■ BRANDING #08

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■ BRANDING #08

顧客満足度指数で見るブランディング vol.1

顧客満足度指数で見るブランディング

今回のブランド対談は、一般社団法人 ブランド戦略研究所 理事長、関西大学の陶山計介教授と、公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会課長 湯浅 勝浩氏の対談です。内閣府行政庁所管の公益財団法人 日本生産性本部内において、2007年経済産業省の協力により設立されたサービス産業生産性協議会。こちらでは主に日本を代表する大企業を対象に、JCSI(日本版顧客満足度指数)という調査・分析を行っておられます。このJCSIから見て、真の顧客満足とは何かについて語っていただきました。
※JCSI(日本版顧客満足度指数)は約20年前にアメリカで開発されたACSI(The American Customer Satisfaction Index )を参考に独自に開発された調査モデル。統計的な収集方法による総計10万人以上の利用者からの回答をもとに、日本の幅広い産業をカバーした日本最大級の顧客満足度調査として、年間32業種・業態、約400企業・ブランド(2011年実績)の調査が実施されています。

※JCSIモデル構造は6つの項目を指数化した数値で構成されています。「顧客満足」利用して感じた満足の度合い/「顧客期待」利用者が事前に持っている印象や期待・予想/「知覚品質」実際にサービスを利用した際に感じる品質への評価/「知覚価値」利用者が感じる納得感・コストパフォーマンス/「クチコミ」利用したサービスを肯定的に人に伝えるかどうか/「ロイヤルティ」今後もそのサービスを利用し続けたいかの利用意向
顧客満足度指数とは
陶山氏:通常顧客満足というと、事前の期待も高く利用後の納得感も高いことが望ましいということになりますが、このモデルでは期待と利益との関数で指数が出る。

つまり事前の期待が低ければ低いほど、利用後の満足が高いと満足度指数が高い。逆に事前の期待が高くても、利用後の満足度が低いと満足度指数は低いということになりますね。そこはこのモデルでいろんな企業を測定されてどうですか?

湯浅氏:この顧客満足度指数を経営に活かし、戦略レベルまで落として活用していただくには、単にお客様が満足しているかいないかだけではなく、顧客満足の要因と結果が必要になります。

もともと他のいろんな調査を研究してきたのですが、アメリカにこういう調査モデルがあるということで日本版にアレンジして開発されましたが、大きな枠組みは同じです。

お客様の満足を得るというのは、まず事前の期待を得ることは間違いないんですが、そうすると次の期待度は少しづつ上がってくるんですね。ある企業さんの場合、過去に顧客満足度が高い数値を出していたんですが、ここ最近新しい取り組みをしていないとなると、ロイヤルティが下がってくる場合もあります。

陶山氏:顧客満足度も下がるんですか?

湯浅氏:やはり、少しづつ下がってきます。

陶山氏: 私はよくJ.D. パワーの顧客満足度調査を参考にするんですが、たとえば自動車業界だと、走りとか燃費といった機能的な次元と、かっこ良いとかスタイリングが良いといった情緒的な次元、また価格やランニングコスト、アフターサービスなど業界固有のいろんな評価尺度で大きく4つ位に分けて、トータルに各社がどのくらいの顧客満足を得たかを毎年発表されるんですが、そこである程度の「期待」や「品質価値」は出てきます。

ですが、お客様が事前に期待するというのは、その前に利用された経験に基づいて、「この企業のサービスはこういうものだ」という評価。その事前の期待を、「品質と価値」と「満足と価値」を分けて、トータルに顧客満足にどう影響するか。そこを問題意識として経営改善を目標とした経営指導やコンサルティングをされるという主旨なんですね。

湯浅氏: 仰るとおりです。

陶山氏: そのJCSIの狙いは、具体的に企業さんにどう受け止められているかですが、宣伝やプロモーションの際に、「日本生産性本部のJCSIで顧客満足度1位を獲得しました。」と結果的に表記するだけになっているのか。

それよりも企業内部で、何が評価されて評価されなかったのかを分析する際に、このJCSIの手法が良かったという声があると、(JCSIの)大きな優位点になると思うのですが。

湯浅氏: そうですね。業界の位置づけやレベルが同じであっても、ビジネスモデルの特徴によって全然評価が違うこともあります。飲食業界ですと、ファミリーレストランやファストフード、専門店といった大分類がありまして、そこで見ると実は安い回転寿司やハンバーグ専門店などが高く評価されていて、ファミリーレストランは、相対的に低いんですね。実際日常感としてファミリーレストランには、あまり行かなくなりましたからね。

陶山氏: ファミリーレストランといえば、何でも揃っているんだけど特長がない。あまり美味しくないといったイメージがありますね。今は専門店の時代になっていますから、焼肉なら焼肉専門店、うどんならうどん専門店と、外食産業自体がそうなっていますから。

湯浅氏:今のお客様は、何を食べに行くかという目的が明確になっていて、ファミリーレストランは昔の百貨店の大食堂のような位置づけになってしまって、知覚価値は下がり気味なんですね。まあまあの期待はしてもその対価は回転寿司やファストフードを比較すると高くないですね。やっぱりお客さんはそう思ってるんだという確認ができるということでしょうか。

陶山氏:顧客満足に影響を及ぼす要因は3つあって、期待価値と知覚品質と知覚価値という、「期待」と「コストパフォーマンス」の関数ですが、顧客満足が高いのにロイヤルティは低いのかなぜか。リピートするロイヤリティに繋がっていくにはどうしたらいいのか。そこは企業が知りたいところだと思いますが。

湯浅氏: このモデルのロイヤリティとは継続利用意向なんですね。たとえば鉄道でいうと、通勤電車で使っている電車だと、明日から違う電車を使うかといえば、使いたくても使えないということがあります。使うかもしれないという可能性ではなく、今後も続けて利用したいかという意向になります。

陶山氏:満足度が高いというのは、企業側からすると消費者の一つの態度レベルの指標で、それが実際のアクションになかなか結びつかない。

お客様に利用し続けていただくことと、利用されていない潜在的顧客をどうやって新規のお客様として利用していただくかという、トライアルとリピートが最終的な売上や利益という企業目標に繋がるので、そこが一番関心が高いのではないですか。

湯浅氏:顧客満足よりもクチコミやロイヤルティのほうが、実際の収益に繋がる指標としては重要かなと思われていまして、例えば1回利用して満足したけど、もう次は利用しないとなるともうそれっきり。企業としては新規のお客様を獲得することがもちろん大事なんですが、同じお客様に何度も利用いただいて、クチコミによって他人に推奨いただくことで新規のお客様を獲得することが重要ですから、実はこの部分が注目していただきたい指標かと思います。

 


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