■ CREATIVE #05

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■ CREATIVE #05

ものづくり&ブランディングのムーブメント(interview)

―――30代の履くスニーカーは、いわゆるナショナルブランドじゃないんだというのは、ただ「ナショナルブランドじゃない商品」が欲しいというだけなのですか
渡利氏:30歳超えておじさんになったら、従来から当たり前にあるスタイル、つまりほそーいパンツ履いて、先がとんがっている靴を履くということに違和感があって、そうじゃないと思ってたんですね。それってブランドでもない、柄・パターンでもない。

そういう従来の当たり前を一端ゼロにして、根本的なフォルムだったりシルエットを変えると、人はどう反応するんだろうという仮説を立てて作ってみたんです。

それが意外といろんな人に受け入れられて、また商品を売るお店にも受け入れられた。

そもそも靴を作るって、資本力のある企業が作るもの。ボクらのような「いち個人」がスニーカーのブランドを作るって概念がいままでにないんですね。しかも国産で。ましてや場所もない。

そういった「ないもの」が重なって、他になかったものが出来上がったという要素が大きいですね。そこが、ボクらが考えていたレベルを超えて、「買う」という要素に繋がってきたと思う。

ゴトウ氏: メーカーとなると、やはりアイデンティティとしてマークを入れるけれど、それをあえて無くしたところに「シンプルな服を着る」または「シンプルな服を売る」というお店に受け入れたということでしょうか。
―――ナショナルブランドを嫌う意識は何なのでしょう
渡利氏:ナショナルブランドそのものに嫌気をさしているんです。まず同じものが大量にある。売られ方が雑。国産でないというところがひっかかるんですね。
―――ナショナルブランドは、売れるから大量生産するのでは?
渡利氏:現在のものづくりの閉塞感を作ったのは、少なからずそこに原因があるんじゃないかと思うんですね。ボクは仕事をする上でも、お金を稼ぐことも、「共感を得て対価を得る」という流れを作りたかった。つまりモノを買うことも、今までと違う「買い方」を作りたかったんです。それに共感する人は思っている以上に同世代に多かったですね。

ゴトウ氏: 大量生産は大量消費されて、作り手が見えないというところでしょうね。セレクトショップ側が、作り手側の顔を知った上で売りたいとうニーズがあった。ハマったということですね。ボクもそこにハマるように、もっていったというのもあります。

渡利氏:これに関してはボクらのブランドが受けている一つには国産というのは大きいと思いますね。なんとなくみんな、失われつつある状況を感じ取っているんじゃないでしょうか。
―――従来のお仕着せがいやだということと、ナショナルブランドを買いたくないということはリンクしますか?そうじゃないライフスタイルを選びたいという?
渡利氏:そこ行ってしまってそこに漬かると、できあがったしくみの中で同じサイクルをしてしまうっていう。
―――それは嫌悪感ですか?恐怖ですか?
渡利氏: 正直両方ありますね。
―――その今までのお仕着せを作ったのも、ナショナルブランドを作ったのも、団塊の世代とその前後世代になりますが、それらの世代も、その上の世代や社会に嫌悪感や恐怖に対抗して、自分たちのスタイルをと嬉々として作ってこられてきたものですね。

その作り上げられたプロトタイプを次世代には嫌悪と恐怖に感じる。しかしその「反骨」の根本は同じように見えるのですが、30代つまり団塊ジュニアの世代は、何を壊して、何を作ろうと思うのでしょうか
渡利氏:やはり「生活のしかた」というところに行きつくのではないかと思いますね。スローライフという言葉がありますけれど、ボクらの世代が起した動きなんですね。もっと自分の暮らしで、何が大事で何をすべきかをもう一度考えだしてるんじゃないかと。そこに夢や希望を感じてると思います。また、感じないといけないと思いますね。それをなし得るのは、同世代や下の世代なんです。

やっぱり上の世代が土台を作ってきてくれたわけで感謝はしてるんです。でも、自分たちのやり方を押し付けてくるきらいがあるので、そこには反発心はありますね。中には「いままでのやり方じゃあかん」と協力してくれる方も少なくないですけど。
―――そこに共感して同世代や下の世代が「嗅覚」で嗅ぎ分けてくる?
渡利氏:面白いなと思うのは、その嗅ぎ分け方が、いままでは「クチコミ」だったり雑誌だったりですが、今はWEBなんですね。

ゴトウ氏:特にソーシャルメディアが機能していますね。

渡利氏:リアルな場所に来るきっかけが重要なんです。でもこの店(ブルーオーバー)は、いわゆる商業地域から離れていて、人通りも少ない。昭和初期に作られたレトロなビルの地下をリノベーションしたものです。

いままでは、人が集まる商業地域に店を出せば商品が売れるという概念しかなかったんですが、そうでなくて、場所はどこでも良いんです。きっかけがあれば来る。そのきっかけをどこでにもっていくか、です。

たとえば店の店長がブログを書いたりTwitterでつぶやいたりで知らない人とコミュニケーションを取り合うんです。

そこで趣味があうと、話をするきっかけができやすい。そういうことを望んでくる年齢層というのでターゲットが絞られてくる、そうして店の存在を知り、来るきっかけができる。

ゴトウ氏:その流れはありますね
―――30代の嗅覚の最強のツールって、やはりWEBですか?
ゴトウ氏: アンテナ張ってる人はそうですね。

渡利氏:今の時代、それは言えるんじゃないかな。調べて調べて調べて。調べるって簡単に見えるけど、こだわる人はこだわった調べ方をするんですね。WEBの使い方って、いろいろあって、カンタンな使い方と高度な使い方があると思うんですよ。

調べて調べてくるっという時点で、ここは自分にとって居心地が良いとところだと期待して来る。そうしたら人の話を聞きだすんですね。店長の話とかを。

一見WEB上のコミュニケーションって稀薄だと思われがちだけど、そこで高度な使い方をする人だから感覚は鋭い、この言葉や商品があるから、足を運ぶ場所だと納得したら来るんですね。そういう人は行動力もあるし、発信力もある。
―――それは今の30代の特色ですか?それって何なのでしょう
渡利氏: やっぱり「怒り」と「恐怖」じゃないですか?(笑)ボクは「恐怖」というより、「怒り」だと思います。
―――そのモティーフってやはり団塊の世代が持ち合わせていたものと同じでは?
渡利氏:そうだと思います。繰り返すんでしょうね。

ゴトウ氏: ステレオタイプに行きたくない。ということでしょうね。

渡利氏:ものづくりっていうのは上の世代の人がやってることという感覚なんです。でもそれをボクらがそれをやったらどうなるか、と戦いを挑んでいるんでしょうね。

ゴトウ氏:その団塊の世代のものづくりって、既成から外れないですね

渡利氏:そこはボクは敬意を表してますね。でも他が見えてなさすぎことってある。技にこだわりすぎることがある。

ゴトウ氏:なるほど。

渡利氏:ボクらの世代は、もう出来上がってる時代なわけで、そこに入るか入らないかの選択しかなかった。

そうじゃなくて、ゼロから自分たちで作りたい。自分らの暮らしに合った、売り方に合ったものだけを作りたい。いわゆる町工場がしてきたことを、再現したいというのがありますね
―――それも、やはり上の世代が高度成長期やバブル期で考えて作ってきたことと同じに見えるのですが、そう言われると不本意ですか?
渡利氏:イヤですね(笑)その世代が作ってきたものは、作れば売れた時代だった。需要のバランスで言えば供給が少なかった。でもボクたちはモノがありふれててる中で、売れるものを作るほうが難しいと思いますね。
―――では、下の世代には、同じ感覚を受け継いでもらいたいと思いますか?それとも自分たちをも含めて、疑問を打ち壊しゼロから作り上げることを望みますか?
渡利氏:ボクらはどこかで「誰にもアテにならない」と思ってます。親も国も。その危機感の感覚は下の世代にはもっとシビアに持ち合わせています。

ボクの生徒たち(大学生)は、生まれた時から周りは不景気で、安いものがあふれてて、100円均一や、ファストファッションなどが当たり前に存在してる時代。

だけど、それって違うな、おかしいと思う子供も出てきていますね。クラスに4-5人は、これって違うなという子がいて、やはり行動的なんですよ。

ゴトウ氏: 経済的に100円均一でしか買えなくても、どっか違うと気付いてる子が出てきていますね。疑問を持たないと変わらないですからね。

渡利氏:自分で考える習慣を身につけろと生徒には言ってますね。与えられたもの、当たり前にあるものを、そのまま受け入れることに疑問視しろと。もちろんそれで良いという判断もあるけれど、そうでないなら、考え行動せよ。ということなんです。

ゴトウ氏: 今の子は草食的で人間関係が稀薄だといわれますが、案外そうでない。出会いに積極的な部分はあると思いますね。WEBもリアルも両方ないと、成立しないと思っているようですね。

渡利氏:WEBはきっかけにすぎないのかもしれません。案外自分たちでゼロから考えてみて、彼らの方からまた違うものが出てくるのかもしれません。そこを受け継いで欲しいですね。
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2012/06/19


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