■ BRANDING #06

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■ BRANDING #06

製品ブランドが形成するグローバルブランド vol.3

陶山氏:昨今、小売企業側からいろんな食品分野でプライベートブランド(PB)を、消費者や顧客のために増やしていこうという動きが加速しています。

こうしたPBの動きに対してメーカーとしてここは負けない、あるいはこれだけは守らなければいけない、または、もっと積極的に展開していきたいといったこと、あるいはPBとハウス食品のものづくりにおけるミッションとの関係についてお考えをお聞かせいただけますか?

広浦氏:お客様を理解してお客様のニーズの発展なり進化に対応し、どんどん製品を改良していくという、この理解とスピードについては、これはメーカーとしての生命線ですから負けるわけにはいかないと思っています。

競合に対して安い価格をつければ良いというものではなく、やはりお客様に認められる価格で販売して、川上も川下も川中も、相当分の利益がとれる構造であることが理想ですから、「値ごろ感」を外した価格競争は、メーカーとしてやるべきでないと思っています。

陶山氏:通常の製品に加えてエコノミーやバリューといったお値打ちの製品と、プレミアムやスーパープレミアムという比較的高額の製品、というようにいくつか価格帯のレンジがありますが、比較的手ごろな価格の製品の中で、従来のスタイルにもとづくナショナルブランド(NB)として提供し難い顧客層に向けては、PBも一つの選択肢としてあるということでしょうか。

広浦氏:一つの手段の選択肢としてあるということです。やはり「値ごろ感」外して安い値段をつけるというのは、結果としてカテゴリーの魅力を下げていきますから、そこには細心の注意が必要と考えています。

その「値ごろ感」を如何につけていくか。この考え方は日本もそうですけど、海外展開の場合の方が重要になりまして、ASEANでは年率10%くらいの物価上昇することもあるわけです。中国でも7%位になったとはいえ、7%も物価が上がるんですから、その中でいかにうまく価格設定が出来るかどうか。

つまりお客様に認められる範囲の価格帯の中で、どうカテゴリーとして形成していけるかが勝負だと思います。

陶山氏:カレーの価格帯というのは、それぞれの国や地域の経済発展水準に関係するのでしょうね。

広浦氏:国が変わっても、やはりカテゴリー間の競争です。いかに魅力あるカテゴリーと製品であるかどうか。

新しいカテゴリーを形成して、そこでお客様の支持が得られるのであれば、一般的なカテゴリーよりも高い価格を設定できます。むしろそういったカテゴリーにしていかないといけません。

陶山氏:少し値段が高いけどそれなりの付加価値がある、今までにない新しいバリューを提供できる製品づくりに力を入れるということですね。

カテゴリーとしても新しいメインのカテゴリーに加えて、たとえばヘルシーだとかオーガニック、産地にこだわったとか、フェアトレードなどといったような新しいサブカテゴリーをメーカーとしてどう作っていくかですね。

広浦氏:新しいサブカテゴリーをどう作るかが勝負どころになります。

陶山氏:まさにD.A.アーカー教授の『カテゴリー・イノベーション』のいう、「戦わずして勝つ」(ブランド・レレバンス)ためのブランド創造ですね。

広浦氏:その中でナンバーワンブランドにしていくことが必要ですね。

陶山氏:そのためにはスピード感を持ったイノベーティブな技術開発や商品開発が、メーカーとしての一番大事な点かと思います。

広浦氏:そこがポイントになりますね。ハウスの事業領域を考えたときに、目指す姿でいえばBtoBのブランディング。例えて最適なものでいえば「キシリトール」のような、原料をブランド化させると強くなります。

私どももグループ含めて可能性のある素材はいくつかありますから、BtoBのブランディングという戦略思考でいくと、今後の戦い方も変わってくるかと思います。

陶山氏:ビールメーカーも酵母を何百種類と持っていて、それを使って発泡酒や健康食品なども作っていますね。そうしたテクノロジーブランディングを中核の一つに据えていろんな最終製品へと展開していくということですね。

広浦氏:「特保」を取得するにはなかなか難しいですが、技術ブランディングしていくことでお客様とのコミュニケーションを取っていけば、「特保」を取ったような役割になってくるでしょうね。

そういった技術ブランディングが、今後の機能性飲料や機能性食品の展開のキーになるなと考えています。

陶山氏:私どもの一般社団法人ブランド戦略研究所は、「売りと成長につながるブランディング」をミッションの一つに掲げ、ブランドと企業の成果とはどういう関係にあるのか、またブランディングは本当に企業の成果や製品の競争力に繋がるのかなど、いろんなテーマで調査研究をしています。

当ブランド戦略研究所の理事をお引き受けいただきましたが、グローバルビジネスを目指すハウス食品として、どういったことを当研究所に期待されますか?

広浦氏:やはり日本の競争力を高める要素の一つに、「ブランド」という観点があると思いますので、この停滞している日本の活力をブランドの観点からリーディングしていく意味においては、この研究所の役割というのはすごく大切なんじゃないかと思います。

また、グローバルを目指す企業はここ2-3年で多くなりましたから、そうした企業の海外展開に対しブランドの視点から、方向付けの提案やサジェスチョンもこの研究所に期待されるのではないかと思います。
広浦 康勝
ハウス食品株式会社
取締役専務執行役員
国際事業本部長、経営企画室担当
 
1955年 和歌山県生まれ。関西大学工学部卒。1978年4月 ハウス食品株式会社 入社。2002年4月 調味食品部長/2004年7月 執行役員 調味食品部長/2006年4月 上席執行役員 マーケティング本部長/2006年6月 取締役上席執行役員 マーケティング本部長/2008年4月 取締役常務執行役員 マーケティング本部長 ソマテックセンター担当/2010年4月 取締役専務執行役員 マーケティング本部長 ソマテックセンター 品質保証部担当/2012年4月 取締役専務執行役員 国際事業本部長経営企画室担当/[主な活動]日本技術士会 会員/NPO法人 MCEI東京 常務理事/NPO法人 仕事と子育てカウンセリングセンター 理事/一般社団法人 ブランド戦略研究所 理事

ハウス食品株式会社
HP: http://housefoods.jp/index.html
陶山 計介
関西大学商学部教授

1950年 岡山県生まれ。京都大学大学院経済学研究科 博士後期課程単位取得。博士(経済学)。研究分野:ブランド・マーケティング。常に現場に目を据え、トヨタ、リクルート、JH、ハウス食品、イズミヤ、大阪府等多数の企業、各種団体の幹部研修も行い、産学交流を推進している。 文科省、経産省等の専門委員や大阪ブランドコミッティ・プロデューサー等、学外活動多数。英国エジンバラ大学マネジメントスクール 客員教授(2002年)
[学会・研究会活動] 日本商業学会前会長/日本広告学会元理事/日本広報学会元理事/一般社団法人 ブランド戦略研究所理事長

[主な著書・訳書] 『ブランド・エクイティ戦略』(共訳 ダイヤモンド社 1994年)/『ブランド優位の戦略』(共訳 ダイヤモンド社 1997年)/『バリュースペース戦略』(共訳 ダイヤモンド社 2004年)/『マーケティング戦略と需給斉合』(中央経済社 1993年)/『日本型ブランド優位戦略』(共訳 ダイヤモンド社 2000年)/『マーケティング・ネットワーク論』(共編著 有斐閣 2002年)/『大阪ブランド・ルネッサンス』(共著 ミネルヴァ書房 2006年)等

関西大学 陶山研究室
http://www2.itc.kansai-u.ac.jp/~suyama/

一般社団法人 ブランド戦略研究所
http://www.brand-si.com/
取材協力:一般社団法人 ブランド戦略研究所/取材:山部 香織/撮影:菅野 勝男/取材:2012年9月

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