトウエア開発会社でプロジェクトマネージャを担当。証券会社向け、ベンチャーキャピタル向けシステム等、金融機関向け業務システムの構築現場を数多く経験。2010年からは、中小企業向け経営改善をメインとするコンサルティング会社に勤務し、会計業務支援、資金繰り改善、事業計画策等を担当。

2012 年平井彩子事務所を設立し、コンサルタントとして独立。人材育成を中心に、業務改善、システム構築支援など、現場が自分たちの力で実行する仕組みづくりから支援を行っている。

URL : http://www.sales-tr.jp/ Facebook:https://www.facebook.com/saiko.hirai
 

 

2015/12/15


■コンサルティング談 #09

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