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■ CREATIVE #07

人が集まる/人を集めるプロジェクト vol.3

誰とプロジェクトを組むか
江口氏:後藤さんは、このプロジェクトにアートディレクターとして、グラフィックやWEBなどで関わってみてどうでした?

ゴトウ氏:実際に神戸まつりのような場所でアピールするとなると、何かしらメッセージをちゃんと投げないと跳ね返ってこない。

やっぱり設置するだけでなくそれ自体が媒体としてメッセージを発信する重要性に意識が行きますね。なのであえてデザインしないほうがいいのかなと。

僕等は常に商業媒体をやってるので、どうしてもモノを売ることに専念してしまいますから。

江口氏:それってありますね。本来グラフィックデザインって、そこのために強く存在しますもんね。

ゴトウ氏:どちらかというと、広告デザインとグラフィックデザインって分けられるべきだと思うんですね。モノを売るのは広告デザイン、メッセージを投げるのはグラフィックデザイン。

商品を売るって難しいことではあるけれど、伝えるべきことが端的にあるので的が絞りやすい。今回のは、逆に伝えるべきメッセージがたくさんあるから、どれを絞って伝えていくか、どの思考で頭を動かすかという作業はすごく勉強になりましたね。

江口氏:このプロジェクトが新しいと思うのは、デザイナーとクライアントとの関係性や距離感だと思うんですよ。

今まではクライアントが商品のデザインを委託して、デザイン事務所がそれに応えるという仕事が多い。

最近増えてるんですけど、ちょっと身半分だけ組織の中に入ってちょっと深いところの情報を取りながら、外部の情報をそこに入れる。

真ん中の境界に立って内と外の両方を見ながらデザインするというスタイルが増えている気がしますね。「半分社員」みたいなポジション。これからそういうスタイルになってくるのかな。

ゴトウ氏:プロフェッショナルという考え方が変わってきていて、オーダーする企業側の、業者だから何か上げてきて当たり前、業者に任せて当たり前、という考えが成功しなくなってきてると思うんですね。

自分たちもそこにちゃんと関わって、いろんな情報提供して、デザイナーにきっちり入ってもらって、ハラ割って中身も見せた上でデザインするって形にしないと、なかなかプロダクトが成立し難くなってきてる気がします。

江口氏:今回佐野さんは、僕たちに依頼してくれたけど、逆にデザインだけ提供して終わりという関係だったらどうだったかな。

構想はすごく出来上がっていたけれど、工場交渉とか、常に一緒に行動していなかったら、たぶんこのプロジェクトは最後まで行かなかったかもしれないね。

ゴトウ氏: たぶんそうですね。

江口氏: 僕等にデザインを頼みたいと思っておられる側、つまりデザインを受ける立場の人たちが普段入ってくる情報って僕等と全く違うわけで、それらを全部共有しないと良いデザインってできないと思うんです。

佐野氏:確かにそうですね。僕らはデザインに全く疎いわけで、僕の想いを江口さんが目の前で画にしてくれるととても判りやすかったですね。「まるみ」にこだわっていたところも、ちゃんと形にしてもらえたことも有難かったです。

江口氏:後藤さんは他でもいろんなプロジェクトに関わっておられますよね。やっぱりそういう流れになってきてる感はあります?

ゴトウ氏:ええ、ブルーオーバーもそうですし、こういう形が多いですね。やっぱり中を見ないと問題が見えてこない。企業側もそこまで中に入れて良いのか、という部分はどうしてもありますけど、それにはなにかに共感してもらえないと信頼を得られない。

クライアント側が気付いていない問題点を見つけだすことが仕事だったりするので、そこに気付ける立ち居地にいさせてもらえることは、デザイナーにとってうれしいですね。
江口 海里
プロダクトデザイナー
 
1980年大阪生まれ。大阪市立工芸高等学校。プロダクトデザイン科卒業。大阪市立デザイン教育研究所 デザイン学科プロダクトデザインコース卒業。某コンピュータサプライメーカーに勤務しプロダクトデザインとパッケージデザインを担当し、 2003年よりデプロ・インターナショナル・アソシエイツに勤務。家電製品・スポーツ用品を始め、業務用放送機器、カーナビゲーションGUIなど様々なデザイン業務に携わる。2008年 KAIRI EGUCHI DESIGN 設立。2012年 ミラノ(イタリア)で開催された家具の国際見本市[ミラノサローネ]のイベント[サローネサテリテ]にて棚と器を発表し、その出展を機にブラジルやシンガポールなど海外メーカーとのプロジェクトがスタート。2007年 神戸芸術工科大学 非常勤講師/2009年 大阪市立デザイン教育研究所 企業講師/2010年 HAL大阪 企業講師 [主な受賞歴]2005年グッドデザイン賞受賞/2006年グッドデザイン賞受賞/2009年LGモバイルデザインコンペティション/2009年ゴールド賞受賞/2010年LGモバイルデザインコンペティション/2009年ゴールド賞受賞/2011年LGモバイルデザインコンペティション/2010年ゴールド賞受賞

KAIRI EGUCHI DESIGN
HP: http://www.kairi-eguchi.com/
ゴトウ シュウ
アートディレクター
グラフィックデザイナー
 
1979年 神奈川生まれ。2006年 株式会社コンピュータ・コントロールを設立。 アートディレクター兼グラフィックデザイナーとして、企業のブランディングから広告制作までのトータルで関わり、クライアントは大手PCサプライメーカー、アパレルメーカーなどを手掛けている。近年はセレクトショップ「WHO'S WHO gallery」のロゴや店頭ツールなどのVI制作から商品グラフィックまでを担当し、単なるグラフィックデザインの枠を越えた関わり方を行っている。その他にもアンティークショップ「70B ANTIQUES」など個人・企業にこだわらずにクライアントと共に、常に新しいブランドの在り方を模索しています。

株式会社コンピュータ・コントロール
HP: http://www.computercontrol.jp/
佐野 晋士
ソーシャルアントレプレナー
 
1984年静岡生まれ。2007年 神奈川大学 経済学部経済学科卒業。2012年 Mr.productsを立上げ。大学時代に経済学の一環として環境経済学を学び環境と経済の共存性に興味を持ち環境や社会に役に立てる仕事がしたいと考える。環境や社会問題を事業を通じ解決を図る企業(THE BODY SHOP)に入社を試みるが不採用。一年後の採用のチャンスをもらうが断り大学卒業後社会を経験。サービス、小売業の法人営業を主に担当。東北大震災をきっかけにもう一度社会の役に立つ仕事をしたいと考え、身近な環境問題であるゴミのポイ捨てを社会全体で共有し解決する方法として「CROSS POST」を考案。神戸を中心に活動を展開中。

Mr.products
HP: http://www.cross-post.jp/
撮影:菅野 勝男/取材:2012年10月

2012/10/09


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