■ BRANDING #08

HOME» ■ BRANDING #08 »顧客満足度指数で見るブランディング vol.3

■ BRANDING #08

顧客満足度指数で見るブランディング vol.3

ブランドエクイティにどう関与するか
陶山氏: 湯浅さんはこのJCSIから「ブランド」をどう見ておられますか?

湯浅氏:AとBが互いにイコールになるという必要充分条件だと考えています。 企業側が伝えたいメッセージがお客様に伝えられていて、お客様もちゃんとそのメッセージを受け取っているということではないかなと思います。

陶山氏: 特定の会社や商品やサービスに対してお客様が連想するイメージと企業側が伝えたい想いが一致することが高ければ高いほどブランドが高い、コミュニケーションがちゃんとできているということですね。

会社のロゴマークを見るだけで、その会社がどういう会社なのか、その会社の提供しているサービスや製品がどんなもので、あるいは品質や信用・信頼・安心がどうあるかとかが解る。その一番の要因が顧客満足度ではないかと。お客様が満足しているとロイヤリティも高くなる。

湯浅氏:この調査自体はお客様の評価なので、この企業に対してこういうイメージを抱いている、それに対して企業がどのくらい応えているか、というのがこのJCSIに出てくる数値なんだと思います。

陶山氏: ブランドは企業にとっても価値を持つ、同時に消費者にとっても価値を持っている。それがブランドの価値でありエクイティだ。とD.A.アーカー(ブランド論の世界的権威)が言っていますが、顧客満足度が消費者に対するブランドの価値を表す指標ではないかと考える。つまりブランド価値が高いということは、より顧客満足度が高い。

湯浅氏: イコールではないですね。

陶山氏: イコールではないですか(笑) まあ、財務的な価値だとか売上利益といった企業の財務指標は一つの指標であるんですが、とりあえずそれはおいといて、ブランド価値というのは、消費者によって価値を評価されるものである、そういう性質をもっている。その消費者による価値評価の中で、最も重要な指標が顧客満足と言っても良いですね。

ブランドは製品や会社以上のものであると。たとえば製品やサービスに満足すると、そこからプラスアルファの付加価値がブランドによって提供される。

たとえばホテル業だと、その企業のサービスは特にリッチな気分になるといったような、実際にサービスを受けた機能的な便益以上の、何かエモーショナルなものが得られる。

つまりブランド価値というのはブランド固有の価値であるというのが一つの考え方にあるんです。

湯浅氏:顧客満足調査の中に、そのブランドを選んだことがあなたにとって、良い選択だったかということと、あなたの生活を豊かにすることにどれだけ役立ってますかという質問もあります。

機能的な利益だけでない概念的なものは入っていますので、ブランド価値と満足度は近いものがあるのでしょうね。実際に顧客満足が高い百貨店となると、何が買えるかということをを抜きにして、そこに行くことが良いということなんですね。

陶山氏:お客様の心の中に抱いているイメージそのものなんですね。それはお客様にとって価値のあることで、この人もあの人も同じ店を利用しているというのが、同類意識つまり同じ階層なんだというステイタスを感じているんです。

湯浅氏:この顧客満足度はいろんな質問を包含した結果ですので単に100点か0点かという話ではないのですが、ただそれを利用するだけで満足しているという要素も入ってます。

陶山氏: ブランド戦略論やブランディングには、そういうリッチな気分になるとか、自分が一段高いステージに上がった気分になるといった、そこがブランドによってもたらされることが、いわゆるブランディングの究極のゴールになる。

じゃあブランドによってリッチな気分をもたらすのは何かとなると、価値というところに落とし込んで、そこで企業側がどうマネジメントできるか、影響力を及ぼすことができるかというところ。

またそれをどうブランドコミュニケーションできているか、そのためにはどんなメディアメッセージをを使ってるかとかの、トータルで考えるのブランド戦略、ブランディングの考え方になる。その中に重要な要素としてJCSIがはいってると。

湯浅氏: 完全にイコールではないんですけど、相関性は高いと思います。ブランド戦略自体はメーカーもサービスも関係なく、企業として取り組むべき課題だと。私ども協議会としては、調査だけでなく、サービス業全体の底上げということが目的でもありますので。

陶山氏:ブランドや顧客満足に対する考え方やがまだまだ浸透していない、それが経営にとってどういう意味があるのかが、まだ理解できない企業も多い。多くはまだアナログ的な考え方で、サービス業もまだまだ力技的勝負のなところがあって、あまりナレッジといったインテリジェントなスキルはあまり重要視されていない。それよりかは日々の足で稼ぐんだみたいなというところがありますね。

努力しなくても儲かるというのではもちろんないんですが、うまく努力をして企業経営成果に結びつくしかけを考える。もっと効果的有効な事業のありかた、ビジネスモデルをご提案することは、大企業だけでなく中堅中小企業にも求められていますから。ボトムというか基本線を踏まえた上で、そこから高みを目指すというビジョンをどう考えていくか、方向性をプレゼンテーションするといった役目でしょうね。

湯浅氏:これで絶対成功するというのであれば皆さん飛びつくでしょうが、そうではなく「落としてはいけない部分」という意味だけでも理解していただければと思います。
湯浅 勝浩
公益財団法人 日本生産性本部
サービス産業生産性協議会 課長
 
1973年生まれ。1996年~2000年 交通計画専門のコンサルティング会社に勤務。2001年に社会経済生産性本部(現 日本生産性本部)に入職。2011年までの10年間はコンサルティング部に所属し、中堅中小企業を対象とした経営コンサルティング、研修プロデュース業務に従事。2011年4月より現職。JCSIの開発・改善・実施・広報・企業支援などの業務を主に担当している

公益財団法人 日本生産性本部
HP: http://www.jpc-net.jp/

サービス産業生産性協議会
HP: http://www.service-js.jp/
陶山 計介
関西大学商学部教授

1950年 岡山県生まれ。京都大学大学院経済学研究科 博士後期課程単位取得。博士(経済学)。研究分野:ブランド・マーケティング。常に現場に目を据え、トヨタ、リクルート、JH、ハウス食品、イズミヤ、大阪府等多数の企業、各種団体の幹部研修も行い、産学交流を推進している。 文科省、経産省等の専門委員や大阪ブランドコミッティ・プロデューサー等、学外活動多数。英国エジンバラ大学マネジメントスクール 客員教授(2002年)
[学会・研究会活動] 日本商業学会前会長/日本広告学会元理事/日本広報学会元理事/一般社団法人 ブランド戦略研究所理事長

[主な著書・訳書] 『ブランド・エクイティ戦略』(共訳 ダイヤモンド社 1994年)/『ブランド優位の戦略』(共訳 ダイヤモンド社 1997年)/『バリュースペース戦略』(共訳 ダイヤモンド社 2004年)/『マーケティング戦略と需給斉合』(中央経済社 1993年)/『日本型ブランド優位戦略』(共訳 ダイヤモンド社 2000年)/『マーケティング・ネットワーク論』(共編著 有斐閣 2002年)/『大阪ブランド・ルネッサンス』(共著 ミネルヴァ書房 2006年)等

関西大学 陶山研究室
http://www2.itc.kansai-u.ac.jp/~suyama/

一般社団法人 ブランド戦略研究所
http://www.brand-si.com/
取材協力:一般社団法人 ブランド戦略研究所/取材:山部 香織/撮影:菅野 勝男/取材:2012年10月

■ BRANDING #08

powerdby