■ INNOVATION #04

HOME» ■ INNOVATION #04 »インターモダルの視点を考える vol.4

■ INNOVATION #04

インターモダルの視点を考える vol.4

岩本氏:日本の地方空港では、儲かってらっしゃるところとそうでないところがあるかと思いますけれど、やはりそれも最初のビジョンの立て方というか、アプローチの違いが問題なんでしょうか。

園山氏:いろいろあるでしょうけれど、どうしても空港が欲しいが先行して、利用者予測が大きい数字でだされ、実際と乖離してしまうケースが多いと見られます。旅客という華やかなイメージを思い浮かべてしまいますからね。北九州も最初の頃は思ったようにはいかなかったですね。

岩本氏:北九州は物流だけですか?

園山氏:旅客はスターフライヤーがあります。地域活性化という事で考えれば、大きな地場企業と北九州市が主体で航空会社を設立・運航して、投資した企業は社員に利用を積極的に薦め、市職員も東京行きは必ず利用を市長が促しました。

貨物においては、わざわざ大阪まで輸出貨物を運んでアジアに輸出すのは効率が悪いので、北九州からアジアへ出すようにアジア系航空会社の就航を願ってセールス活動をしました。

岩本氏:以前のお話で、結果的に地域活性化に結びつくためには、地元からの見方ではなくて、逆によそからどう見られているかを考えておられると。

園山氏:ええ、そうです。たとえば韓国にいる知人が、九州といっても、6空港があるのに、なぜ一緒に「九州」を売らないの?と言うんですね。

やっぱり北九州だけじゃなくて他も行きたいよねとなる。北九州空港に大韓航空やアシアナの飛行機を入れたいなら、北九州だけを売っても仕方ないんです。でもそういう話をすると、いや、九州は皆競争してるからだめだって(笑)

岩本氏:せっかくのビジネスチャンスを内輪もめで失ってしまったら、もったいないですね。
園山氏:今ソウルには、宮崎県のオフィスや熊本県のオフィスとか、皆出されているんですけれど、もったいないですし、やはりそれは戦力としてならないと現地の方は思ってます。

岩本氏:なるほど、そうした指摘はこれまでほとんどされていません。そして、最初から地域活性化といったアプローチではなく、そこにとって良いことは何かを考えておられたということですね。

園山氏:北九州を売るには、まず九州を売らなければいけない。そこで初めて空港を使ってもらうことができるんです。九州を全体にして、いわゆるゲートウェイとして考えてもらうと、そこで物流を考えてもらえる。インターモダルな、即ち貨物の空港ですね。船も出ている、レールも繋がる、そこがジャンクションになれば、他の空港と差別化できる。。

岩本氏:今でこそ、そういうアイデアを理解される方もおられるでしょうけれど、最初は斬新だったのではないでしょうか。

園山氏:やはり外からどう見られているのかという、常に逆の立場になってものを考えなければいけないと思いますね。

岩本氏:今の経済問題で日米で起きている経済摩擦も、そこに関連していて、日本人はどうしても国内サイドから訴える手段しかないんですけれど、やはり向こうがどう考えているか、少しアイデアを広げると、大分通商交渉なども楽になるんじゃないかと思うんですね。やはり少し見方が偏りすきているんじゃないかと感じます。
園山氏:ええ、私もそう思います。通常、輸出をしていたら、輸入も考えなければいけないんです。航空会社からすると、輸出の貨物があっても輸入がないと、飛行機がその空港に就航する意味がない。両方のトラフィックがあってはじめて商売のバランスが取れるわけですから。。

岩本氏:バランスですね。向こうもこちらも立てて。

園山氏:やはりこちらが何かしたい時は、向こうに何のメリットがあるかを強調していかないと。

岩本氏:そういう意味でも、日本は内向きすぎになっている印象があります。立場が違っても相手の視点というのを併せてものを考えていくことは、結局自分のとっても効率よいことだったりしますね。

園山氏:今は働いている奥さんもたくさんおられますが、私の年代だと、やはり相手の説得がないと外で好きなように動けなかったんですね。ですから、まず周りの人たちを幸せにしておいて、自分がやりたいことをやる。それが外で働くためのキーだったように思います。

岩本氏:それは世代を超えて、今もそういうところはありますよね(笑)

園山氏:ありますかしら(笑)それでも私はまず、長く働くにはどの職業についたらいいかということが根本でした。

岩本氏:そうなんですか。

園山氏:私が15、6歳でアメリカにいた頃、働く女性を見て、ああかっこいいな、ああいうふうになりたいなと思ったんですね。

でも現実に自分が働き出したとき、日本は長く働ける職業というのは看護士さんくらいでした。あとは伝票めくりかお茶出すくらいでした。ある日パンアメリカン航空の女性がお腹が大きくても働いていらっしゃったのを見て、これだと思いました。
岩本氏:外資系だとセクレタリーで入っても、自分さえ意欲があればどんどん進めますものね。

園山氏:エアカナダに入って2年目くらいで、結婚することになったんですが当時の日本の会社は、結婚すると女性は皆やめなくちゃいけなかったんですね。一応会社に、「結婚するんですけど、辞めなくちゃいけないですよね?」と聞くと、「どうしてやめるの?カナダでは結婚してからいい仕事するんだよね」ってカナダ人の支店長に言われて。

少しづつ仕事もわかりかけていた頃だったので続けていくんですが、向こうに座っているボスは2倍くらい給料が良いんですね。彼はいつもヨーロッパにバカンスに行ったりして。そこで、セクレタリーからカーゴエージェントのポジションにいましたが、セールスに行きたいと自分で申し出たんです。会社からは、いいけど今の仕事と一緒にやってね、給料が変えられないけど。と言われまして。

岩本氏:ステップアップして。それも楽しいプロセスなんですよね。

園山氏:給料が変わらなかったのは辛かったですけどね(笑)でも面白さを取るか、ですね。他社からのお誘いもありましたけれど、やはり自分のやってきたことの面白さもありますし、他の会社が同じようなサービスをやってなかったことというのは大きかったですね。

岩本氏:パイオニアですものね。

園山氏:ええ。よそに行けばまたゼロからスタートしなくちゃいけない。それを考えるとやっぱりここでじっくり我慢したほうが良いかなと(笑)まあいろいろありましたけれど耐えて耐えて。おしんですね(笑)

岩本氏:今は笑ってそうお話をされる姿が素晴らしい(笑)
園山 玲子
インターモダル株式会社
代表取締役
 
1957年成城学園高校卒業。藤田観光入社。63年東京ヒルトンホテル入社。65年豪メルボルン・エイジ新聞・東京事務所入社。67年エア・カナダ日本支社入社。94年貨物営業支配人。2000年インターモダル設立。
岩本 沙弓
金融コンサルタント・経済評論家
大阪経済大学経営学部客員教授
青山学院大学大学院 国際政治経済学科修士課修了。1991年より日・米・加・豪の金融機関にてヴァイス・プレジデントとしてトレーディング業務に従事。 日本経済新聞社発行のニューズレターに7年間、為替見通しを執筆。金融機関専門誌『ユーロマネー』誌のアンケートで為替予測部門の優秀ディーラーに選出。現在、為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、英語を中心に私立高校、及び専門学校にて講師業に従事。政権政策会議などの講師に招かれる。主な著作に『円高円安でわかる世界のお金の大原則』(翔泳社)、『新・マネー敗戦』(文春新書)、『マネーの動きで見抜く国際情勢』(PHPビジネス新書)、『為替占領』(ヒカルランド)他。Office 『W・I・S・H』代表
 


HP: http://www.sayumi-iwamoto.com/
FB: sayumi.iwamoto
取材:2013年11月

2013/11/04


■ INNOVATION #04

powerdby