■ CREATIVE #04

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■ CREATIVE #04

ユーザー目線のデザイン vol.2

企業との温度差
南氏:デザインすることによって、クライアントの社員さんたちもハッピーになるというか、変わってくることってありますから、デザインって企業にとってもっと力になると思うんです。

でも実際は、中小企業とデザイナーとの出会いがうまくいっているとおもえない現実もありますね。顔も見ないで頼んでしまうような。

大野氏:企業側にしたら見えるものでなくちゃ判断できないと思うのでしょうし、デザイナーにとったら、見せるんだったらお金が発生するしで、そこに気持ちのすれ違いが発生しますからね。

南氏:デザイナーも、デザインのプロセスを企業側に伝えていないことって多いこともあると思うんです。

たとえばフォントを小さくするだけにしても、揃えるにしても、デザインには時間がかかるということを企業側は理解していないことが多い。デザイナー側もそこを伝えていくようにすれば良いのかなとおもってるんですけど。

大野氏:もともとデザイナーを使える会社って、ある程度の規模の企業なんですね。でも新たにデザインの力を採用したいという中小企業さんって、いままでデザイナーとのやりとりに慣れてないし、印刷屋さんくらいしか知らないことって多い。つまり、印刷屋さんとの違いがわかってもらえないことって多かったりします。

南氏:印刷屋さんと同じように考えられているということですか?

河田氏:印刷屋さん並みの価格で、ちょっと良いデザインしてもらえるという感覚ってあります。私たちはデザインに対価をいただくので、デザインをサービスするつもりはないんです。そこが頼んでくる側はわかんなくて高いとなるんですね。

南氏:印刷屋さんとのデザインとの違いって具体的には?

大野氏:印刷物に使ったデザインを買取ったというイメージなのかなと思いますね。カタログに創ったデザインを、他のパネルやちらしに勝手に流用してしまうという。

最初の意図しないところに使ってしまうって、そのデザイン自体が自分のものと思われているのかなと思います。

河田氏:デザインの価値というか理解の違いでしょうね。

南氏:なかなかデザインの価値って理解してもらい難い。

河田氏:見た目に良くなったなとか、売上が伸びたとか、ぱっとわかる結果が出れば、あとから理解もできてくるんでしょうが、それよりも入り口のところなんですね、難しいのは。

依頼を受ける段階での温度差を埋めていくのが難しい、おいおいわかってもらえるかなと、間口は小さいことからはじまって、こんな提案もできますよ、とすこしづつ広げていくことかなと思いますけどね。

大野氏:クライアントの要望を入れていくと、最初に考えたすっきりしたものから、だんだんゴチャっとしてくる。でもそれがクライアントの求めるものなら一番良いものだという思いと、最終的にユーザーが見たときに良いと思われるものが一番よいものかということに突き当たるんですが、そこから話し合って、最終的にユーザーが良いと思うものが売上に繋がるんですけどね。

南氏:いつもそこは迷いますね。クライアントさんの思いに何処で線を引くか。

以前、著名な先生の下で仕事していたんですが、「先生が言うなら」ということで、スッと決まるんですね。でも、ボクは自分が生活者として使いたいと思うものじゃないと出せない。

そういう理想の実践のために、木のバターナイフを作ってみたことあってね。柳(柳宗理)さんのバターナイフと一緒に食卓に出してみたんです。そしたら家内はやっぱり柳さんのを一番に使って、ボクのナイフはその次。まだ2軍なんです(笑)

大野氏:(笑)

河田氏:(笑)

南氏:そこに何が違うかって、やはり時間が違うと思うんですね。柳さんのモノの作り方って、同じものをものすごくたくさん作るんですよ。事務所の中に石膏の型がゴロゴロしてる。そしてどんどん自分の生活の中で使ってみる。いったんユーザーの目に置くことで客観視してるんですね。

河田氏:ユーザー目線を持つにはまず生活者として全うであるべきだと私は思ってるんです。普通にきちんと生活すること。

私も主婦をしているので、子供をきちんと育てたいし、ごはんもきちんと作って、しっかり食べて。普段の生活をすごく大事にしたいんですね。

その中でモノを見るからこそマニアックさも出てきて、さらに吟味されて、「生活者目線」というのが出来てくると思うんです。ちゃんと暮らしてるからこそできるデザインってある。

南氏:ああ、ボクは以前ちゃんと生活していなかったですね(笑)夜中まで仕事して、食事もそこそこで、家族ともすれ違いで。

大野氏:デザイナーはどうしてもそういう人って多いですよね(笑)

南氏:生活に使うものを作っているのに、生活がちゃんとできていない人間ができるわけないなと(笑)

河田氏:使ってもないものをデザインしろと言われたって、無責任なモノになると思いません?(笑)

南氏:知らないものを、なんとなくカッコいいデザインにしてみたって使えないです。やはり自分で使ってみて、経験の蓄積がないと信頼できない。

河田氏:長く使えるデザインじゃないかもしれないですね。

大野氏:でも知らないものを作るときって、たとえばおばあちゃんがはじめて使う感覚っていうのが解るっていうのもありますけどね。知っているものだと、こう使うのがあたりまえだと思い込んでいるけれど。

南氏:そういう目線で一緒に知っていくような、成長しながらデザインするということもありますね。知りもしないでカタチだけ整える「スタイリング」だけしても、それはデザインとは違うから。

2012/05/10


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