■ BRANDING #04

HOME» ■ BRANDING #04 »ブランドを立てる「MPDP」理論 vol.2

■ BRANDING #04

ブランドを立てる「MPDP」理論 vol.2

ブランドを作るツール「MPDP」
陶山氏:御社はチームエンジニアと呼ばれている社員30名。高崎社長のリーダーシップが社員の中に浸透していくには、比較的やりやすい環境だったのでしょうね。

大企業のように多くの部門があって、巨大化すれば意思決定するのに時間もかかり、経営トップから現場まで、開発から営業まで見通せないといった難しいところもあります。そういう点では、御社は企業がフレキシブルかつダイナミックに機能する条件が揃っていたのではないかと思いますが。

高崎氏:ええ。小さい組織だからできたのもあります。以前アメリカでネジザウルスの販売を展開しようとした際に、現地の取引先の方に、「アメリカの企業は2,3年で急成長することがあるが、それはなぜか判るか」と聞かれたことがあります。

聞くとアメリカでは社内社外関係なく、あるいは国境もなく、一つのプロジェクトに専門家たちが集まってミッションを完結するからなんだそうです。

あるシーズがあるとしたら、それをどう育てるか専門家が集まってくる。そしてそれが終われば皆、それぞれ別のプロジェクトへと去っていく。あの映画の「オーシャンズ11」のようなものですね。

片や日本の企業はせいぜい部門横断型プロジェクト。人材の流動性の違いですね。とはいえマーケティングもデザイン、パテント、プロモーションとそれぞれを分けてしまったら、絶対だめだと思うんですね。そこにはまとめ役のリーダーが必要になりますし、中小企業もそういった本当のプロ達が揃えば、もっと面白くなるのにと思うんです。

陶山氏:高崎社長は、経営トップでありながら、知的財産管理技能士の資格もお持ちで、デザインもマーケティングにも、またプロモーションも拘っておられて、いわゆる「見通す力」をオールマイティにお持ちなんです。だからここまで徹底されていると思うのですが、なかなかそういった経営トップは多くないのが現状ですよね。

高崎氏:経営トップでなくても、社内にプロジェクトマネージャーという人が必要ですね。少しづつでも良いから全体を理解している人が。私も図面は社員に負けるし、プロモーションも社員に任せてますし、オールマイティというわけじゃないんですよ。唯一ネーミングだけが私ですが(笑)

陶山氏:なるほど(笑) ネジザウルスというネーミングも?

高崎氏: ネジザウルスの名前は社内で公募しました。公募して即決でしたね。デザインは社員がしてGoodデザイン賞も頂いたんですが、その授賞式の場で、今後はプロのデザイナーにお願いしなくてはと思いました。

その後は、プロのデザイナーにアドバイスをいただいたり、パテントは弁理士の先生にお願いし、プロモーションもと、それぞれの専門家へアウトソースしています。今は社員が専門家の方々の窓口として機能するようになってきました。

陶山氏:先代社長の頃よりずっと、企画開発から製造販売までをファブレスでやってこられたということですが、今後もその形を継続されるのですか?

高崎氏: ええ。あのApple社もいわゆるファブレスなんですね。マーケティング、デザイン、パテントも。プロモーションはジョブス社長が自らされてましたけど。今のものづくりの業界も、他の中小企業と連携しながらのアウトソーシングという方式は充分成り立つと思います。

たとえばネジザウルスが100万本売れたということは、その中に使われているネジも100万個売れたということになります。樹脂成型屋さんも100万個分の注文が入っているわけです。 今大企業の工場が中国やミャンマーなどに移転して行く中で、どんどん仕事も無くなり空洞化してきていますけど、私どものような会社がたくさん出てくると、ものづくりの裾野も活かせるんじゃないかと思いますね。

父親の代はまだそこまで考えていない時代でしたが、今の時代、早くしないとそうした中小のものづくりの会社自身、後継者も無くどんどん減ってきています。そうなるとますます日本の体力もなくなってしまうんです。

私の言う「MPDP」も、私が日本人だから言えること。韓国や中国で「MPDP」って言っても、「じゃあどこの工場で作るの?」という話になりますから。 日本という国にいるからこそ、「MPDP」という考え方を持てば、ちゃんと精密な良い製品ができる素地がある。

ただ、どう形にして、どう売って利益を出していくかのプロセスがないんだと思いますね。よくマーケティングの話で、4Pとか4Cとか言いますね。でも私の「MPDP」には2つのPがありますが、プライスとプロダクトは入ってないんです。

高いと売れないから適正価格を出すということも、良いものを作らないと売れないということも、それは誰でもご存知のことですから。

陶山氏:もうひとつありますよ。ブランド(笑)

高崎氏:あっブランドですね(笑)以前先生にそう言われて考えたんですが、私がネジザウルスを作ったから言うんじゃないですけど、「MPDP」って2重螺旋のイメージかなと思うんです。土の中をぐっぐっとドリルで掘っていくような。

その掘削ドリルを経営トップが回して、ぐぐっと回せば回すほどブランドができてくる。ブランドができれば価格競争にならなくて済む。つまり「MPDP」がブランドを作るツールになるんじゃないかと思ってるんです。これからは中小企業もブランドを作らなければいけない。

陶山氏:その通りです。ブランドといえば、単にネーミングやロゴだと思われがちですが、ブランドには資産的価値がありますし、また企業と消費者を結ぶ約束(ネクサス)でもあるわけです。

企業のオペレーションを担当されている方に、もっとブランドマネジメントを考えて欲しいんですね。その点で「MPDP」は、ブランドを立てるのに役立つ考えになりますね。

やはりこれからはICT革命(情報コミュニケーション技術革命)のもとでグローバル競争がますます進みますが、今のままだとその中でどんどん埋没していってしまいます。その厳しい環境の中でブランドを立てるためには、如何にして尖がった企業イメージや製品ブランドを出していくか、が大きなテーマになってきます。

そのブランドを立てるための4つのステップを「MPDP」であると考えると、その4つのステップを支える「縁の下の力持ち」が経営トップのリーダーシップです。

 


■ BRANDING #04

powerdby