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■ CREATIVE #05

ものづくり&ブランディングのムーブメント vol.1

ものづくり&ブランディングのムーブメント

今回はプロダクトデザイナーであり芸術大学の講師としてもで活躍されながら、スニーカーのブランド「ブルーオーバー」を立ち上げた渡利ヒトシさんと、そのアートディレクションを務める、グラフィックデザイナーのゴトウシュウさんの対談です。共に30代という世代がキーワードになる「ものづくり」と「ブランディング」のムーブメントを起し、同世代から大きな共感を得ています。なぜこの世代なのか、何に共感されているのか、そのコンセプトを社会への想いをも交えて熱く語っていただきました。取材場所は、大阪・中ノ島、昭和4年に立てられたレトロなビルの地下にあるブルーオーバーのコンセプトショップ。今回は特別にお二人へのインタビューも掲載しています。30代以外の世代が理解したいこと、また彼らの次世代への想いをお聞きしました。
ものづくりを再現する
ゴトウ氏:なぜスニーカーだったんですか?

渡利氏:その前に、ボクは今33歳でね。26歳で独立したんだけど、ずっとBtoB、対企業との商品企画開発で、(プロダクト)デザインをやってる中で、アジア圏の工場を使ってものを作ることって、当然の流れとしてあったわけなんですね。

アジア圏って、創る人のマインドは(日本人と)違うんだけど、今は設備面でいうと、ダントツ良い環境があるから、(アジア圏のほうが)良い製品ができあがってしまう。

そういう現実を目の当たりにしてきて、これはヤバイ、だんだん国内でのものづくりの場所が置き去りにされるんじゃないかって思い始めたんですね。

ゴトウ氏:国内のものづくりの現場が疲弊してるっていうか?

渡利氏:弱くなってしまってる。まあ(アジア圏で作るという)事情ってのはわかってるんだけど、この状況をなんとかできないものかと漠然と考えていましたね。

30歳になる前に、もう一度自分のやりたい「ものづくり」って何かって考えたときに、企業に属していないボクからみて、大きな流れの中に前へ習えで入り込むってのがどうも疑問だった。

ゴトウ氏:それで国内生産にこだわるスニーカーのブランドを作ろうと。

渡利氏:そう。まあ、もとから靴って好きだったんですね。いわゆる95年のハイテクスニーカーブームに影響受けたのもあるんだけど、靴っていうものが、ボクにとってファッション的にも、プロダクト的にも、ワクワクする対象だった。

ゴトウ氏:あーわかる(笑)

渡利氏:でもボクはあくまでも作り手側に人間なので、モノを作るだけじゃ商品は売れない。じゃ、どういうふうにすれば(市場に)流せるかと考えていたときにゴトウさんと出会ったんですよね。ボクにとって作り手だけのメンバーはいらなくって、一緒にモノを作って売るメンバーが欲しかった。

ゴトウ氏:そこでなぜ、自分がメーカーになって、「外注する」という選択は選ばなかったんです?

渡利氏:そこはね。ボクの中でこだわっていたことがあって、いわゆる「外注する」っていうことは、極端に言えばお金を出せばできることであって、微妙な力関係も出てくる。

それで動く関係だと、自分しか儲からないことになると思うんやね。やっぱりそこで、リスクを共有するというか、痛みをわかちあえる関係だとしたら、強力に動いてくれるじゃないかと思ってたんです。

あと、価値観の共有が前提としてあるから、「チーム」として機能したいってのはありましたね。

ゴトウ氏:逆に言うと、価値観の合わない人とあたると、製品を変えられていってしまうというリスクってあるじゃないですか。

渡利氏:それが難しいとこ(笑)だいたい30代になると、それぞれが仕事してきてそれなりにスキルがついてくる。で、そろそろ方向性を変えたいなと思い始める時期でもあると思うんですね。そこでいかに価値観を同じくする人を探すかって術を学ばないとと思うんですよ。

ゴトウ氏:危機感をどこまで共有できるかということが重要ですよね。ボクはそこがマッチして一緒にやってる。

渡利氏:危機感とプラス面白さでしょうね。ものづくりって閉鎖的な状況だと思うんですよ。みんな暗ーい顔してるってのもあるんですけど、だから、動くだけじゃダメで、やっぱり面白さって必要で、このチームで組んだらなんかやりたいことが実現できるんじゃないかという期待感を感じさせることって必要だと思うんですね。そこに共感を得られたら自然に繋がるって感覚はあるなあ。

ゴトウ氏:逆で言うと、モノが作られていかないと、ボクの商売がなくなるわけですよ。最終的なアウトプットがなくなる。

ブランディングであったりグラフィックっていうのは、もともと商品があって、それがどういうふうに構築されるかだから、モノが作られていかないとコントロールする機会がない。作る人とコントロールできる人が組めば、新しいことができそうだと思いましたね。

渡利氏:そう言っていただけると、まさに思った通りです(笑)。やっぱり商売っていうか、ものを最後(エンドユーザー)まで届けるって、自分一人じゃできないし、自分しか儲からないしくみって広がりがない。

「かかわる」っていうのも、誰でもできるようなことでかかわっているだけでお金貰うんじゃなくて、それぞれが自分にしかできない技量を持ったメンバーが集まって成果を挙げるっていう状況を作りたいんやね。

今はメーカーによって商品ができる瞬間って、どんどんアクセルが大きくなりすぎて、さも当たり前のようになってしまっているけれど、その閉塞感のある状況からいったんリセットして、もう1回ゼロから今の価値観とかキーマンを持った30代の人間が、昔からあるものを作る商売の仕方をやってみたらどうなるんかなってやってみたかったんですね。

ゴトウ氏:要は、町工場に看板屋さんが来て、オレ作ってみよか?って感じで何か生まれてくるような状況って昔あったと思うけど、そこっすね?

渡利氏:そうなんだけど、年齢ってキーやと思うんやね。町工場でも、なにかアイデアが出て、モノを作ってみるんだけど、なんかうまく回りませんってよく聞いたりする。それって当然あると思うんやね。

売り手のことだったり、デザインになかなか目を向けてない。そりゃそうなるやろなと。それをいちデザイナーの立場から、町工場のおじさんに言っても、なかなか伝わりにくいし(笑)

ゴトウ氏:そうっすね(笑)

渡利氏:それじゃもう自分たちで、今のそういう、プロダクトデザインだったり、グラフィックだったり、広告媒体だったり、WEBとかのね、昔なかったような職業の人間が集まって、ものを作って売るってことをやってみたら、いままでと違ったカタチになるんやないかと。

商売の仕方ってなんでもかんでも大きくすれば良いっていうものじゃなくて、グローバルに対してローカルっていうね。ローカル的なクリエーションの仕方プラス昔からの物売りを混ぜたら、きっと別のカタチが生まれるって漠然とあった。

2012/06/19


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