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トレンドのネクストステージを探る vol.2

陶山氏: 建築にもモダンですっきりしたデザインがあるかとおもえば、クラシックで伝統的なデザインがあるというように、対極的として在るものがサイクルを描きながら出てくる。

十三氏:そうです。流れの予測というところではね。ただ急激に極端に対極なものが出てくるわけではなく、真ん中があるんです。例えばエレガンスがピークであったら次はエレガンスカジュアル。

それからカジュアルエレガンスになり最終的にエレガンスになるというね。少しづつ流れを経て次のものがピークを迎える。こういう現象というのがあるんです。

陶山氏: 食品などの商品ですと、プライベートブランドでロープライスなエコノミー商品と、ナショナルブランドで高級高価格という商品、といった両極だと解り易いんですけど、先ほどのカジュアルエレガンスやエレガンスカジュアルという中間となると、そのポジショニングは難しいですね。

次のステージとして中間にトレンドを新しさを感じさせるためには、どういうアイデアや準備をするのですか?

十三氏:基本的な考え方ではテイスト・マインド・グレードの3つがありますが、マトリクスでポジショニングを考えると、テイストの横軸にエレガンスとカジュアル。それと今重要なのは、ファストファッションなのかラグジュアリーなのか、あるいはその中間なのかといったグレードの縦軸。

この4つの箱の中で、今どの部分にいてどこを追いかけなければいけないかという、非常に解り易いセグメンテーションができます。基本的にそうしたことを常にやりながら、次の新しい市場にどういうものを提供して、どう特化して大きくしていくか、というのが今一番問われていることだと思います。

陶山氏:従来のものと差別化して、マーケットのサイズを大きくしていくためには、やはりブランディングのコミュニケーションが重要になってくるかと思いますが、その巧拙というか、どこに差が出てくるのかになりますね。

メーカーなどで見れば年間1万点の新しい商品が出ても、そのうちヒットするのは10%の確立だと言われています。小売ストアの棚に並んでも、1週間から3週間で消えてしまうという短くて激しいライフスタイルで、さらに成功確率がどんどん落ちてきているんですね。

ファッション分野のブランディングで成功するには、どのようなことが重要ですか?

十三氏: 例えばファストファッションのZARAの例では、次々にあれだけの規模のヒット商品を上げていくために、どのように考えてデザインを生み出し、どのような仕掛けをしているかに視点をあててみますと、実に普通のことをやっているんですね。

陶山氏:普通のことというと ?

十三氏:デザイナーであろうがMDであろうが、とにかく都会の中で多くの人が集まる場所に行くんです。要は今見たその瞬間のトレンドをキャッチさせる。まずはその空気感ですね。そこの集まる人たちがどんな気分で、どんなものを楽しく着ているかということを観察するんです。それを自分の目で見て五感で感じる。

そこで「これが旬だ」と肌で感じたものをデザインに落とすという、極々普通のことを非常に大切にしているんです。このネット社会の中でありながら。これには「えっ」と驚かされましたね。

陶山氏:メーカーの場合も、商品開発における発見の目というヒット商品の源泉は、ラボラトリーにではなく広く社会の中、あるいは人々の在り様の中、または心の中にあると言われますが、そういうことですね。

十三氏: ええ。人の心の中にあるんですね。

陶山氏:じゃあそれをどう見つけだして、そこにデザイナーのセンスやテイストをうまくコラボレーションして、トレンドのネクストステージにどう持って行くか。マインドとテクニックの両方を磨いていかなければいけませんね。

十三氏:基本的にはそういうことだと思います。今業界のリーダーシップを握っているのは小売なんですね。小売はやはり顧客。常に顧客のブレを見て対話をし、顧客ニーズをしっかり把握しています。今の消費者のモノを買うポイントは、欲しいと思う「動機」なんですね。

モノが欲しくてモノを買う人は昔に比べて非常に減っています。では何でモノを買うかというと「コト」。つまり「関心事」なんですね。コトがあって、だからこれが欲しいということが大半なんです。

ということは、今までものづくりのために考えてきた軸の中にプラスして、生活の関心事という軸をプラスしていかないといけないと思うんですね。

こんな人がこんな関心事を持っている。そこでどんなモノを欲しがっているか。じゃあ我々はどんなモノを提供できるかということが非常に重要なんです。新しい商業施設の売り場作りにおいても、モノからコトというのが一番大きなコンセプトになってきています。

そしてもうひとつがエンタテイメント。機能性という面ではもうある程度進化してきていますから、それプラスやはりエンタテイメントというのが重要な要素であるということですね、

先般、建て替えでリニューアルオープンした百貨店も、劇場型と呼ばれるエンタテイメント性を大きくプラスされました。昔は特別な日に着る「ヨソ行き」という買い方をしていましたが、今はそんな時代ではなく全てが日常。でもその日常の中にも「ハレ」と「ケ」がある。生活の中のエンタテイメントですね。こうした日常の中におけるハレとケの関心事。これをどう切っていくかというのがとても大きいですね。

 

2013/01/15


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