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京都の経済を培う文化の厚みとは vol.2

山田氏: 僕ぐらいの年になって祗園に行っても、小唄一つ歌えない人も少なくないですね。昔は小唄ぐらい誰でも謡えたのでしょう。父は小唄なんか習うもんやない、そんなもんお座敷で勝手に覚えるもんやって。

岩本氏: 私の中の発想に全くないのですが、生活の一部だったのですね。

山田氏: 僕ら自体のレベルが下がってきているんだと思いますよ。経済的なこともあるでしょうけど、このまま放っておいたら無くなってしまうかもしれません。

岩本氏: 私などは教養の部分の素養も含めほとんどないのですが、かつては日常にあった文化や伝統のようなものが、色々と理由はあるのでしょうけど、京都でさえだんだん手が届かなくなってしまうのはもったいないような気がします。

山田氏: 父は清元で「段物」といってきちんとしたものをやっていましたが、僕が習っていた小唄にもやはり芝居がかりのものがあるんです。やきものでも少しはかじっておかないといけないので。

お客様から今度こういう踊りをするのでその撒き物に使いたいと言われて、それは何ですか?と聞くわけにもいきませんから。

若い時は教えてくださいと言えるでしょうけど、そこそこの年齢になってくるとね。京都にはそういう厚みのようなものがあるんです。

岩本氏: 単に物を売れば良いということではないのですね。

山田氏: そこにあるものを頂戴、ではないですね。
岩本氏: 今はネットで簡単にものが買えますが、特に京都は全く違うスタイルなんですよね。

山田氏: もちろん店にぱっと来られて「これ頂戴」と買われる方もいますけど、やはり数がご入用だったりいろいろご相談いただく時は、どうぞお上がりくださいとなります。またご興味ある方には絵付け工房を見ていただくこともありますし。

岩本氏: どなたでもどうぞというわけにはいかない。

山田氏: ええ。そのへんは京都の人は皆さん考えてはりますね。

岩本氏: こうしたゆったりした雰囲気の中で厳選しながらものを買うということは、早ければ効率が良いという今の主流とは全く違う経済活動だと思います。

今この主流となっている効率性を重んじる経済が徐々にではありますが限界に来ていることは間違いないわけで、その中でもこの京都は町全体として凛として今の主流の経済活動に毒されないというか、影響を受けていないようにも感じます。

山田氏: 逆にそれを「売り」にしている感じもありますね。

岩本氏: ええ。この先に向かう経済活動のヒントのようなものがここには間違いなくあると思うのです。他の地方経済は疲弊している場所も多いのですが、京都は独特の文化や伝統と融合した経済活動を非常にうまくなさっています。

山田氏: 観光都市であることが大きな要素でしょうね。もちろん文化があるから観光都市になるのでしょうけれど。

公家文化やお寺・神社あるいはお茶やお花の文化は言うにおよびませんが、例えば京都は祇園だけでなく五花街まるまる今も元気です。

いわゆる「旦那衆」という方々がまだおられるんですね。それもやはり文化の積み重ねがあるからこそでしょうね。
岩本氏: その「旦那衆」の代表としてと申し上げると、ご自分などまだまだとおっしゃるかと思いますが、今の京都をご覧になっていてどうですか。

山田氏: やきもので言えば、今「五条坂・茶わん坂ネットワーク」ということをやっていまして、『わん・椀・ONE』というイベントも先日2回目を終えました。

今回初めてパネルディスカッションにも出させていただいて。和食器は今良い風が吹いてきているように思います。

岩本氏: それはなぜでしょうか?具体的にこれといったきっかけがあったのでしょうか。

山田氏: やはり和食が世界遺産に登録されたことが大きいですね。和食には当然器がついてきますし、また今日本酒がいろんな方面に出て行かれてますから、お銚子や徳利、盃といった器も。

あの登録も最初、京都の名立たる料理屋さんばかり10軒ぐらい集まって動いておられたそうなんですけど、いわゆる懐石・茶懐石だけでは数が少ない。

そこで「日本食」という括りにして、色々な組合の方々にもお声掛けしたりして裾を広げて、ようやく数を集めて辿りついたそうです。

岩本氏: 日本酒は海外で一大ブームの様相を呈していますし、和食や日本酒の波及効果というのが大きい。

山田氏: パリやロシアなど各地へ和食のデモンストレーションに行ってはります。

岩本氏: 器も日本から持ち込まれるのですか?

山田氏: ある程度はそうだったそうです。自分たちの器を持ち込んで。

岩本氏: 器までも含めて和食が振る舞われることで、器にとってはまさに実質的な広がりになりますね。

山田氏: 海外は健康志向で日本人はすごく長寿だからって和食ブームですから、そうした広がりもありますし、またあの賛否両論あるミシュランもね。
岩本氏: 山田さんご自身はミシュラン京都についてどう思われていらっしゃいますか?

山田氏: 知り合いの有名なお店では断っていますと言うところもあります。いろいろ意見もあるのはありますけど、ここまできたらサクセスですね。

岩本氏: 宣伝効果はやはり、かなりあるでしょうし。

岩本氏: 和洋中、相対的に見て日本ほどクオリティが高くて、美味しいものを提供してくれる国など他にはないわけです。

東京なんかはミシュランの好評価は素直に受け止めてということでしょうが、京都としても日本全体として盛り上がればよいという感じでしょうか。

山田氏: 世界遺産登録も同じで基本的に良いんじゃないでしょうか。風が良い方向に吹いてくれているのは、それも含めてだと思いますしね。

2014/01/19


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