■ CREATIVE #08

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■ CREATIVE #08

「けったいな仲間」が織り成す「ものづくり論」 vol.3

クライアントの無理難題。自分への落としかた
牧野氏:僕は悶々としながら食べます(笑)

河手氏: 僕は一度自分を落ち着かせようと忘れますね。一回無かったことにして、あとで冷静に見る。

次に備えて切り替えるためにも、客観的になっておかないといけないし。でも僕もやっぱり牧野さんみたいに食べるかな(笑)

鈴木氏: 私は「仕事に愛情を持って、お客さんが喜んでくれたら良い」って基本思ってるんですけど、自分が考えてやったことが、裏目になって返って来た時にはもう、キーッっとなって社内でグズグズ言ってます(笑)

で、さんざん悪態ついてから、「あっ、私は愛情、愛情。喜んでもらうためにやってるんやった」と思い出す(笑)

河手氏: 感情投げてつっ走るんや(笑)

中野氏:僕は自分の作品を創りますね。結局絵を書いたりモノを創ったりすることは同じなんだけど。

牧野氏:だから中野さん変わってるんだ(笑)あんな精巧なイラストを何時間も集中するんだから。そんなの普通できない。

河手氏: そこにエネルギーを全投入するんですか?

中野氏:そうそう。自分を100%出した作品を創ってストレス発散。

牧野氏:すごいなあ。僕は5秒くらいしか集中できない。

中野氏:創り出したら食べることも寝ることも忘れます(笑)

河手氏: すごいなあ・・・
仲間つくりとは
河手氏: なんだろうなあ。話題が合うってことかな。僕の知らないことを知ってる、教えてもらえることかな。牧野さんはそういう仲間つくりって上手そうですよね。

牧野氏:僕は心が狭いんで友達いないです(笑)気まぐれだし、テンションの上げ下げが激しいし、自分でコントロールできないし。

だからこの4人って稀有な存在ですね。なんかみんなに転がされている気がするんだけど心地良い。イライラしてる時はわかってくれるし(笑)

河手氏: あっいま牧野さん、話聞いてないなってわかりますもんね(笑)

鈴木氏: わかる、わかる(笑)

牧野氏:まあそういう意味でも居心地良いんですけどね。でもそれぞれの居心地の良さって違う。

中野さんの場合、僕と価値観が9割同じなので、僕が投げる寸前に球が来るのをわかってくれる。投げる前にもう「いいですねえ」と言ってくれる(笑)その代わり残り1割はもうすごく反発する。どうやって言いくるめてやろうかとムキになるし(笑)

他の2人はまた違うので、逆に何が返って来るかが楽しみですね。違う意見を排除するというより、違う目線で考えられるんですね。そんなそれぞれの関わり方が面白い。

鈴木氏: 実際この作品を作るときは、1時間以上機械が動いてるんですね。その間にモーターが焼けてしまうんじゃないかとか、こんなことしたら何千万もする機械が潰れてしまうんじゃないかって脂汗がでるくらい、機械を止めるまでドキドキしながら待ってるんです。

でもその裏で、こんなすごいことが和紙でもできるんやとか、こういうことに自分が関わってるって幸せやなあとかの両方の思いがあって、その天秤の中で楽しんでるというのもある。

作品への愛情だったり、お客様への想いというか。この作品ってそれぞれが一人で完結できることではないので、それぞれが自分の役割りをきちんと全うするというのがプロだと思うんです。その信頼は強いと思いますね。

牧野氏:皆それぞれの仕事の替わりは居るんですよ。僕の替わりもみんなの替わりも。それはみんな一緒じゃないですか。

でもその出っ張ったとこと、凹んだとこの組み合わせがちょうど良い感じで吊り合っている。もし誰かが出て違う人が替わりに入っても、凸凹部分が噛み合わなかったら続かないと思うんですよ。

そこは替わってから気付くんじゃなくて、今すでにみんなそれがわかってる。そんな気がするんです。そんな「けったいな仲間」かな(笑)

河手氏:凹凸の具合も一緒に変わってくると思うんです。みんなそれぞれにプロフェッショナルだから、まだ全然知らないことも持ってるし、話の内容もマニアックにもなる。それが「けったいな」ということになるんでしょうね。
河手 宏之
和紙演出士
 
1972年生まれ。大阪市出身 。関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科 社会人の学び直しプログラム課程。大阪商業大学 商経学部商学科卒。創業65年の和紙や小間紙を専門に取り扱う卸問屋、小野商店の三代目の後継予定者。「企業のブランディングを和紙で彩る」をコンセプトに、独自の和紙や紙製品作りの企画やデザイン、用途開発や顧客開発に従事。和紙関連のワークショップを企画・運営することも。

和紙商 小野商店
HP: http://www.onopapers.com/
牧野 博泰
グラフィックデザイナー
 
グラフィックデザイン制作会社・広告代理店制作部を経て、1990年にヴィジュアル計画マーレ設立。ポスターやDM、フライヤー、学校・会社案内などのデザイン制作に携わりつつ、企業・ブランドなどのシンボルマークやロゴタイプ、カリグラフィの企画・制作などにも力を入れている。

ヴィジュアル計画 マーレ
HP: http://visual-mare.com/
鈴木 美奈子
包装士
株式会社中野木型製作所
営業部企画室室長
 
トムソン抜きのパッケージ等、紙製品の抜き型製作会社 「商品の心を型にします」のコンセプトに基づき、物の大切さを重視し 単なる商品を包むだけの木型ではなく、優しくシンプルな包装を 目指す会社で営業と設計を担当。

株式会社中野木型製作所
HP: http://www.e-nakanokigata.cc/
中野 クニヒコ
イラストレーター
 
兵庫県出身。エアーブラシによるリアルイラストから、立体・オブジェ・フィギュアの原型制作、キャラクター制作、チーム体制での映像(クレイメーション)の制作。主な仕事として、博物館やイベントでの展示画や立体物、ディスプレイ、映像制作、図鑑・科学専門誌、ゲームのポスター、パッケージイラスト、CDジャケット等。 [受賞歴]1998年N・Y・3 ディメンショナル・イラストレーション・アワードに銅賞を受賞(ニューヨーク立体イラストレーション)/ 1999年同アワードにて銅賞受賞/2000年同アワードにて銅賞受賞/2000年World Festival of Art on Paper Kranj,2000(スロベニア)にて入賞/ 2001年World Festival of Art on Paper Kranj,2000(スロベニア)にて入賞/ 2002年(株)ボークス主催のコンテスト フルスクラッチ部門にて入賞/ 2003年ミケランジェロ没後440周年記念システィーナ近代美術賞受賞(イタリア)/ 2004年(株)ボークス主催のコンテスト フルスクラッチ部門にて銀賞受賞/ 2004年世界推薦作家特別大賞受賞(ギリシャ)/ 2004年米国批評家連盟批評家大賞受賞(アメリカ)/ 2004年The Second Biennial Dimensional Salon 入賞(N,Y)

HP: http://www5.ocn.ne.jp/~ideal-na/
撮影:菅野 勝男/取材:2012年11月

2012/11/14


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