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■ CREATIVE #09

ものづくりとデザイン~その狭間にあるもの vol.1

ものづくりとデザイン~その狭間にあるもの

今回はものづくり業とデザイナーとのコラボとして、数々の作品を生み出しておられる4人の方々の対談です。箱貼士としてメディアにも注目されている村上氏と、へら絞りという製造業の現場で、新たな作品の可能性を見出しておられる吉持氏。お二人によるものづくり側の視点と、デザインが持つ本質を追求しつつ、大学講師、現代美術作家として活躍されているアートディレクター芦谷氏、デザイナー浪本氏によるデザイナー側の視点。互いに違う世界でありながら、協働することの面白さと難しさ、またこれからのものづくりとデザインの方向性を語っていただきました。
村上氏:吉持さんとこって、よくデザイナーさんが来てますよね。それってお客さんとして来てはるんですよね。

吉持氏:いや、違う違う。

村上氏:違うんですか?

吉持氏:うん、体験してもらうために来てもらってる。

芦谷氏:思い出したんやけど昔、自動販売機のデザインでメッキしてもらうことがあって、ある人にメッキ工場を紹介してもらったんやけど、そこの職人に「誰に紹介されたんや。ウチは直接来られたら困るんや」って言われたことがある。

だから若い頃、僕の中では製造業って会いに行ったらあかんのやと思ってた時がありましたね。

村上氏:製造業は元々デザイナーとの繋がりって基本的にないですからね。だから、来てくれるな、というか見に来んといて、というのはありますよね。

芦谷氏:受注者と工場で、そこに違う人が入って来るのを嫌がるんやね。原価がバレるとかそういうのがあるみたいで。

吉持氏:僕と村上さんとこはもう、どなたが来てもOK。特にデザイナーさんが来てくれるのはホンマ大歓迎やけど。

村上氏:逆に見てくれって感じですね。これだけ手を掛けてるねんぞと(笑)やっぱり見せとかなあかんと思って。

吉持氏:デザイナーさんが来てくれることで、その感性が勉強になる。なんでもキチキチっとなってるモノが工業製品やけど、デザイナーさんとの仕事は工業製品じゃあかんのです。ここはこういう柔らかい線を出して、という話が出るから全然感性が違う。

浪本氏:それって図面にしたら一緒なんですけどね。図面ではここはこうって。

村上氏:アールがなんぼとか。

浪本氏:そうそう、曲線でというのは図面と一緒なんやけど、なんかそれとは違うイメージというか。

芦谷氏:触ってきもち良いとか。

浪本氏:そうそう、ちょっとなんかセクシーな感じとか(笑) そんな曖昧な具合って、やっぱり直接話ししないとわかれへんし。

芦谷氏:わかるわかる。印刷屋さんもね、たとえば黒の色が全然違ったりするね。

今でこそグラフィックのソフトに入力すればいいんやけど、昔は機械を回してたから、印刷屋さんの感覚によって全然違う。そのクセを知って、この人はこの写真やったらこうやってくれるかなって。

村上氏:それって相手は言えばわかるんですか?

芦谷氏:職人やからね。盛り方をもっと変えてみるわとか、赤みをもっと強くしよかとか。今はもうプリンターやけど、昔は版画に近いというか製版職人やったからね。直接話をしないとうまくいかなかったね。

吉持氏:僕らみたいにデザイナーさんと関わるって、ほんとにごくマレですよ。

村上氏:珍しいほうでしょうね。

吉持氏:そう。まだ珍しいねん。

芦谷氏:ヘラ絞りの職人さんとデザイナーが出会うなんてねえ。吉持さんに出会うまで、へら絞りっていう技術があることさえ知らんかったし。そんな技術があるんやと思って。

吉持氏:浪本さんが作ったコップをウチで飾ってるでしょ。それを見た人たちは単なるコップでなくて、全然違う感覚、違うモノとして見てくれるんです。

芦谷氏:道にある電気の傘やったら、傘にすぎないもんねえ。

吉持氏:そうそう。そこになんか物語が生まれるような。

村上氏:魂が入るみたいな感覚ですよね。

吉持氏:そうそう。それがぼくらにはすごい勉強になる。

芦谷氏:和風総本家やね(笑)

村上氏:ほんまや(笑)

吉持氏:工場で出来たモノはやっぱり工業製品なんです。でもこれから生き残っていこうと思ったらそれだけではあかん。というのがぼくの考え方。だからデザイナーさんの感性も理解したいんです。

木型を削ってる時にも、デザイナーさんにここをもうちょっとこう削って、あそこはこう削ってって言われても全然腹立たない。

でも他の職人にここ削って、あそこはこう削ってって言われたら、だんだん腹立ってくる(笑)僕はもうデザイナーさんの側に寄って行ってるんやろね。それが他から見たらちょっとおかしいのかな。

芦谷氏:珍しいタイプやと思いますよ(笑)

村上氏:僕と吉持さんはそれが普通なんやけど、そういう話はものづくり屋の立場からすると理解されないから、コイツらヘンってなるんです。

吉持氏:僕らと一緒にモノを作っていこうという姿勢のデザイナーさんやったら良いけど、ここがアカン、あれがアカンってマイナス思考の話ばかり言うデザイナーさんもいると、こっちのテンションも下がってくる。ものづくりの人間がデザイナーと関わるのを嫌うのはそこやと思うんです。

村上氏:文句ばっかり言われるからね。

吉持氏:そう。アカンアカンって修正ばかりじゃなくて、一緒に考えていこうという姿勢が大事。

村上氏:ものづくり側にも、デザイナーを受け入れる姿勢がなかったらできないでしょうね。

何よりも、ものづくりにデザインを入れたら、今まで自分達が作ってきたものに、もっと膨らみがでるということを知らないんです。

でもあまりに世界が違いすぎるから、簡単には受け入れにくいのは正直あるでしょうけど。

芦谷氏:実際にモノを作る現場から、何が生まれてくるかっていうね。それこそケンオクヤマみたいに、昔からある南部鉄を見て、これヨーロッパで売れるやんっていう発見があるじゃないですか。そういう出会いって大事なんちゃうかなって思うんやね。

村上氏: そう、お互いがもっと歩み寄ったら、ものすごく面白いモノが出来るんやないかなと思うんです。それに気付いてるものづくりの人間もデザイナーもほんとに少ない。

芦谷氏:そういう摺り合わせができるって、日本人の特異性だと思うんですよ。ウチは中国・上海で商品を作ってるんですけど、わかるやろ?ってことがわからへん(笑)

ちょっと数値化するのを飛ばしたら、めちゃくちゃにして返ってくる。なんとかならんの?って現地の経営者に聞いたら、アンタそれ考え方が逆やって言われた。

製造現場の人間が自分のニュアンスで、こっちのほうが良かれと考えるなんて、世界中で日本とドイツだけやと。普通は言われた指示通り作るのが製造現場なんやから、全部指示しないオマエが悪いと(笑)

でもなるほどなあ、そんなもんかなあと思ったね。逆にその日本の良さをもっと活かしていけたらなあと思うんやけどね。
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2013/02/05


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