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■ FINANCIAL #01

経済の流れを読む「金融知力」_vol.3

業界に新たな流れを創る
上地氏:ひびきフィナンシャルアドバイザーは、金融業界で新しい試みをしようとするフロントランナーですね。そのフロントランナーとして、お客様に本当に良い付加価値を提供することは判ったんですが、具体的にどういうことをしていきたいと思っていますか?

仲川氏:営業部門が証券会社から転換しましたから、今は証券会社の商品がベースになってはいますが、この会社がやるべきことは、端的に言えば「ハブ」になることなんです。

上地氏:ハブ?

仲川氏: ええ。多くのお客様は、相続にしても経営にしても、問題は抱えてるけれど、どこに相談していいか判らない、という方が非常に多いんですね。そこで弊社はお客様のあらゆる課題を請け負うハブになるんです。

弊社は会計事務所さんだったり、弁護士さんだったり、保険代理店だったりの、いろんな専門家のパートナーとタッグを組んでいますから、私たちが持つノウハウで解決できることは対応できますが、そうでないことは専門家のパートナーをご紹介する。

つまり、お客様にはハブである我々に、いろんな問題のボールを投げていただいて、そのボールを適正なところに采配して一緒になって解決するんです。

お客様から見れば我々に相談したから解決したということで、付加価値を与えられることになる。金融商品も相続対策も事業承継もコンサルも、お客様の問題解決のワンオブゼムになる。そういう捉え方の会社にしたいと考えています。金融商品からあがる手数料よりも、そういった複合的なものをどんどん増やしていく金融の総合コンサル会社ですね。

上地氏:なるほどね。今御社の社員さんって、従来型の証券会社の方々だったんですよね。今後そうした相続を含めた総合コンサルティングとして相談を預かるとなると、人材の教育が大変だと思うのですが。

仲川氏: それが一番腐心しているところではあります。ただ、会社の歩むべき方向性を理解したら早いんですね。

最初はやはり証券会社から仲介業者になったことで、意識が「格落ち」になった気もあったと思います。でも、違うんだ、もっと大きな目線を上げたビジネスをやるんだってずっと語ってきましたから。

社員みんなと話し合って、「お客様の課題を全部当社で吸い上げよう」って言ってるんです。そうするといろんな話があがってきて、たとえば売掛債権の相談なんかもあがってきます。

そこで弁護士さんにお繋ぎして解決する。そうなるとお客様のほうからいろんなボールを投げてくれるように変わってきましたね。

それは証券会社で培った信頼関係の中に、もう一つ枠が広がったような効果が出てきてるんだと思います。

今の日本の銀行、証券、生損保も、証券会社が保険を売ったり、銀行も投資信託を売ったり、クロスセルでいろんなものを売り出したりしてるんですが、あくまでも金融商品を売るための営業しかしないので、なかなか機能していないのが現状ですね。

でも我々のようなネットワークだと、第四のチャネルができることになるんです。そこに投資教育も供給できれば、日本の個人金融資産の1400兆円のうち負債を除いた1000兆円を有効活用できる機能を持たせることができると思っています。

上地氏:そういうミッションを共有化しようということですね。なるほど。しかし、新卒の学生なら新しい会社のカルチャーやミッションを理解するのは比較的時間はかからないでしょうけど、長年やってこられた方がそういう気持ちになれるってすごいことですね。

仲川氏: まだまだこれからです。実は私どもには証券会社さんからのご相談が結構来てるんです。

上地氏:証券会社から?どんなご相談なんですか?

仲川氏:我々のスキームを見て「そういうやり方があったのか」と。どこの証券会社の経営者も悩んでいますから。

上地氏:なるほど、そういうことですか。

仲川氏:証券会社として続けることが厳しいという思いがある反面、我々のように業態変換するってことは、自己否定になるわけですから、そこに葛藤があるんです。

上地氏:それは御社の社員さんたちが、生活条件、たとえば給与が増えたとかの提示ができれば、不安も払拭できるのでは?

仲川氏: ただ30年40年この業界でずっとやってきた人たちには、やっぱりすぐには頭を切り替えるのは難しいんです。

ダーウィンの進化論と同じで、大きいものが残るんじゃなくて、変化に対応したものが残る。誰でも頭では判っていても、人間誰でも本当は変わりたくないですから、言うが易し行うは難しなんです。

しかも金融業界の場合、急に悪くならないんですね。ちょっとづつ、ちょっとづつ悪くなってくるもんですから、別に今日変わらなくても明日も同じ生活、同じビジネスができてしまうんです。

でもだんだん5年経ち10年経つ頃には、就業人口も減る、顧客マーケットも減る。それでもまた何かバブルが来るんじゃないかと期待しつつ繰り返してきて今日に至ってる。ぬるま湯になっちゃってるんですね。そこで決断できるところと、そうでないところは、この先雲泥の差になっていくでしょうね。

上地氏:そこで10年後、証券業界のリテールはどうなっていると思いますか?

仲川氏:恐らく証券会社という看板自体に付加価値は無くなっていると思いますね。証券会社がやってるビジネスが、必ずしも証券会社だけでなく、いろんな形態が出てくると思います。

街中のファイナンシャルプランナーさんや会計士さんがそれをやってるかもしれません。例えばお客様の住宅ローンの借り換えだとか、こどもの教育費だとかの、いわゆるライフプランの相談をしに来られて、その波及効果として金融商品をどうするかというスタイルに変わってくると思います。

上地氏:資産を守るためのね。

仲川氏:ええ。我々が若かった頃は、高度成長期もありましたしバブルもあったので、如何にしてインフレに負けないようにお金を働かせようかと、投機気分もあって博打場的にもなっていました。

でもこれだけ低成長の世の中になってくると、増やすというより如何に劣化させないかということにシフトしていくことが必要で、そういうニーズに応えられるようなサービスでないと難しいと思いますね。

これから一番大変なのは、我々の下の世代、今の若い働き手のところです。年金もそうですが、いろんな問題を解決していく機関なりビジネスが今後は増えていくと思います。

上地氏:そういう意味では、ひびきフィナンシャルアドバイザーはベンチマークになった気がしますね。

仲川氏:はい。同じような想いの同士をどんどん増やしていきたいと思います。

今日本の企業の98%が中小企業で、約600万社くらいあると言われています。そうした中小企業のお役に立てたり、個人金融資金を守っていければと思っています。

ところで上地先生は、確定拠出年金というものを奨励されてるんですね。

上地氏:ええ、意外と業界の方も知らないんですが、選択制の確定拠出年金というのがあるんです。日本の場合。中小企業って年金制度に不利なところがあって、会社が給料に上乗せして年金を拠出するのって、なかなか余裕がないとできませんね。

ところがこの選択制の確定拠出年金の場合は、社員の給料を原資として積み立てていく制度なんです。たとえば30万円の給料の場合、そこから2万円拠出して年金として積み立てるんです。

年間24万円年収が減るんですが、それで資産形成しているわけですし、しかも今負担している社会保険や所得税、また翌年の住民税が減額できるんですね。それだと中小企業には非常に導入しやすいんです。

仲川氏:それってどんな規模の中小企業でもできるんですか?

上地氏:ええ。極論すれば1名法人でもできるんですよ。

仲川氏:今の話だと、企業側によっては社会保険の秘策にもなるし、社員にとっては見栄えの給料は減るけれど、その分将来の年金にまわるし税金も減る。社員にとっても企業にとってもハッピーですよね。

上地氏:なぜこれが広まらなかったのかというと、金融機関に原因があるんですね。この選択制確定拠出年金って、勧める側つまり金融機関にとってあまりメリットがなかったんです。

日本の場合、今は大企業には普及されていますけど、従業員規模で言うと100名以下、特に70名以下となってくると、ほとんどの金融機関が営業しないので、中小企業には広まっていないんです。今私は日本全国の会計士の方々と連携して、この制度をもっと広めようと普及活動をしています。

仲川氏: 日本の経済を救うのは中小企業の活性化と言われていますから、それが広がっていけば制度面でも良い人材が集まる砦になると思いますし、中小企業が元気になりますよね。我々がリテールのもっと幅広い財産形成に寄与できるよう広めていければいいですね。

上地氏:中小企業が元気になり、個人一人ひとりが元気にならないと、この国が元気にならないですからね。そのためにもお互いがんばりましょう。

仲川氏: ええ。がんばりましょう。
上地 明徳
信州大学経営大学院客員教授
 
1958年 東京都出身。早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。米国モルガンスタンレー証券勤務を経て、日本インベスターズ証券の設立に参画した。現在は、人間の心理と証券市場、経済変動との相互関係に関心を注ぐ研究者であると同時に、「日本の再生は中小企業が元気になること」をモットーとし、全国会計事務所とアライアンスを組んで中小企業の経営を支援する活動家としても活躍している。一般社団法人 経営活性化支援センター 代表理事
仲川 康彦
ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
代表取締役副社長
 
1966年京都府出身。近畿大学法学部経営法学科卒。日本インベスターズ証券(NISCO) 取締役・IFA事業部長、SBI証券 顧問兼IFA部長等を経て現職。過去10年弱に渡り一貫して、金融機関に属さないお客様の立場に立った会計事務所や保険代理店、ファイナンシャル・プランナー等と協調する金融商品仲介ビジネスに従事し、投資家の”金融知力”向上のための啓蒙活動を、全国のパートナーと推進している。

ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
HP: http://www.hibiki-fa.co.jp/
撮影:菅野 勝男/取材:2012年7月

 

2012/07/04


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