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■ FINANCIAL #04

プロとして真贋を見極める vol.3

深野氏: 20代や30代の若い人と話をしても、やはり老後が不安だと言うんですよ。では何に不安なのかというと、将来、年金がどうなるかわからないから、できれば若いうちから準備をしたほうが良いと言われたと。

でも「できれば」でしょ?その「できれば」が、「しなくちゃいけない」Neverに変わってるんです。それに対して、「何もできていない自分」がめちゃくちゃ不安なんですよ。

「老後って言うけど、どういう生活したいの?」って聞くと、何も考えていない。それではいくらお金を貯めたって安心なんかしないでしょって。つまり毎月1000円の積み立てでも、「自分が老後に対してアクションを起こした」という事実が欲しいんです。

仲川氏: なるほど。

深野氏: 本当は何でも良いんだけど、周りの人に言われたり、セミナーで感化されたり、或いは同僚の誰かが始めたと聞いたりすると、「何もしていない自分」に不安になる。その不安の芽をどう摘み取ってあげるかということが必要なんです。

本当は経済効率的なことを考えなければいけないでしょうし、もっと近い将来の出来事もあるかもしれないけど、彼らの不安を摘み取るということであれば、家計を見直して老後のために何かをした、それで枕を高くして眠れるんだったら、それも一つのプランニングになるんじゃないかと思うんです。

仲川氏: 企業の経営者も、実態経済として不安を抱えている方も多いと思うんですが、企業の老後についてはどうご提案されてます?

深野氏:企業の目標の一番は永続性ですから、そこで考えなくちゃいけないことは、いずれ継承しないといけないということですよね。生涯現役だというもの良いんですが、リタイアすることも考えていただきたい。最終的に息子に譲るのか、誰かに譲るのか、それともずっと院政を敷いておきたいのか。

経営者として自分の人生の全てを一生懸命掛けてきたとしても、必ずどこかで終わりが来るんだから、やっぱりセカンドライフということを考えておくべきだと思いますし、経営者がそれをしっかり考えていてこそ、従業員も安心だと思うんですよ。

仕事は一生懸命やってるけれど、プライベートはボロボロで何も残っていないとなると、そんな経営者だと従業員も不安じゃないですか。経営者も1個人なんですから、その模範たれという思いはありますね。

仲川氏: それには後継者を如何に育てておくか、ということも重要ですよね。

深野氏: ええ。やっぱり成功して覚えることよりも、失敗して覚えることのほうが多いといいますからね。ある程度は任せるということを考えておかないと、経営者というのはやはり一朝一夕でできることじゃないですから。

そこでセカンドオピニオンにしても、若干の苦言を呈するぐらいの人のほうが良いんですよ。さらにその苦言を受け入れる度量も、経営者には必要ですし。

仲川氏: なるほどね。日本で事業所帯は600万社のうち、90%以上が中小企業ですから、事業の承継は増えていますね。税理士事務所でさえ承継問題で悩んでいるところもありますから。

深野氏: 後継者不足は大きな問題で、新聞でも大企業M&Aの記事がよくありますけど、目を凝らせば中小企業の事業承継を専門にされているところが増えてきていますね。

仲川氏: 銀行はビックディールしかやらないですから、たとえば街の自転車屋さんを売りたいとなると、まず事業承継があって、それが出来ないからM&Aという。先にM&Aありきじゃないんですね。そういったご相談の場合、FPさんも対応されるのですか?

深野氏: FPもできる領域とできない領域がありますからね。中小企業の事業承継となると、そこに税金が絡んだりしますから、できない領域については対応できるシステムを持ってなきゃダメなんですね。

あるいは自分はできないと線を引くことです。自分の領域をはっきりさせて、できない、しないところに線を引くことで、FPの仕事はもっと高度化専門化すると思うんですね。金融サービスもそうなってきていますし、FPも今後は変わらざるを得ない気がします。

仲川氏: そうですね。課題がたくさんあるが故に伸びる業界かと。アメリカだと個人がFPと顧問契約することが一般ですが、日本ではまだまだ、似て非なる感がある。ステータスもスキルもこれから上げていかないといけないですね。

深野氏:各分野にトップFPが出れば一番いいんですよ。例えば弁護士でも、国際法規を専門にする方とか、離婚専門や消費者金融に特化するといった庶民派弁護士とか。そういう様式が出てくれば、我々の業界も変わってくるでしょうね。

仲川氏: 今は、なんでもやります的な、でも具体的にはちょっとぼんやりした感があるので、そこをもっと集約して、得意分野をつくれということですね。今また貯蓄から投資へと、国策として動き出そうとしていますけど、やはり本当にニーズに合致するようなサービスを提供できないと、なかなか預貯金に寝たものが流れていかないですからね。

深野氏:そういう国策を討論する有識者のメンバーの中に、我々の業界FPが入らないとダメだと思うんです。そうしたら変わってくると思う。

公平中立とか多様性のある意見を求めるというのなら、セルサイドの人間もバイサイドの人間も揃えて討論すべきなのに、全員セルサイドの人間ばかり並べて話し合ったって無理ですよ。

仲川氏: そうですよね。深野さん出てくださいよ。

深野氏: いやー、私は「うるさ方」だから呼ばれないですよ(笑)

仲川氏: 「うるさ方」だから必要なんですよねえ。噛み付く人がいないと偏った方へいくだけですから。

深野氏:まあ、苦言を呈する人がいるってことは、逆に言うと、見てもらっているということですからね。私は自分で引退の時をいつか考えているんです。基本的には生涯現役だと思っていて、年齢で辞めるつもりはないんです。

でもそれはいつかというと、お客様の依頼にこたえられなくなった時。つまり苦言を呈する事にたいして、深野というブランドを守れないような答えをしてしまった時。それが辞めるべき時だと決めてるんです。

仲川氏: プロ野球の選手も、自分のバッティングができなくなった時が辞める時だと言いますものね。

深野氏:企業の経営者も、生涯現役で、最終的に泥にまみれて断末魔まで行くぞっていうのも良いんですが、企業の将来を考えるんであれば、そういう引き際の美学を考えることも必要だと思いますよ。 

仲川氏: プロ野球選手だと、自分に返ってくるだけだから良いですけど、経営者となるとお客様にも迷惑がかかりますからね。

深野氏:そう。プロ野球選手だったらせいぜい家族だけで済みますけど、やっぱり企業の経営者となればそうはいかない。経営者は皆、年齢を言い訳にすることがイヤなんです。ならば、自分が持つ享受ってあるでしょ。そこを守れなくなった時が引き際だとぼくは考えますね。 またね、そういう意識があれば、何歳でも頑張れるんですよ。

仲川氏: ぜひ生涯現役のFPでがんばってください。

深野氏: ええ。私はセミナーしながら倒れますから(笑)

仲川氏: 死に場所はセミナー会場なんですね(笑)
深野 康彦
有限会社ファイナンシャルリサーチ
代表
 
1962年 埼玉県出身。 東京経済大学経済学部経済学科卒。 大学卒業後、クレジット会社勤務を経て1989年にFP業界に入る。金融資産運用設計を中心に研鑽し1996年独立。 現在の有限会社ファイナンシャルリサーチは2社目の企業。主な著書: 「これから生きて行くために必要なお金の話を一緒にしよう!」(ダイヤモンド社) 「会社が傾いても自分だけは大丈夫病」(講談社)、「あなたの毎月分配型投資信託が危ない!」(ダイヤモンド社)等

FB: kohisuya
仲川 康彦
ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
代表取締役副社長
 
1966年京都府出身。近畿大学法学部経営法学科卒。日本インベスターズ証券(NISCO) 取締役・IFA事業部長、SBI証券 顧問兼IFA部長等を経て現職。過去10年弱に渡り一貫して、金融機関に属さないお客様の立場に立った会計事務所や保険代理店、ファイナンシャル・プランナー等と協調する金融商品仲介ビジネスに従事し、投資家の”金融知力”向上のための啓蒙活動を、全国のパートナーと推進している。

ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
HP: http://www.hibiki-fa.co.jp/
撮影:菅野 勝男/取材:2013年1月

2013/01/31


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