■ BRANDING #06

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■ BRANDING #06

製品ブランドが形成するグローバルブランド vol.2

陶山氏:ハウス食品のテーマ「食を通じて、家庭の幸せに役立つ」ですが、日常の業務の中で社員の方々に意識させておられるのですか?

広浦氏:それはなにか形になったものを日々努力して伝えるものではないと思うんですね。それよりも、振り返りの仕方であったり、または評価の中に組み込んでOJTで互いに確認していく課題だと思っています。

陶山氏:コミュニケーションやインナーブランディングといった、社員の皆さんの意識が大きく高揚して、その結果としてヒット製品が生まれるということがあると思います。

現場からやや遠い経営トップという立場からご覧になって、どんな雰囲気でどんな人たちがどのような働き方をしているか、何か法則のようなものはありますか?

広浦氏:製品開発は開発部門だけで出来るものではなく、社内および社外も含め、本当に多くのほとんどすべてのセクションが絡んできます。これはいつもミーティングする時のキーワードなんですが、やはり「やってる感」ですね。

製品開発者がこの調査やれと言う、やれと言われたから調査する。そういう関係になってしまってはダメだと思うんです。やはり関連のセクションの立場であっても、お客様に支持されるものを作っていくんだというその「一体感」や「やってる感」を、開発するマネージャーは如何に引き出していくか、この能力が求められています。

ケースバイケースでコンセプトをブレさせないこと。私はコンセプトが社内のいろんな人間を巻き込む一つのパワーだと思うんですね。 営業部門の意見を取り入れ売りやすいコンセプトに少し変える、生産部門の意見を取り入れ生産し易いコンセプトを少し修正する、しかしこの修正したコンセプトは一致しない。

そこにビシッと1本引けるかどうかなんです。 それはやはりお客様にこういうものをお届けすることが我々の使命だと如何に思えるかどうか

そこでコンセプトを曲げないとなると、クリアするには新しいことへのチャレンジが求められます。技術開発もその一つです。そこのリーダーシップが製品開発者には求められると思いますね。

陶山氏:川上発想と川下発想、シーズ発想とニーズ発想、それらのいずれが正しいかということに関連して、研究開発と製造、営業などとのすり合わせのところが日本企業の強みではあるとよく言われますが、そこのところがへたってくると良いものが出てこないですね。

逆にそれぞれの部門が部分最適になってしまうこともあります。やはり全体最適を志向しながら、最初にお客様に近づいていくということが大事だと思います。軸がブレないということですね。

広浦氏:やはりそこがブレだすと良くないですね。たとえば製品の容量決定のプロセスにおいても、やはりお客様がお使いになる場面とのギャップが生まれないことが重要です。そこは変えてはいけないと思うんですね。

原価が高くなるとか、効率が悪くなるとか、といった発想が優先され、決まっていくことは避けなければなりません。やはり根幹になる部分は変えてはいけないといった強い認識と意思決定が必要です。

陶山氏:ところでアメリカではお豆腐の製造販売を行っておられ、アジアでは日本式カレーの普及に力を入れておられますね。

広浦氏:アメリカでは、ある豆腐製造企業に資本参加し、House Foods & Yamauchi Inc.を設立しました。 (現、House Foods America Corporation)今はロスとニュージャージーに工場があります。順調に伸びています。

ASEAN、特に中国では、「日式のカレーを中国の国民食に」しようというテーマで展開しています。レストランカレー事業と業務用カレー、そしてバーモントカレーを中心とした製品展開、この3つの相乗効果でカレーを普及させたいと注力しています。

陶山氏:りんごとはちみつ入りというのは中国ではどうですか?

広浦氏:マイルドなカレーとして浸透しています。子供の喜びの度合いや、お母さんが子供に与えて満足するメニューの度合い等の視点から観ると、中国では日本よりもカレーに対する価値観は高いような気がします。可能性と手ごたえを感じています。これからが、本当の勝負です。メニュー間競争もますます激化して行くと思っています。

陶山氏:カレーにすると他のおかずが要らないとか、簡単にできるから、ちょっと手抜きメニューといったイメージがあるんですね。

広浦氏:今そこが課題ですね。やはり子供の好きなメニューのナンバーワンであり続けたいですね(笑) 


幼稚園児を対象に、「はじめてクッキング」というのを展開していまして、「はじめて作ったメニューがカレー」という体験をしていただこうと。その子供さんたちが将来親になって、子供の時初めて食べたカレーの感動体験を思い出し、自分の子供にカレーを作ってあげる。このサイクルをいかに作るかが狙いです。

全国の幼稚園にレシピとカレーを送っていまして、2011年度には約50万園児分、これまでに延べ約450万園児にお届けしています。

陶山氏:家庭料理の原体験がカレーということですね。 8~9年前ですが、スタジオジブリのアニメと上条恒彦さんの歌が流れる「おうちで食べよう」という御社のCMがありましたね。コーポレートCMとしてすごく評価が高かったCMでしたし、「おうちで食べよう」というメッセージがとても分かりやすかったですね。

広浦氏:あのCMは、本当にイメージ通りのアニメを私共に作っていただきましたね。外で遊んでる子供達がおうちに帰って、家族団らんで食事をするという「やすらぎ」を生むメージでした。

陶山氏:家族が食卓に集まって会話をしながら食事をする。その真ん中にカレーがあるというイメージですね。暖かい団らんというイメージでいえばシチューもそうですね。

広浦氏:シチューも暖かメニューです。暖かい、やすらぎを生む団らんの中心にあるメニューとしては、シチューも同じ役割を果たしていると言えます。

陶山氏:ハウス食品の強い製品ブランドには他に何がありますか?

広浦氏:カレー以外でブランド想起させるといえばフルーチェですね。

陶山氏:フルーチェ。ほとんどCMされていませんけど、すごく売れてますね。

広浦氏:発売後37年目に入った、わが社のロングライフブランドの一つです。フルーチェは、子供さんが始めて作った体験率メニューとしてはダントツに高いんです。

製品だけではなく、製品のもつこのような世界観がブランドを支えているとも言えます。フルーチェのコミュニケーション戦略も、この世界観の伝達にポイントを置いています。ここでフルーチェのブランドをもっとエクステンションさせようという考えもあります。

 


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