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経済成長の軌跡で見るアジア進出 vol.2

仲川氏:すごくよくわかります。新興国に対する投資って、これは有価証券投資もそうですし、事業投資も同じだと思うんです。実はそれって日本が経験してることじゃないですか。

日本も今や先進国になっているけれど、僕や小山さんが生まれた頃の日本って、今でいうASEANのような新興国だったわけですから。

新興国って経済規模は本当に小さいものですし、これから成長するという時には足の速い短期債務がどんどん入って来る。やはり短期資金だからすぐに逃げちゃう。

最近でいうと、1997年のアジア通貨危機でのタイのバーツ、あんな小さな国なのに、大きなお金がどんどん入ってきて、溢れたらさっと引く。そうなると引いた後には何も残らず、経済も株も暴落してしまった。

経済の規模というのは、これを繰り返しながらだんだん大きくなるもので、それを理解しないで飛び乗るからドボンしてしまう。やっぱり長期的な果実を得るためには、長期的な目を持つことですね。

小山氏: ええ。まず自分が投資しようとする資金は、どんな投資なのかを理解することです。あとその国の経済成長が今どの段階なのか。ここは絶対押さえておかないともう逃げられないということになる。

足の遅い資金を投入しているのに、来年利益を回収しようとするから誤る。そうしたミスマッチがたくさん起きているんです。

仲川氏: アジアのことも理解せずに、ブームだからといきなりミャンマーかい?と思うこともありますけど、アジアに工場を作るとか、証券に投資するとかの前に、そこは気付いてもらいたいですね。

小山氏:そういう意味では、ベトナムもようやく製造業ができる土壌が出来てきたかなという段階です。

仲川氏:長期的に見れば、逆にここから安定してきて、5年先、10年先を見ていくという腰を据えて投資できる環境が整ってきたということですね。

小山氏: そうなんです。ベトナムも、製造業だと言われてから約20年、ようやくなわけですから、今中国がダメだから、さあミャンマーだという話は、製造業にとって非常にリスキーなことなんです。

仲川氏: それってまさに、アジアにどっぷり浸かっている小山さんならではの話ですが、そういった話って、なかなかマスコミや雑誌には載ってないですよね。

小山氏: 載ってないですよ。マスコミが報道している内容なんてもう、ゲップが出そうです(笑)もう、同じことばっかりの繰り返し。

仲川氏: 仕方ないですよね。リソースがないんですから。

小山氏: 行動を起こさせるには何かのフックも必要だとは思うんですけどね。それがマスコミの役割なんでしょうけれど、もうちょっと突っ込んで話そうよと思うこともありますけど。

仲川氏:金融の世界で見ると、新興国で起こることには必ず2つあって、ひとつは株式市場が長期的に拡大する。時価総額もそうだし、株価自体もそう。

日本でいえば僕の生まれた1966年だと、日経平均株価は1,500円くらい。そこから20年後のバブルでの最高値が38,960円になった。

もうひとつ、経済が成長するから当然、通貨が切り上がるわけで、日本はそこから変動相場制に変わって1ドル360円から240円になり、同じ20年後1984年のプラザ合意の時には120円になった。

ということは日本という新興国に投資したら、たった20年で株価は何十倍になり、掛けることの通貨は3倍。これが新興国投資の魅力なんですよね。

今ミャンマーが良いといっても、同じように事業投資するとして、それが短期間で収益を稼ぐビジネスなら良いけど、どっぷり腰をすえてやる事業なら、やっぱり1回や2回、えらい目になることに腹をくくって、それを想定しつつ5年10年先を見越すくらいでないといけないですね。

小山氏:それも時間軸の考えがあって理解しているかどうかですから、20年待てる資金を投入するなら、投入してもいいと思うんです。タイでもミャンマーでもべトナムでも。

仲川氏: ただ、日本が20年かかってたどった経済成長の軌跡と根本的に違うのは、インターネットも含めてこれだけ世界がグローバル化していますから、もっと早いスパンで進むと思うんですね。ということは早く進む分だけ、逆に短期的なネガティブイベントも頻繁にしかも大きく発生する。

小山氏: ええ。その通りです。

仲川氏: 最近、アジア進出のコンサル会社がやたら多いですけど、どこも、そうしたことも含めてアドバイスされてるんでしょうか。

小山氏: まあ、もちろんちゃんとあるんでしょうけど(笑)。でも増えたのはまず、簡単なんですよね。行ってみないとわからないんですから。でもじゃあその後どうフォローしてくれるかということが見極めになりますけど。

海外進出する時に一番最初にすることは現地パートナーを探すことです。よくツアーで行かれたりするんですが、ツアーだと現実には直接ビジネスには繋がりにくいんですよね。やっぱり現地パートナーを見極めなければ。

仲川氏:それはどういうところで判るんですか?

小山氏:現地の人とたくさん話す。そこからしかわからないんです。よく現地の人間に騙されたという話がありますけど、それはすぐに信用してしまうから。やはり向こうも見ていますからね。信用するのもされるのも時間をかけなければ。そういう当たり前のことをしない人が多い。

仲川氏: なるほど。今のASEANプラスワンについては、ミャンマーやベトナムよりもうちょっと先を行った状態なんですか?

小山氏: まあそうですね。全体の市場は完全に底上げされていますからね。でも本当に難しいのは、自分がどういうビジネスをやってて、どこのステージで発揮できるのかを把握することなんです。そこからどこの国を選ぶのかがポイントですね。

仲川氏: ASEANは日本と比べて人口は多いし、しかも中間層が多い。

小山氏:ええ。女性を定点観測して見ると面白いですよ。やっぱり持ち物や服装が変わってきたりしていますからね。そこで、(経済が)成長してきてることがわかるという。

仲川氏: 女性の服装や化粧品というのは、余裕が出てくる証ですからね。

小山氏: そうです。なんかこの人、キレイになってきたなあとか(笑)

仲川氏: それは個人的な趣味じゃないんですか(笑)

小山氏: いやいや(笑)まあ、それでも良いんですよ。マーケティングですから。そういうのも良いので、まず現地に行ってみることです。
小山 貴広
ベトナム総研
代表
 
大手保険会社から独立、経営コンサルティング会社ならびにベトナムファンド設立、ベトナム進出支援を行うベトナム総研代表を経て現職。新興国投資に関する著書多数

HP: http://www.vietnamsoken.com/
仲川 康彦
ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
代表取締役副社長
 
1966年京都府出身。近畿大学法学部経営法学科卒。日本インベスターズ証券(NISCO) 取締役・IFA事業部長、SBI証券 顧問兼IFA部長等を経て現職。過去10年弱に渡り一貫して、金融機関に属さないお客様の立場に立った会計事務所や保険代理店、ファイナンシャル・プランナー等と協調する金融商品仲介ビジネスに従事し、投資家の”金融知力”向上のための啓蒙活動を、全国のパートナーと推進している。

ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
HP: http://www.hibiki-fa.co.jp/
撮影:菅野 勝男/取材:2013年2月

 

2013/02/04


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