■ ADV(アドボカシー)な人々 #02

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ウナギトラベル代表 東園絵 「いまのきもち」 vol.2

谷本氏: 東さんは外資系の金融業界のご出身で、日常的に外国人の方とコミュニケーションされていたと思うのですが、そこからなにかキーワードがあったのですか?

東氏: 前職がドイツ証券の株式調査部にいましたので、よく海外出張に行く機会があったんです。現地で仕事して、食事して買い物して帰ってくるだけというのが、なんかもったいないような気がしていて、何か現地の人と繋がる仕組みがあったらいいなと思っていたんです。例えば同郷や同業だったり、同世代だったり。変な意味での出会い系ではなく、現地の人との出会いがあれば、出張や旅行をより豊かにするんじゃないかと。

やはり互いの国を理解するには、人と人との繋がりが一番強いんじゃないかなと思って、最初は品川にある古い洋館を使って、いろんな人が来れる場を作ったんです。でも正直難しくて、もっと踏み込んで繋がるにはどんな仕組みを作れば良いのか、いろんなアイデアを試行錯誤しながら悶々と考えていていました。

その頃に並行してこのウナギのぬいぐるみが生まれて、自分の中で一本筋が通って合致したんですね。これはツールになるんじゃないかと。キーワードとしてはぬいぐるみではなく、人と人を繋ぐというところにあります。

谷本氏: 外資系金融機関って無情だったり冷酷であったり、資本市場の最たる所ですよね。そこからまさに正反対の、人とのコミュニケーションというのは、反動なのか、それとも、もともと好きだったからなのかというと?

東氏: もともと好きだったんですね。高校生の頃、緒方貞子さんにすごく憧れていて、ありがちなんですが国連で働きたいと思っていたんです。それで大学の頃、緒方さんが弁務官を勤めておられたUHCRの事務所でボランティアをしていました。

「キャンプサダコ」という研修プログラムにも参加させてもらって、難民区キャンプなどいろんな人とのコミュニケーションの現場に学生ながら身を置いていました。でもそれからいろいろ考えるうちに、現場ではなく、もう少し客観的に社会を見てみたいと思うようになったんです。そこで兄が銀行員だったということもあって、最初の入口は金融業界も悪くないかなと、まず銀行に入ったんです。そしたらすごく理不尽な世界で(笑)

片岡氏: 最近流行の(笑)
東氏: まさにああいう世界で(笑)それからアジアの通貨危機の後、日本の銀行も縮小傾向にあったので外資系に転職したんです。そしたら思わぬ方向で。一旦外資系の金融に入ってしまうともうほんとに忙しくて。朝早くから夜遅くまで働くという生活が続いて、ゆっくり考える時間もなかったですね。そこには3年半いてそれなりに楽しかったのですが、自分が学生の頃に持っていたパッションとは違う方向に行っていて、それもどうかと自分の中で葛藤があったんです。

それから漠然と大学院に行こうと思い始めて、ビジネススクールのオプションもあったんですけれど、一旦ビジネスから離れて普通に経済を勉強しようと早稲田の大学院に行きました。一旦リセットということで、当時はビジネスしようとは全く思っていませんでした。

その頃マネックス証券の松本大さんのメルマガを読んでいて、スイスのザンクト・ガレンというシンポジウムのスピーカーで出ておられたのですが、日本人の学生が参加していないって書いてあったんです。それが刺激になって、以前ドイツ証券の時に考えていた海外で人と人を繋ぐというビジネスプランを出して通ったんです。

私と同じ年のスピーカーには、トヨタ元社長の張さんや、雅子妃殿下のお父様もいらっしゃったのですが、今MITのメディアラボ所長されている伊藤穰一さんやACCESSの荒川さんなど起業家の方々もおられて、そういう人たちとスイスで出会えてすごく刺激になりました。

片岡氏: 金融の世界で出会う人たちとは違いますね。

東氏: 大学院の学生という立場だったからかもしれませんが、なんか自分でやってみようとその場で思いました。社会に入ったら入ったで忙しくて、学生の頃に考えていたことと違っても、不思議なものでその環境にいると、そこが居心地が良い訳でもないのに価値観がそっちになってしまうんですね。なんかもう、すべて金融でなければいけないというような。やはり厳しいので外れたらもう負けのような感覚ですね。

片岡氏: 上がっていかなきゃいけないような。

東氏: ええ。昇進しなくちゃという焦りもあって、業績を残さなければもちろんクビにもなるし。それも良くないなと思ってリセットして。その大学院時代が違う方向に行くきっかけだったと思います。
片岡氏: 銀行員だからといって必ずしも融資担当とは限らないし、証券会社にいたから必ず投資するとは限らないと思うんですが、基本、指標になるのはお金じゃないですか。数字というか共通の言語がある。そこで今のこのお仕事に、その頃の立場で投資や融資をしたかというと、どうですか?

東氏: このサービスに対して投資か融資をするかということですか?

片岡氏: まあ金額にもよると思うんですけど。

東氏: それはなかなか難しい質問ですね(笑)

片岡氏: (笑)そこってどういう見方をするんですか?金融業界の立場だと投資しないけど、今実際に事業されている。どういうふうに見方が違うのですか?

東氏: 考えたことなかったです(笑)ただこれは成長すると信じているので、客観的にもしそういう立場だったら、しっかりヒヤリングして投資信頼すると思います。

片岡氏: 市場がまだなくてこれから作っていくので過去にデータがないじゃないですか。ブレイクスルーでやっていくしかないですよね。今年はこれ、来年はこれを目指すからこれだけコストがかかるって。でも金融業界はそうじゃないですよね。過去の実績を見る。

東氏: 特に日本の銀行融資だとそうですね。

片岡氏: 急にステップがトンと跳ね上がるって、すぐにはなかなか変わらないじゃないですか。この脳の使い方って。

東氏: そもそもこっち側にマインドがあったというのが大きいと思います。金融業界にいた時も、お金お金という環境に置かれていたからであって、ほんとそこまでお金にハマっていたわけではないんです。やはり伊藤穰一やACCESSの荒川さんや松本大さんに出会えたということが大きいと思います。でも金融業界にいたときも、そういう人達の出会いはあったんですけどね。

片岡氏: 違う目で見てた?

東氏: 違う目で見てたんでしょうね。なので今反省する点は、大企業でない中で、一から事業を始めることが大変だということを全く感じていなかったですし、企業を調査するにあたっても、中小企業の社長さんの気持ちにまで寄り添っていなかったなと。全く理解を得られないようなものに対してお客様を掴むことが、如何に大変かということが、今自分でやってみてわかりましたね。

2013/12/22


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