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若者と政治をつなぐ、教育とお笑いそれぞれのアプローチ Vol.1

 

今年7月に行われる参議院選挙から、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられます。70年ぶりの公職選挙法改正により新たに加わる18歳、19歳の有権者は約240万人。その投票率や若者の政治への関心度に現在注目が集まっています。今回は、東大在学時に20代の投票率向上を目指す学生団体ivoteを立ち上げ、現在はNPO法人YouthCreateにて「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動する原田 謙介氏に、「お笑いジャーナリスト」を目指す若手女性芸人 たかまつななさんがお話を伺いました。

 

政治とかかわるようになったきっかけ

たかまつ:私は現在、18歳選挙権に向けてお笑いで面白い政治教育をしようと考えております。「お笑いを使って、感覚的に笑いながら学べる」というのを目指しているのですが、なかなか苦戦しています。アメリカだと「お笑い芸人を見て政治を知る文化」もあるんですが、日本だとないですね。逆に「政治が好きな人がそういうアングラな人たちを見に行く」みたいな感じになってしまっているので、それはもったいないなと思います。そこで、今日は原田さんに若者と政治教育について、色々とお話をお伺いしたいなと思っています。

まずはじめに、原田さん自身が政治に興味を持ったのはいつですか。

原田:高校2年の時かな、文系・理系を選ぶ時に、将来は世の中に広くかかわる職業につきたいなと漠然と思いました。「法律か政治行政にかかわる仕事」みたいな。そんな感じだったんですよ。

たかまつ:高校生の中で世の中に深くかかわるものと言って、政治行政ってなかなか出てこないですよね。そういう方が身の回りにいらっしゃったんですか。

原田:全然いなくて…多分うちの親も投票行ってなかったんじゃないかと思います。

大学に入った時は弁護士や政治家になることを想定していました。弁護士の仕事はイメージがわきますよね。ドラマとかでも見てるし。ところが、政治家のイメージが全くわかなくて。だから政治を現場で見てやろうと思って、大学入った直後ぐらいに国会議員さんのところでインターンをしながら政治を学びました。「学ぶ」というより「触れる」という感じですかね、それが政治とのかかわりのスタートです。

たかまつ:実際に関わってみてどうでしたか。

原田:政治家って悪い人ばっかりじゃないんだなあと。(笑)

たかまつ:マイナスのイメージからだったんですね。(笑)

原田:いうほどマイナスでもなくて。政治家も、政治にかかわっている事務所の秘書さんや後援会、色々な団体の人たちが「この事業をこうして欲しい」「国にこうしたい」「この分野をこうしたい」といったいろんな想いをもって政治のところに集まってきているんです。もちろん「あいつ何言ってんのかわかんないな」みたいな人もいらっしゃるんですけど、でも主義主張が合わないとしても、その人はその人なりに、しっかりとした素晴らしい想いがあるのは基本だと思ったんです。

たかまつ:その中で、自分はこういう風になろうと思ったことはありますか。

原田:「俺、政治家に向いてないな」と思ったことですね。

たかまつ:なんでですか?

原田:365日24時間、大変だなと思って。忙しそうなんですよ、政治家の人って。昼は国会があれば議会だし、夜は夜でいろんな勉強会とか会合だったり、土日は地元に行って地元まわり。しかもなぜかスーツを毎回着なきゃいけないとかね。それは無理だなと思ったり。

たかまつ:今日もラフですもんね。(笑)

原田:そうなんですよ。すみません。(笑)

スーツ嫌いなんですよね。インターンの時はもちろん着てたんですけど、あの時着すぎたんですかね。全然着なくなりました。友達の結婚式ぐらいです。

たかまつ:それで政治家向いてないと思って?

原田:あとはもう少し真面目な理由で言うと、政治家にもよるんでしょうけど「当選してから何をするか」が大事じゃないですか。当選して終わりになっちゃったら意味がないし、どの世界でもそうなのかもしれないですけど、例えば政治家同士の中で。どっちの立場とっていくかとか、各政党同士とか、色々と「政治の中の政治」みたいなのがうっすら漏れてくるのがインターンの僕にも伝わるんですね。それが面倒くさいなと思って。

政治家は理想論で言うと、全員一議員でちゃんとやれるはずなのに、そもそも一回生議員なのか、四回生、五回生なのかで全然違うというのも、なんか上っていく自信がなくて。

たかまつ:誰についていくか…。

原田:誰について行くか位なら自分の判断でいいんですけど、結局自分が例えばある法案に対して「俺はAでやる」と思っていても、いろんな力関係で、「とりあえず今回はみんなBと言わなきゃいけない」とかあるじゃないですか。もちろん必要な判断だと思うんですけど、自分の性格的にはそれはできないなと思って、となると将来政治家になれたとしても、その中で何もできないなと、それで政治家は向いていないということです。

もうひとつ気づいたのは、今のこういう活動にも至るんですけど「政治の現場に若者がいないな」というのが実感としてありました。国会の横に議員会館と呼ばれる各議員の事務所があるんですけど、そこにいる時も若い人に会わないし、その議員の地元に戻って地元の選挙区で色々な活動をする時も、若い人と会って意見交換することなんてないし、なんかおかしいなと。

社会問題とかもそうなのかもしれないですけど、実際に見たり当事者と会って話をしないと、数字や映像だけでは伝わらないものって絶対あるはずです。それを政治家が若者と会わないということはおかしいと。しかも、会わない結果として、ネガティブなイメージをお互い勝手に持っているからすごくもったいないことです。

若者からすると「何なの政治というのは。金のこととか不倫してやがる」そういうイメージだし、政治家から見ても「どうせ若い人は投票に行かないんだろう」とか、あるいは方向をずらすと「町内会にすら参加していない若者がなんだ」みたいなのがあるわけですよ。でも実際に会って話せばお互いのことを知れる、そういうことをやりたいなと思ったのが、若い人と政治をつなぐ活動に繋がっていると思います。

まずは会って話すきっかけを作りたい、ivote設立の意義

原田 謙介さん

たかまつ:それがivote作ったきっかけなんですね。

原田:はい。大学3年生の時にivoteという学生団体を立ち上げました。

たかまつ:「議員さんと若者を繋ぐ」というのがその時一番の目的だったんですか。

原田:僕自身が、政治の現場に行って政治家という人と会っていろいろ感じるところから政治を学んだので、みんなも、もっと会えばいいんじゃないのかなと。

たかまつ:会って何が変わったんですか。

原田:当然、政治家一人ひとり考えていることが違うし、悩んでいることも違うし、人柄も違うというのがわかります。それと「会えば話を聞いてくれるんだ」と実感しました。

僕の場合は会ったというよりもインターンについていた議員さんとのやりとりが多いのですが、「大学生としてこういうことが気になっているんですけど、どう思いますか」と話をした時に、きちんと応答してくれましたし、あるいは若者とか大学の政策みたいな時に「原田君この辺りどう思う?」と聞いてくれました。

たかまつ:ちゃんと声を拾い上げようとしているという姿は、今まで想像がつかなかったということですか?

原田:そうですね。「人がやってるんだ」と実感しました。しかも若者だろうがすごい偉い人であろうが、色んな人のことをちゃんと知ろうと思ってるんだ、というのが結構面白くて…。

たかまつ:これだけ若い人が政治に興味なくて、政治に参加してもらおうとしても、声を拾おうとしても拾える機会っていうのはなかなかないから、議員さんも実際大変だと思いますね。

原田:まさにおっしゃるとおりで、政治家としてはやりようがないと思ってるんですよ。だって仮にすごくカッコいいホームページ作って、若者来いとか、何月何日若者と対話しますとか書いても、若者がそのホームページ誰も見に行かない。そもそも接点がないと思うんです。なので、若者と政治側の接点になれるような機能を果たせないかなというイメージでしたね。

たかまつ:私もお笑い芸人としてライブをやる時と比べて、例えば18歳選挙権についてのライブとか、日本の安全保障について1時間のトークライブとなると、そういう堅い文言が一行でも入ったとたんに、お客さんの入りが減るんですよね。

若い人がどんどんいなくなって、私は若い人に向けてできる限りかみ砕いてわかりやすく大胆に例えてと、芸人にしかできないことをやっているのに、それをやった瞬間、政治オタクじゃないですけども、そういう人がいっぱいきちゃうので、それはそれでありがたいんですけども、肝心の高校生とか政治に全く興味のない人がなかなか来てくれないなと思います。

原田:来ないですね。首相と会えるなら会いに行くかもしれないですけど、国会議員も数百人いて「誰だあいつ」みたいな人がいっぱいいる中で、じゃあ話しましょうと言っても来ないのは、そこは繰り返しになっちゃいますけど、誰かがうまく繋げるような仕組みが必要ですね。

たかまつ:だからこそ原田さんにお聞きしたいのですが、原田さんは若い人を巻き込むという作業を、誰もが苦戦している中、実現されて実績も残されてますよね、その秘訣はなんですか。

原田:一番言えるのは「長くやってよかったな」という感じですよ。ivote立ち上げたのが2008年なので、7年ぐらい経ちます。

「ハラケンがやっているなら行ってみるか」と思わせれば勝ち

インタビュアー:たかまつななさん

たかまつ:最初は大変でした?

原田:大変でした。マジで人が集まらないし。

たかまつ:どんな感じだったんですか。

原田:当時ツイッターとかもないし、イベントをやろうと思っても、全然人が集まらないから、友達に本当に無理やりお願いをして来てもらいました。

当初は団体として何かを伝えようとしてたので、それでは人も来ないし、来ても要はうちの大学とかの「絶対お前投票行くだろ」みたいな真面目なやつばかり来ちゃうんですよね。そこが悩ましかったんです。

たかまつ:それはどうやったら変えられますか。私も今同じことで悩んでいるんですけど。

原田:結局「誰がやるのか」というのがすごく大事で、僕あだ名がハラケンというんですけど「あっ、ハラケンがやってるんならちょっと行ってみてるか」と思わせれば勝ちかなと思っているんです。まだまだ全然狭い範囲ですけどね。あと、ivote立ち上げた時からずっとやってるのは、こっちが色んな同世代の学祭だったりイベントに行きまくるということですね。

たかまつ:行ってどうするんですか。

原田:2つあって、ひとつは要は僕らを知ってもらうこと。原田謙介なる人間だとかivoteという団体はこういう団体なんだって知ってもらうことです。

もうひとつはマーケティング調査みたいな部分があって、結構空気読まずにやってました。いろんなイベントに行って、ちょっと仲良くなった同世代の人に「政治どう思う?」って話を聞くんですよね、無理やり。(笑) 「選挙行くの?」とか大体ちょっと嫌がられるんですけど、そこはある程度仲良くなってから聞くと、いろんな声が聞けるわけですよ。

たかまつ:リアルな若者が何を考えているかということですね。

原田:そうですね。その2つをやっていって、原田謙介とかivoteというのを知ってもらうというのと同時に、知ってもらった対象の彼らが政治とか選挙に対してどういうイメージがあるのか、どういうイベントをやれば彼らが興味を持つのかというのが多少はわかるんで、そういうので克服していくしかないかなと。

たかまつ:私は今現役の大学院生で、若い人と嫌でも一緒にいる環境にいると同時にお笑い芸人でもあります。芸人さんで政治に興味持っている人ってホントに少ないんですよ。勉強が苦手だという方も多いので、だからそういう人の気持ちもわかる環境にいるのは自分は幸せだなと思うんですね。

原田:絶対大事ですよ。

たかまつ:東大とか慶応では将来官僚になりたい子とかすごい政治に興味がありますみたいな子とも話せるし、興味のない人とも話せるので、両方の感覚を持てる人ってなかなかいない気がするので、私はその通訳になりたいなと思っています。

原田:正に、多分イメージはすごく近いところにあると思っています。しかも通訳になる人が要は単純な通訳だと意味がないわけで、通訳の人っていろいろ言葉を補いながら通訳してくれていると思うんで、そこがやれればいいかなと思いますね。

身近なところから政治を学ぶのがスタート

たかまつ:コンテンツの開発についてお聞かせ下さい。

原田:「身近なネタを持ってくる」ということをスタートにしています。例えば今僕は中野に住んでいるんですけど、中野は駅の周りの再開発が進んでいるので、そこからまずスタートします。決して安保とか年金とかからスタートしないんですね。さっき安保法について1時間のライブやると人が来ないと言ってましたが、授業とか何かワークショップやらせてもらう時に、参加している方とか生徒が政治の話だと思わない方がいいんですよ。思うと「政治イコールピシッとやんなきゃ」みたいになっちゃうから。

たかまつ:そうなんですね。政治って聞いた瞬間に拒否反応がとてもあることにびっくりしますね。

原田:そうですね。社会の授業だって、皆さんの生活の話だよっていうぐらいのスタートにしてた方がいいかなというのは心がけていますね。

たかまつ:そうすると原田さんがたくさんいないといけないじゃないですか。そこらへんはどうなんですか。

原田:そんなことはなくて、誰でもできるんですよ。僕が行くのには限界があるので、いろんな人がやってほしいし、学校でも18歳選挙権の授業が増えてきている。でも、「先生がやればいいじゃん」というのが僕らの結論なんですよ。だから方針としては「まるっと2コマあるんで授業やってください」みたいのは請けないことにしています。

たかまつ:請けないんですか。なぜですか?

原田:学校の先生が「この辺悩んでるんだよね」とか、「こういうことやりたいけど何かいいアイディアない?」とか、「こういう授業の中で学校の先生はこれをやるから原田さんこの辺やってみて」という風に一緒に作らないと、結局まるっと投げて来られても、また来年まるっと投げられては全然変わらないので。僕らはあくまでも学校の先生が授業をやる中のサポートじゃないといけないと思っています。

たかまつ:結構お問い合わせが来てると思いますが、1件1件対応しているんですか。

原田:きてます。基本的には1件ずつ対応していますね。今教材をどんどん配ってるので、問い合わせも全国から来ます。例えば秋田とか。

たかまつ:秋田の方とかに相談された場合も、身近な問題から一緒に考えるんですか?

原田:秋田なら、秋田市議会の議事録があるじゃないですか、そこで高校生って打ち込むと、なんか高校生にかかわるトピックが出てきます。その辺りを調べて、実際にそこの高校生に、「このトピックについて馴染みがありますか」とか話していって。

たかまつ:結構骨の折れる作業ですね。

原田:でも先生の力もすごいです。僕らなりの視点とか経験をお伝えしたり、事例をお見せすると、先生がそこからわっと広げたりアレンジして作ってくださいますよ。その辺はたかまつさんが思っているほど大変じゃないですね。

たかまつ:本当ですか?

私、実は教員免許の取得も目指しているので、教育実習にも行ったんです。「若者が政治に興味がないのは教育に問題がある」と今まで考えていましたし、本当なら政治とか社会問題って現代社会や公民の時間で学ぶ機会があるのに、興味が持てないのは、その授業に決定的に穴があると思っていました。

でも、現場を見ると、学校の先生も死ぬほど忙しいから、これに教材開発をする時間はないなと思いました。教育実習生だと部活動も持っていないわけですし、教材開発にも200%ぐらい力を注げるんです。寝ずに3週間作って、そしたらものすごい評価はよかったんですけども、でもこれを逆に「たかまつさんの授業面白かったから他の先生もこれやってよ」とかって絶対できないなと思いました。

原田:おっしゃるとおり、先生って本当に忙しそうだし、大変そうなので、やっぱり一から作れというのは無茶な話。でもなんかネタがあればやれるので、そのネタをもっともっと本当は国が用意してあげればいいと思うし、それがまだまだ間に合っていないというのはありますね。

たかまつさんが作ったのを他の先生にまるっと渡しても厳しいですか?

たかまつ:そういう風にしようと、出張の授業というのを考えるようになりました。コンテンツはこっちで作るけれども、「お笑い芸人の私だからできる」というコンテンツにはしない、パワーポイントがあれば誰でもできるようなものにする。私も4回とか5回の授業だったからできたんですけど、それを30回分とかにするとそれだけ面白い物は作れないから、一番最初の導入の部分、点と点を線で結ぶようなそういう授業だけは各テーマごとにできる限り作りたいと思っています。

教育実習の時は国際協力、今は18歳選挙権、それをどんどんどんどん展開して渡していこうと、正にしているところなんです。

18歳選挙権で入りやすくなった学校という現場

たかまつ:学校現場って入りにくいと思いますが、その辺りはいかがですか。

原田:僕らも入るのはあきらめてたんですよ。YouthCreateを立ち上げて5年目なんですけど、最初の頃はやっぱり学校でやりたいからいろいろ連絡をしていて、基本的には断られました。まず政治というのがダメだし、YouthCreateって言っても何かわからないし。でもそれが「18歳選挙権」になって、この半年ですよ、僕らが学校に頻繁に行くようになったのは。

たかまつ:急に学校側もやんなきゃとなって、こういうところあるんだったらお願いしてみようかという感じでしょうか。

原田:スタートは各自治体の選挙管理委員会という選挙担当の部署があるので、そこと組んで区内の全中学・高校に案内を出してもらって、やりますといったところに選挙管理委員会と僕らが一緒に行っていました。都内では中野、目黒、練馬、文京区あたりです。

たかまつ:そこに掛け合いに行って一緒にこういうことやりませんかと…。

原田:掛け合いにいったこともありますし、向こうから一緒にやりましょうと言われた時もあります。学校側としてはYouthCreateを入れるというよりは、「行政のコンテンツを入れている」というイメージなんですよ。

たかまつ:そっちのほうが安心ですよね、学校の先生は。

原田:それで、そういうのが口コミとかメディアに取り上げていただいた時に徐々に学校の先生等から直接依頼がくるようになってきたという感じですね。

たかまつ:実際に子供の声はどう変わりますか。

原田:すごくうれしい場合のアンケートの例で言うと「今まで政治は頭のいい人だけやっているものだと思っていたけど、高校生の自分だって意見言っていいと思った」とか。

たかまつ:うれしいですね。

原田:理想パターンですよね。こればっかりではないですけど。逆に悪くはないんだけど、失敗したなと思うのは、「選挙の仕組みが分かった」とか、「政治って大切だと思った」とか。

たかまつ:それはなんで失敗なんですか。いいように聞こえますけどね。

原田:多分みんな政治って大切だって思っているんじゃないですかね。そこそこ。

たかまつ:ビフォーとアフターがあんまり変わっていないということですか。

原田:そうです。僕らが伝えたいのって「政治が大事だ」ということじゃなくて「政治にかかわれるんだ」ということです。多分社会問題も一緒で、社会問題があるんだということも知らなきゃいけないけど、その中で「この社会問題に自分もかかわって変えていけるんだ」とか、変えたいと思ってもらわなきゃ社会問題って変わらないじゃないですか。

今僕らも政治にかかわるとか街のことにかかわるということを感じてもらわなきゃいけないのに、結局「政治って大切だ」と書いている方は、多分そこに自分でかかわろうという意識は持てなかったと思うんですよね。だからそういうのは、ちょっと悔しいなという感じがする。

たかまつ:全く無関心なことから自分もかかわっていいんだ、関わりたいというところまでってどのくらいかかるんですか。

原田:授業やらせてもらえるのは本当に長くて2コマとかなので。

たかまつ:90分とかの間で変わるんですか?

原田:授業終わった瞬間は変わってるんでしょうね。3分経ったら忘れているかもしれないけど。そのタイミングではそう思ってもらうしかないので。

たかまつ:実際に学校に行ったり、ivoteの活動等を通じて、高校生がこういう風に行動を起こしてくれて、こういう問題を解決したという事例はありますか。

原田:問題解決までの事例は正直ないんですけど、でも例えば高校3年生がそれを高校2年生に伝えるための授業をやりたいと言ってきてくれて、その授業づくりのお手伝いをしたりとか、そういう事例はあります。

たかまつ:それは素敵ですね。それなりに問題意識を持って、また同じことをやらせてあげたいと思ったわけですもんね。

原田:嬉しいですよ。あと悔しいのは出前授業行ったら、そのあと生徒がどうなったかって定点観測も何もできないことです。担当の先生と仲良くなって数か月後に飲んだ時に聞く機会はありますので「その後どうですか」と聞くと「この前別の授業で政治の話をした時に、原田さんの授業のこと覚えてたよ」というのは嬉しいですけど…それぐらいですかね。本当にそこはやり逃げです。「あとは先生に任せた」となります。

逆に先生がとりあえず選挙の1コマ授業を僕らに丸投げをしたのを請けても、そのあと先生が何もフォローとか先生なりの想いを生徒に伝えなければ、意味がないし、1回やりましたというアリバイ作りに使われても嫌だし。

たかまつ:それはとても難しい問題ですね。あと、学校の先生がやりたいと思って物理的に無理なことは解決できるかもしれないですけど、政治的に中立性を求められているじゃないですか。となると、学校の先生もいくら中立だと思ってやっても、もしかしたら保護者から教育委員会にクレームがいった時に自分の首が飛ぶんじゃないかとか、私が学校の先生だったら考えるんですよね。いくら自分が中立だと思っていても、ちょっと怖いな怖いな…ってどんどん保守的になって、何も結局言えなくなるみたいなことってないんですかね。

原田:ありますね。授業をやるのもそうだし、学校の先生向けの研修会に出ていただく時に、やはり学校の先生が気にしているのは、どこまで政治的に中立を保てるのか、ラインがどこなのかという点です。これは仕方ないですよね、具体的に明確なラインを示せるわけじゃないので。

政治をシミュレーション

たかまつ:そこはどうやって中立を保っているんですか。

原田:実際の政治の話をしないということです。

例えば、TPPが盛り上がっています、安保が盛り上がっています、消費税が盛り上がっていますみたいな、いわゆるニュース的な話は基本入れずに、ギリ入れるとするとさっき言った「街の身近なことが議論されているよ」とか、あるいは「こういうことが行政で決まって、駅はこう変わるよ」みたいな例を出すだけなので、やはり皆さんがイメージするようなすごく議論されている話とか政党色が出ることは触れないようにしています。

たかまつ:触れないでどうやって考えさせているんですか?

原田:イメージですよね。身近なこんなところで政治にかかわっているんだということを感じてもらったり、いろんなシミュレーションやってもらうんです。架空の町でひとつ公園を作ることになりました。みたいなシミュレーションを体験してもらうことで、政治にかかわるとはどういうことかを考えます。

具体的には「合意形成」というやり方を概念として伝えたいなと思っています。例えば公園を作るシュミレーションの場合、高校生6人ぐらいのグループになってもらって、あなたはお年寄り役、あなたは公園でベビーカーを連れてくるお母さん役、あなたは公園のそばに住んでいる人、あなたは中学生という風に色んな役割を振ります。

その中でどういうことを公園に望むのか。すると、公園のそばに住んでいる人は、今まで公園なかったのにきっとうるさくなるから「公園はそもそもいらない」という話をしたりするわけです。いろんな意見が出ますが、公園を作るのは決まっている。そこで、みんなで折り合いをつけてくださいということをステップを踏んでやってもらうと折り合いがつくし、そういう中で「合意形成」ということを学んでいくことになります。

たかまつ:私もロールプレイングゲームをやるようにしているんです。国際協力の時も、私は世界のどこかで起こっているから関係ないと思われがちな問題をもっと身近に考えるようにしたいんですけど「国際協力なんて遠すぎる」「どこかの国でやっていることだし、それより私たちの生活助けてよ」となる。そのバランスをどうするかを考えてもらいたくて。

教科書には一行しか書いていないようなこと、例えば「日本の政府開発援助は産業基盤中心であることに批判が集まっている」、それだけで終わっていて、それだとそれを暗記するだけで、それが反対の側からみたらいいとなるかもしれない。そういうことを考えられないようになってしまっているということに問題意識を持っています。

例えばバングラデシュに橋を作ります、あなたは安倍首相です、あなたはバングラデシュの大統領です、あなたはマンゴー農家です、あなたは人権擁護団体の代表ですみたいな感じで議論してくださいという感じでやると、やっぱり「立場違うとこんだけ変わるんだ」「賛成、反対を一概に選べないなあと思いました」みたいな意見が出てきます。

原田:政治もそうですし、社会問題もそうだし、結局誰かがそれをそのままでいいと思っている、全員がそれを嫌だと思ったら変わるはずなんですよ、確実に。その誰かというのをいろんなパターンで出して示さないといけないと思います。

ちょっと話がずれちゃいますけど、例えば子育てに関して、待機児童問題で保育園が足りない話は特に都心部で多いです。僕は29歳で周りが子育て世代なのでそういう話も出るんですけど、そこで思わないといけないのは、「保育園が欲しい」というのは当然必要なことだし言っていいけど、例えば1個保育園を作ると保育園に入れる家庭の負担が例えば10万だとします。でもその10万のために行政としては毎月140万円かかっているんだみたいなことはちゃんと知っておかなきゃいけないと思います。それを知った上で、さらにはその140万で「もっと介護施設が欲しい」と言っている人もいるかもしれないということは抑えないと、すごく危ういなあと思っています。


 

 

 

2016/05/16


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