■ FINANCIAL #04

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■ FINANCIAL #04

プロとして真贋を見極める vol.2

仲川氏: 新聞の記事というのは、出た瞬間に過去のものなんですよね。昨日のことはもう過去の出来事で、統計にしても3ヶ月前の数字となると、それは全部過去。

それを追って資産運用を考えても、実態としてはもう顕在化してしまっているわけで、まさにバックミラーを見て運転しているのと同じですよと。終わったことを見て追っていても仕方ない。

相場を当てるとか予測するといった占い師みたいなことじゃなくて、現状で何が起こっているのかということをきちんと咀嚼して、クライアントに応じた対策なりご提案をすることが本筋。

しかしそうした勉強不足の方が多いとなると、お客様とFPの知力の差が、お客様が低い場合は成り立ちますけど、実務として経営されている経営者となると、相手にしてもらえない可能性がありますよね。

深野氏: それはね、FPだけでなく全ての士業がそうなんです。企業の経営者となると、基本的に会社が利益を上げながら従業員を守り、次世代に継承して永続させていくことが目的ですよね。でも世の中はこんなに変わっていく。顧問税理士や顧問弁護士、またFPも周りにおられるかと思うんですが、やはり誰をブレーンにするかがこれから非常に重要になりますよ。

仲川氏: 仰る通りですね。

深野氏:例えば、今相続が話題になっていますけど、実は相続ができない税理士もいるということすら、知らない経営者の方も多いんです。同じ税金なんだから、できて当たり前でしょと思ってしまう。

或いは社労士でも、ここ数年くらい前から年金が下がってきて問題になっているけれど、社労士って基本的に労務管理が中心ですから、年金をしっかりできる方って実は少ない。我々のFPも6分野ありますけど、6分野全部できますなんて言うFPなんて、胡散臭いの典型ですからね(笑) そう考えると、自分の求めているニーズに合わないブレーンを持ってしまったら、もう悲劇ですよ。

仲川氏: すでにブレーンを抱えておられる場合、その方々が本当に真贋を持っているかどうかというのは、なかなか判らないですよね。どう見極めていけばいいのか、或いはどう見つければ良いかというと。

深野氏: 見つけるのはかなり難しいでしょうね。一つ言えることは、自分たちのブレーン、税理士やFPなどに、ちょっとクエスチョンマークがつく場合は、セカンドオピニオンを求めるという発想も良いんじゃないですか。

仲川氏: なるほどね。これは医療でも同じですよね。一つの意見だけだとリスクがあるので、それが間違っていると判断も間違う。セカンドオピニオンの発想は非常に重要ですね。

深野氏: ええ。セカンドオピニオンの意見が違って、そのほうが良いと思う場合はもう、乗り換えるくらいのことをしないとダメだと思うんです。

日本の場合、どうしても顧問契約しちゃうと、馴れ合いになって、言葉は悪いですけど「なあなあ」になってしまう。やはりこれだけ変化が激しい時代で、政治や経済状況も変わってきていますから、旧態依然としたやり方で、本当にそのままで良いのかと考えるべきだと思います。

それは企業が永続すること、従業員を守ることを目的と考えれば、経営者として、時には辛い思いもあるかもしれないし、先代からのブレーンだからという思いもあるかもしれないけど、次のステップを考えて、よりベターの方向に進めるためには必要だと思いますね。それが永続するポイントかと。

仲川氏: あらゆる側面において同じことが言えますね。金融商品の運用でも、銀行、証券、生損保のような金融機関の営業マンは、あえて言えばセルサイドのアドバイザーなんですね。

深野氏: まあ言えば、売るためのね。

仲川氏: ええ、売るためのアドバイザーなんです。それに対してFPかコンサルタントかは別にして、バイサイドのアドバイザーの存在はますます今後は重要になると思います。特に深野さんの業界、FPはそうあるべきなんでしょうね。

深野氏: それはね、仲川さんの仰る通りなんだけど、理想。なかなかそこまでの力量を持つ人はごく少ないです。これは自分にも戒めて言うことなんですけど、皆さんFPに対して過大な幻想を追いすぎなんです。私も対応できないこともありますから、そこは自分のバックにいるブレーンの人たちと共有して対応していかなければいけない。

まだまだ他の士業に比べたら、(FPが日本に来て)たった25年。そこでキャリア積んできたと言っても、それ以上に世の中が変化しちゃってますから、そこで何でもできるスーパーマンのみたいなFPがいたら、それはおかしな話で。そう考えるとまだまだ勉強が足りないということに集約されちゃうんですけど、そんな業界なんだと思いますよ。

仲川氏: FPの認知度という面でも、まだ道半ばということもありますから、これからなんでしょうね。

深野氏: ええ。認知度で言えば、日本の習慣でしょうけれど、無形のものにお金を払うという意識が低いこともあるでしょうね。昔と比べると随分やり易くはなってきていますけど。

仲川氏: 以前セミナーで全国をまわったことがあって、面白いことがありましてね。特に地方が多かったんですけど、セミナーの後、相談料を払わせてくださいという方が何人かおられたんですよ。その時は販売する側でしたから、いえいえ相談料は無料ですよと言うと、お金を払わないと相談しにくいと仰るんです。

そこで思ったのは、付加価値のあるサービスには、お客様はお金を払いたいと思うんだなと。逆に言えば、価値のないものにはビタ一文払いたくないということなんですよね。

やはり昔は無形のもの、特に安心、安全にお金を払うという意識は無かったけれど、今は見合うメリットがあればお金を払うという方向になってきてるのかなと。

深野氏: それには一つ、無料でやりますとなると、お客様が胸襟開けないという部分があるんですね。我々は特に、お客様の情報つまり家族構成や金融資産、負債も含めたデータを全部聞かなければいけない。それには胸襟開いていただかないといけないわけで、そのためにお金を払うというイメージがお客様に中にはあると思いますよ。

仲川氏: 自分の仕事にきちんと対価をもらえるのがプロですしね。

深野氏:ええ。プロということには別の側面もありましてね。対価をいただく以上、きちっと仕事をするのがプロだということ。つまり「お金もらってるんだったら、ちゃんとやれよ」と。

価値を認めてもらって、お金を払ってもらってるなら、それに応える義務をどこに持っていくかなんです。私が考えるプロというのは、難しいことを普通にやっていくことだと。また、そこまでやるのは当たり前で、それをさらに超えて付加価値をつけることによって、その人のプロとしての価値があると思うんです。残念ながら、その価値のところにも行ってないような「アンタら何モノ?」という人が多すぎる。

仲川氏: いろんな業界にもいますね。

深野氏:まず経営者が、顧問税理士や社労士といったブレーンの中にもう一人、FPを加えるとするじゃないですか。そうすると税理士も社労士も、FPの資格を持ってる方がいますから、FPとしてその人の価値を見出せないかもしれない。

そこでポイントになるのは、士業のほとんどが過去の業務なんです。たとえば税理士だと、去年や先月の数字を形にしますから、未来の提案はほとんどしない。FPの特徴は、過去もさることながら、予測ではあるけども未来の提案ができる。

仲川氏: それがライフプランということですね。企業だと事業計画があって、ロードマップがあってと、目標と計画を立ててから実行されるわけですが、こと個人となると、全くやらないか、どう立てればいいかわからない人がほとんどかと思うんです。漠然と何年後に子供ができて、何年後にどうなってという程度ならわかるけど。

深野氏:ライフプランという言葉は、我々はもう日常的に使っていますけど、実は一般の方には重く感じるんですね。要するにライフイベントに対していくら必要なのかということなんですが、これは企業の経営者といえど、仕事を離れたら1個人ですし、会社の事業計画と別に、個人のライフプランは立てる必要がありますね。

仲川氏: 行動経済学で言うと、人は遠い不確実な将来よりも、目先のことに汲々となりがちだと。それで一番失敗するのは金融資産の運用だと思うんですね。例えばこの会社は長期的に伸びる会社というビジョンを立てておきながら、実際の投資行動は短期の利ざや稼ぎになっていたり。それでは失敗しますよね。やはり人生の流れとお金のところが、ちぐはぐになっている人は多いかと思うんです。

深野氏: 私はね、その考えには反面賛成で、反面反対なんですよ。その長期の視点というのはすごく重要なんですけど、日本人は先のことを考えすぎだと思う。

仲川氏: 考えすぎですか。

深野氏: ええ。日本人は皆、老若男女問わず全員、年金ファンでしょ。

仲川氏: なるほどなるほど。

深野氏: ライフプランの時間軸で考えれば、年金つまりリタイア後というのは一番遠い出来事ですね。でもそこまでいくのに、あなたは何十年かかりますか? それまでに超えなきゃいけないライフイベントがいくつあるの?ということなんです。それをおざなりにして、一番遠くを見ているでしょ。それって資金準備としておかしい。

本来なら、近い将来の出来事に対して、ある程度の目鼻立ちを立てながらも、それで余裕があれば長期に備えましょうということなのに、その間がすっぽり抜けて、いきなり60歳や70歳のことを考える。これって実はすごく怖いことですよ。

 

2013/01/31


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