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関西アートシーン~ツムテンカクの世界 vol.3

山田氏:よく家を建てたい人に建築家を紹介しますってサービスあるじゃない?でも結構みんな困ってない? 建築家に家を頼みたいけど、知り合いの中にあんまり建築家っていないよね。

皿田氏:家を建てるのは建築家って考え付きそうだけど、インテリアデザイナーなんて出てこないですよ。内装屋さんに行くぐらいで。

山田氏:ああ、内装屋さんに行くよね(笑)

堤氏:建築だって工務店に行きますよ(笑)

山田氏:工務店に行くよね(笑)

皿田氏:プロダクトデザイナーなんて一番いないでしょ(笑)直接的にイメージできないし(笑)

山田氏:そうだねえ。個人的に友達になってプロダクトデザインをお願いされたことは無いな(笑) 

しかもフラっとツムテンカクを見に来たおっちゃんが、「そうかあ、ワシもちょっと、CDプレイヤーでも作るか。デザインお願い」って僕に言うことはまず無い(笑)

堤氏:取っ付きにくそうであまり興味ない人でも、すーっと入って来るというのがツムテンカクの特徴ですかね。

山田氏:街だからね。

皿田氏:特に大阪の場合、展示会といえばインテックス(大阪市住之江区にある国際展示場)だけど、やっぱり業界の人しか行かない。

でも街中でやるとなると、本当の意味でのエンドユーザーの目に触れるわけで、そういうイベントってあまり無いと思う。

山田氏:しかも観光地でね。大阪じゃない人も多いし言語の違う人もいる。地元の小学校でワークショップをしたじゃない?僕らはあの子達になんらかの爪あとを残せてるのかな。

皿田氏:それがわかるのはたぶん10年後でしょう。

山田氏:10年前のあのツムテンカクのワークショップがきっかけで、僕はデザイナーになりましたって?

皿田氏:それ聞いたら山田さんたぶん泣きますよ(笑)

山田氏:すげー泣く。もう手を引っぱって泣く(笑)

皿田氏:今僕らがこうしてるのもきっかけがあって、そこで何かしら感性に刺激を受けたわけで、例えば建物を見てスゴイとか、あの家具がよかったとか、そんなところからこの道に入った。

でもそれは大阪のどこかじゃなくて旅行した時とか、もしかしたらテレビだったのかもしれない。

それが身近な現場で行われていたら、もっとインパクトは強いし、受ける影響力は大きいよね。

山田氏:去年は400人以上の、しかもいろんなジャンルのクリエイターが集まったけど、あの異質感ってないね。その異質感が面白い。

あれだけ集まればクリエイーターの存在も珍しくなくなる。よく「デザインってよくわからん」って拒否する人もいるけど、それがちょっとでも薄まるんじゃないかな。

皿田氏:クリエーターが何かをするって、どういう感覚で、どういう影響力があるかということを知ってもらえるよね。

エンドユーザーの人達が見て「いいね」と感じることが、実際の購買に繋がる。それは何が起こしてるのかというと、デザインやアートなんだと。

堤氏:僕らの想いはそこなんだけど、一方で全然違う視点で見ている人もいますよね。地域活性化としてやってるんじゃないかとか。

そこになぜデザインやアートなの?って。そう見てる人たちにはどう映ってるんでしょうね。

山田氏:地域活性事業としてツムテンカクをやってるということ?

堤氏:そういう視点で見てる人いますよね。

山田氏:そこは僕らとしては本意ではないけど。

皿田氏:地域活性って地域活性をやろう!と思ってすると、あまりうまくいかない。悪い言い方だけど、お金払って来てもらって、結局お金出してパーッと何かやるだけってなんか違う。

そうじゃなくて僕らはこの場所でやることに意義を見出しているからこそ、街に還元できると考えてる。

山田氏:結構プラスの意味で街に気を使ってるよね。

堤氏:そこまで気を使わなくても良いってこともあるんだけど(笑)

山田氏: 身銭切って気遣ってる(笑)でも「やってあげる」じゃなくて、「一緒にやりましょうよ」というスタンスだから共感を得られるし、あの空間がある。

大阪の中でも特殊な場所だから心開いてくれるってこともあるよね。まあ開いてくれない人もいるけど(笑)

堤氏:いるいる(笑)ウンともスンとも言わない人もいるけど。

山田氏:オマエら誰やねん、何すんねんって(笑)

皿田氏:そう思うでしょ普通(笑)

山田氏:でもずいぶん敷居が低くなったのも、そのスタンスの賜物じゃない?他の場所だったら、何やってんの?ってことになるだろうね。

皿田氏:街も少しづつ変わってきてる気がするよね。

山田氏:街自体が時代と共に変わろうとしているところに、僕らが入ってきたということもあるけど。新世界でこういう動きって今までにあったの?

皿田氏:単発で小さいものはあったけど継続していない。街のために何かやろうと思っても、普通は身銭切らないしね。

僕らは自分たちのしたいことをするから身銭を切るわけで、身銭切ってるからこそ、街に良い形で還元できると思う。そこはWinWinになってるんじゃないかな。本来は身銭は切りたくないけど(笑)

山田氏:Winが何なのかわからないけど(笑) こうして街の人たちも絡んでくれるようになって、関西のデザインの底上げというとおこがましいかもしれないけど、ベースアップの一端を担ってるよね。

皿田氏:場所が持つパワーもあるよね。東京には東京というスタンスに乗っ掛ってるのと同じように、新世界というスタンスに乗っ掛らないとソンだし。だからこそオリジナリティが出せるんじゃないかな。

山田氏:でもさ、新世界というとふたこと目には「串カツ」「コテコテでんがな」ってやらないといけない雰囲気ってない?

皿田氏:あるある。難波あたりは今そうなってるよね。

山田氏:そういうのからうまく逃げたかと思うんだよね、ツムテンカクは。それをやってしまうと、ただの「新世界イベント」で終わったと思う。

新世界は器であって、そこで同時多発的にイベントを集合させる。ミックスグリル的に。

ワンプレートの上にチキンもあればウィンナーもある。去年「ゲリラシスターズ」に歌ってもらったけど、このツムテンカク自体がゲリラだよね(笑)どこで何が起きるかわからない、突拍子も無いという。

皿田氏:僕らは踏み台を用意しているようなもので、他ではできないことができればいいよね。それが大阪のスタイルになれば、新しいジャンルになれる。

10年後、来てくれた子供たちが大学生になって、20年後大人になって。その頃には皆でしっかり積み上げてきたものがベースになってたらいいな。そうなれば僕らの仕事も認められてる気がする。 

堤氏:そうですね。

皿田氏:20年後か。もう引退してるか(笑)

堤氏:まだ引退してないですよ(笑)

皿田氏:こんどは僕らが若い子たちの矛先にされる(笑)

山田氏:あいつらまだいるって(笑)

皿田氏:一番最初に言われるのは山田さんだけど(笑)

山田氏:ということは、ウザイって思われるってわけね。いいね(笑)

皿田氏:でもこれって世の中の必然的な流れであって、僕らが狙って産み出したわけじゃない。たまたま僕らはそれに乗ってるだけかもしれない。その波を押し流したら、また次の波が来るんじゃないかな。そんな気がする。

山田氏:そうだね。だから永遠には続かないと思うし、続く必要はないと思う。いつか誰かがブチ壊してくれるだろうし、ブチ壊す必要はどこかのタイミングで絶対ある。

そこで10年後の、「ニヤっ」なのか、「ガオー」なのか、泣きながら「ウォー」なのかってことだよね。

2013/03/14


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