■ ADV(アドボカシー)な人々 #03

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■ ADV(アドボカシー)な人々 #03

フィーノ株式会社代表 鈴木孝枝 「いまのきもち」 vol.4

片岡氏: 言葉悪いけどホントに「バカか?」って思うような新卒が、以前はよくいたんですよ(笑)。さすがに最近はいないでしょうけど。(笑) 特技や趣味の欄に「人間観察」とか書く「おバカさん」がいたんですよ(笑) 学生なのに「人間観察」が特技って、どう評価すればいいんだよって。「どういう観察するの?」って聞けないじゃないですか、面接で。そんなのが以前はいたんだけど、最近は粒が揃って「優秀」で逆に差をつけにくい。でも「優秀」っていう言葉には皮肉の意味もあるじゃないですか。「優秀でもつまんない」みたいな(笑) 

鈴木氏: そうですね。『面接の達人』読んでるのなんてすぐ判りますから。そういうのではなく、いろんな経験をしてきてほしいということなんです。例えば営業職に応募してくるのだったら、バイトは営業をやっててよと思うんです。MRになりたいとか、医薬の営業をやりたいなら、バイトで薬局で販売してました、だけじゃなくて、ルート営業にもついて行かせてもらいましたとか。そういうちょっと先を見ることです。業界的に見て、そのバイトをやっていたんなら、うちの会社に欲しいなと思う人ってやっぱりいますから。本当若いうちの苦労は買ってでもしろですね。

片岡氏: そこが下手なんでしょうかね。そういう点が広い意味で経営者マインドなのかもしれませんね。

鈴木氏: 残念な話があって、ある有名大学の某スポーツ部の部長が相談に来て、どうしてもこの会社に入りたいから、受かる履歴書の書き方を教えてくれっていうんです。受かる書き方って何をもって私に質問してるの?と聞くと、とりあえず受かれば良いとしか考えていないんですね。昔だったら有名大学のスポーツ系で部長やってたとなれば。

片岡氏: どこでも入れるじゃないですか。

鈴木氏: 大学もずいぶんと育て方が変わってきているんだなという。育ってないなと感じましたね。その子が書いてきた文章を見ても上手に書いていないんですよ。それこそちょっと色があるような感じで。

片岡氏: ピント外れてる?

鈴木氏: まあ、趣味が「人間観察」とまでは書かないけど(笑) 「なんでこれ書いたの?」って聞いても自分の中でまとまっていないんですよね、自分がわかってないから。

片岡氏: 棚卸ができていない。

鈴木氏: ええ。積み重ねてきたものって、例えばスポーツでの結果だけを見るんじゃなくて、過程をどう表現できるかがすごく大事なんですけどね。彼はその後どうなったんだろう?(笑)

片岡氏: 意外と大企業で偉くなってるかも(笑)

鈴木氏: それはそれでいいんだけど(笑)
片岡氏: 女性の中の壁というか天井については?僕これ気になってるんですけど。

鈴木氏: 入口から話をすると、新卒の時点ではそんなに差はないと思っているんです。どちらかといえば女性の方が優秀だと言われてるぐらいですから。でもある程度いくと頭打ち、さまざまなライフプラン上のハザードになりうることが結構大きいですね。それに対する保障は企業によりますから。

片岡氏: ライフプラン上のハザードって、結婚・出産・育児。それに介護が入ってきたり。

鈴木氏: 正直、全員フラットにこのハザードがない、とは言えないでしょう?何があったときのフォローができているかというと、大手企業はしてると思うんですよ。もうこれ以上できないでしょうというぐらいやってるんです。どちらかというと利用する側の意識の問題だと思います。

片岡氏: 気を使って利用しきれていないってことですか?

鈴木氏: いえ、権利行使が強すぎるんです。

片岡氏: 逆ですか?

鈴木氏: 私はこういう状況なので短時間で帰りますとか。このあたり、女性特有のコミュニケーションで、チームワークを考えられない人もいるのが確か。これも日頃の積み重ねが効くので、人によってキャリア伸ばすならある程度のビジネスセンスが求められるのは仕方ないんですよ。

谷本氏: そうですよね。

鈴木氏: 男性と同じように時間を使ってキャリア伸ばすなら、自分本位の時短は無理なんです。じゃあどっちを取るかってすごく重要。60歳まで働くことを見据えるなら、もう少しゆっくりでも大丈夫と思えるかどうかですよね。

片岡氏: それさえも選択はできるということですね。

鈴木氏: 大手企業ならね。中小の経営者は育休も産休もありませんから(笑)北欧では国が面倒みるので、個別に企業が手厚い制度をつくってないんです。なので育休期間の給与補助はお給料の8割は確保されてたり。日本は出なかったりするじゃないですか。

片岡氏: それぐらいやらないとね。少子化対策は国策ですからね。
鈴木氏: ヨーロッパではちゃんと統計が出ていて、女性が20歳から働いて60歳まで継続勤務する間、3回子供を産んで、育休を1年づつ取ったとしても生涯的年収は高い。国としてもその方が税収もプラスとして出るんです。そうした統計が出ているにも関わらず、なかなか進まないのはなぜかというと、女性は中、男性は外といった日本的な習慣が男女ともにまだ残っていることもあるでしょうね。

北欧では約8割の女性が働いていて、専業主婦ってほぼいないんです。彼女たちにインタビューしてみると、資格持っていて、あれだけ勉強したから仕事をして当然だという人ともっと子供と一緒に遊びたかったけれど、働かないといけない国だから働くという人とのざっくりわけて二種類なんです。

片岡氏: 子供と触れ合いたいけど働かなくてはいけないというのは、世帯収入の意味で働かなくちゃいけないんですか?そうでなくて国の雰囲気として専業主婦ということがありえない空気なんですか?

鈴木氏: ありえない空気、の方ですね。

片岡氏:「全員が働くべし!」って感じなんですね。

鈴木氏: 働く義務という社会の考えを共通してすごく強く持ってるんです。

片岡氏: 働いてお金稼いで税金を払って、それが社会の一員だという。

鈴木氏: そうです。何をして働くかという仕事を選択できますから。今まで銀行員でバリバリやってたけど、近くのパン屋で働きたいとなれば、パン職人の資格を取る勉強ができたり。転職が自由にできることも理由としてあります。

谷本氏: 北欧は女性に限らず国民の幸福度が高いですよね。そう考えたら日本の170何位って。せめていろんな福祉、特に育児に関してはナニーを安く雇えるとか、そういったことを手厚くできればまだ良いんですけどね。そこから働くか専業主婦かを選べるといいですね。

鈴木氏: 日本の女性も働きたい人は結構多いと思うんですよ。

谷本氏: 多いと思いますね。

片岡氏: 働きたいけど働けない。個別の事情もいろいろだけど。
鈴木氏: 全部取りはそうそうできないと思うんですよ。半日働くからお給料フルタイム分全部下さいというのも難しい。短時間ならこのぐらいで手打ちとか、ワークシェアリングといったものが増えてくればもっと楽だろうなと思うのが一つと、あと日本がこれまで走ってきた消費経済は変わると思っていて、自分の生活に必要なものを足ることを知るためにはどうすればいいかを考えていくことがこれからの働き方になると思います。

片岡氏: 運用コストみたいな。

鈴木氏: これがあれば最低ライン幸せだとか。そういうのがあると思うんですよね。

片岡氏: 銀座とかで食事して飲んで軽く酔う時あるじゃないですか。たまに家までタクシーで帰ると2000円ぐらいなんですよ。僕はそれで幸せって感じです(笑)

鈴木氏: わかります(笑)

片岡氏: それ以上の幸せって別に要らないかな。(笑) 高級外車が待ってなくても別にいいけど、ハイって手を挙げてタクシーで2000円で帰れるぐらいが僕には丁度良いんです。毎日じゃないですけどね。いつも地下鉄で帰ってるんですけど(笑) ところが、今日はタクシーでっていう時にこれがなかなか捕まらない。そうすると腹立つんですけどね(笑) なんて日本は貧しい国なんだと(笑) 

2014/01/28


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