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■ CREATIVE #01

設計デザインと空間 vol.3

「定番」とは何か。
森田氏:ものを作るって考えると、「定番」というのってあるやん? 蝶番みたいな、ドアノブとか、昔からデザインが変わらないもの。

それが面白くないという人もいるし、安心する人もいる。でも、その「定番」も誰かが最初に作った。最初に作った人ってすごいと思う。

井戸氏:そのときは斬新だったやろね。

森田氏:そうそう。ぼくはなにか1個でもいいから定番を作りたいなと思う。

それって何かというと、「普通」なんやね。ずっと使うことによって次から「普通」になる。でも、最初に作った人は、定番を作ろうと思って作ってない。

じゃあなぜ、定番になったのかというと、やっぱり、使い心地、使い勝手が良いという愛された経緯があったわけで、誰かが売り込んだ訳でもない。

井戸氏:使う側が選んでる。

森田氏:そう選ばれてる。そこに「定番」には、深い知恵と力があるんだと思う。デザインってのは、作る方はめちゃくちゃ考えるんだけど、使う方は考えちゃいかん。使う方に考えさせるような負荷を与えるものはダメ。

勝手に使ってっていうのが一番良い。と、ぼくは思ってる。これは、こうなってああなって、こうなんですよと説明しなくても、良いモノだったら、引き継がれていく。

井戸氏:使う側に無理がない。なじんでるとういうことやな。

森田氏:美術館でも、こういう空間でも、居心地がいいなと思うだろうけれど、それって実は居心地良いですか?って聞かれて、初めて考えることだと思う。

「このラインとこのラインが黄金比になってるから美しい」と思える人って、そういないわけで、それは、解析してみると一つの形が見えてくるだけの話。

最も大事なことは、最初にふっとみた瞬間に、なんとなく気持ちいい、気分が言い、すわり心地が良いといったよさというものがある。

そこに説明を求められたときに、ちゃんと説明できるのがデザインで、アートはそこにアーティストの想いでつくるわけだから説明はいらない。

デザインは、作る人と使う人のことを想定してつくるんだけど、「あなたのために、このように考えたんですよ」と説明しないとわかってもらえないとしたら、そのデザインはなじんでいないということになる。

井戸氏:説明しなくても、こっちが思うような使い方や印象が伝わったら良いな。

森田氏:まあ、ボクはスケベ根性があって、ボクが死んでも残るものを作りたいなと思うだけなんだけどね。

井戸氏:それじゃ、ボクが定番つくろうかな。

森田氏:いやー、いくんですか? どうぞいってください(笑)
スタイルの違い
森田氏:ボクらはまだ駆け出しの頃から知り合ってるから、根本的なところって認めあってるってのはあるね。ものをつくることにおいて価値観は同じだから安心はある。

井戸さんは、ある時期、組織を作り、コミュニケートの中でやろうとシフトしたんだよね。ボクはやはり他人と相容れない部分や、譲るくらいなら辞めたほうがマシというところがあるけれど。

井戸氏:わがままやね。(笑)ある意味うらやましいけど。つくりたいものが同じで、着地点は同じだけど、作り方が違う。ボクはクライアントと一緒に考えましょうというパターン。そのやり方の違いが、チームで作ってるか一人で作るかなんだと思う。

森田氏:ボクは基本的にはイタコだと思ってる。話を聞いてて、いろんな情報を集約してみたら、降りてくるんやね。まあ「こんなん出ました」みたいな。だから、誰かがヘンに知識に拘って、こうだ、ああだ言ってきても、あまり気にしない。

井戸氏:ボクの環境はそうじゃないことが多いから、違うかな。話してみて、ちょっと違うなというのが判ることがある。

森田氏:その分ちゃんと説明するし、努力してるよね。スタイルは違うけど、互いに良いものをつくる自信もある。たまにええ仕事しとるなとジェラシーは感じるけど(笑)。やっぱりクライアントからしたら、どっちと話しやすいかやね。まあ、ボクは絶対に迎合しないけどね(笑)。
森田 ススム 
級建築士事務所 susumulab
代表
 
1956年 奈良県室生村生まれ。1983年 独立。設計事務所を設立。1985年 スケッチをしながら世界を放浪。1987年 帰国。設計活動再開。日本建築家協会(JIA)会員

susumulab
HP: http://susumulab.com/
井戸 正
株式会社A1・ID設計
代表取締役
 
1956年12月岡山県生まれ。1976年 東京デザイン研究所建築学科卒。受賞歴:1975年卒業展示会にて大阪市長賞受賞/1976年卒業展示会にて大阪市長賞受賞/2008年IKEA&建築家 住宅設計コンペ入賞

株式会社A1・ID設計
HP: http://www.a1-id.com/
撮影:菅野 勝男/取材:2011年11月

2011/11/11


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