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■ BRANDING #12
「食文化をクリエイトする」老舗外食ブランドのイノベーション vol.2
外食産業が目指すものとは

その一つに「冷凍のほうれんそうにはシャキシャキ感がない」と仰るんですね。でも今の冷凍のほうれんそうってほんとに美味しい。
文野氏: ええ。びっくりしますよね。
陶山氏: そこをどうわかってもらえるかですね。ある流通の方に伺うと、冷凍のハンバーグも、外食と同等な、或いはそれ以上の美味しさですよと。これがあればもうレストランに行く必要がないんじゃないかと仰ってましたね。
文野氏: ええ。だからこそ外食は、小さくてもエンターテイメント性を求められると思います。
陶山氏: やはり外食は難しいですか。
文野氏: ええ。外食はどういう価値を見出すべきなのか、というところですね。オーナーシェフや個店の場合は、ある意味(価値が)あるのでしょうが、チェーンとしての役割りですね。本来、外食に求められるのは、間違いなくエンターテイメント性ですから。どんな日常食を売っていても、新しい非日常というものを求められる。そこに何を提供できるかを、根本から考え直していかないといけないのでしょうね。
陶山氏: 最近話題の「俺の・・」シリーズのような業態では、コスト的には厳しくても、シェフが作って美味しさを提供して、しかもチェーン展開というスタイルですね。
文野氏: それもひとつの生き方でしょうね。

文野氏:今、セルフうどんが年間100店舗以上のスピードで伸び続けていますが、それが外食の実態なんです。そういうことで外食は反応していくんだというレベルなんですね。
つまり求められているものが非常に落ちている。あのオレシリーズも原価率75%で非常に価値のある商売なんですが、いわゆる「立ち食い」なんですね。
マクドナルドや我々の「大阪王将」が流行っていることも含めてですが、今の外食に対して求められている何かというのは、語弊もあるでしょうが、非常に程度の低いものなんです。はたしてこれで良いのかなと思うんですね。
陶山氏: セルフうどんのあの麺のコシ、味もそうですし三角巾を被ったおばちゃんがいて、そこで麺を茹でる。そのスタイルが今までのセルフうどんの概念を越えたんでしょうね。
基本的にセルフはセルフなんですけど、なにか突き抜けるものがポンと一つでもあれば、そこがウリになってお客様に評価されると。
文野氏: なによりもお安いですしね。だから受けているし、トレンドに合っているんだろうなとは思うんですけども、やはり冷静に考えれば「セルフ」なんですね。ですから昼には行くけど、やはり夜にはあまり行かれない。
外食というのは夜流行るということでないと。その空間で1時間半や2時間過ごせる業態が流行ることが、本来の豊かさの象徴だと思うんです。外食産業全体がもっとイノベーションを興していかないと、ますます中食化という大きなライフスタイルの流れを、逸すことができないんじゃないかと思いますね。
陶山氏:「大阪王将」というブランドで40年、中華の老舗として、その伝統に現代的なものをどうイノベーションされようと考えておられますか?

だけど本当にやらなければいけないのは、もっと新しいところ、たとえば朝やアイドルタイムのような時間帯などに、今までなかった便利さやスタイルを提供するといったことなんですね。それが本来の「食文化を通じて生活文化に貢献する」ということだと思うんです。
陶山氏:非日常性を感じながら、コミュニケーションと食を一体化する、それが外食の使命であり、ミッションですね。たとえば朝の時間帯を切り口にした場合、どういうお客様のニーズに対応するかとか、どんなライフスタイルの提案ができるかというと?
文野氏:朝の時間帯をしっかり獲った外食といえばコメダコーヒーですが、そのコメダコーヒーもやはり40年前からあるんです。だからスタイルとするとあまり変わっていない。名古屋ローカルを全国展開してるだけなんですね。朝の食事はその日のモチベーションを左右すると言いますから、そのきっかけになるような食文化。本来そういうところに対して半歩先の提案をすることが使命なんでしょうね。
陶山氏:時間軸やターゲット軸、あるいはファッションといったイメージ的なものもありますが、いろんな切り口から新しさを探していくことですね。
文野氏:大事なのは外食だけで括らないことだと思います。外食も中食も、同じ目線でフラットに物事を考えられる企業体質にすることが一番重要だと。今そこに向けて出発し始めていますので、今後は大きく変わってくるだろうと思います。
2013/03/20