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トレンドのネクストステージを探る vol.3

陶山氏:最近高級アイスクリームのメーカーさんとお話する機会があったんですが、アイスクリームというのは日常的な食品だけど、高級アイスクリームというのは自分へのごほうびだと。「ハレ」の日とまではないけれど日常の中にちょっとしたアクセントをつけるというような商品なんだそうですね。

それはアイスクリームに限らず例えばコンビニのスィーツも同じ。そういう意味では食べること・着ること・住むことで見るとやはり、日常的なことと非日常的なことが繋がってきているように思いますね。

十三氏:若い子に聞いた面白い話ですけど、Tシャツって基本的には日常のものじゃないですか。でも今の若い人たちはその中でも「こういう時にはこれを着る」という「勝負Tシャツ」というものがあるというんですね(笑) 

そうした日常の中にも小さな「ハレ」と「ケ」があって、それを洋服だけでなくそれこそいろんな生活のまわりのモノをちゃんと分けてるんです。面白い現象だなと思うんですけど、それが当たり前になってきているんですね。

陶山氏:本来ファッションというのはトレンドセッターとしての役割りを果たしていますからね。百貨店などの小売業は「モノ」ではなく「コト」あるいは「エンタテイメント性」を提供する場で、いわゆる「百貨を揃えて商品を売る商業施設」ではないと。20年ほど前ですがセゾングループの堤さんが、商業施設は総合生活型の産業であり、ライフスタイルをどうトータルな形で提案するかだと仰ってました。

十三氏: 基本的には誰にどんなものを提供するか。時代がどうかわろうといろんなお客様がいるわけで、やはりその時代にあったターゲット分類を、どうやっていくかということが常に重要ですね。

グレード感のどこを厚くすれば良いかは、そのターゲットによって違ってきますから、メインターゲットとする人たちが満足するブランド導入であったり、エンタテイメントといった仕掛けを考える。これはどこの商業施設も同じでないかと思います。

陶山氏:エスモードさんはデザイナーやパタンナーなどのスキルとナレッジを磨く教育をされていますが、ファッションビジネスやファッションブランドに関わる人材という点ではどのように育成されていますか?

十三氏:生徒が1年生に入った時、一番最初に伝えていることですが、卒業するまでの三年間で絶対にきちんとゲットして欲しいのは、自分の世界感をどう作り上げるかということです。

それに伴いやはり何を創るにしても何を考えるにしても、自分だけのコンセプトを、どれだけきちんと作り上げられるかが一番重要になります。

それができないと自分の世界感を築くことができませんから、コンセプトの重要性は、ものを創造する以前の問題として我々が指導していることです。それが繋がって始めて創作やものづくりの進化に繋がっていくという、一番大切なことだと思っています。

ただコンセプトと言っても、それを見つけるために何処から持ってくるかがもう一つの課題なんですね。

これは別に洋服の知識だけではなくて、芸術であったり音楽だったり、それこそ衣食住全てなんですね。世の中の気分ということも含めていろんなところから。

でもこれは五感を磨かないとだめなんですよ。その五感を磨くためにはやはり美味しいものを食べたり、良いものを見たり、良い音楽を聴いたりということなんです。別にお金の問題ではなく、我々はそういったことをすごく大切にしています。それからもうひとつは国際性。それぞれの国の考え方や伝統なども勉強し、インターナショナルの感覚を持つということも非常に重視しています。

陶山氏:日本人が何をしようとしているかを知るためには、やはり国際的なインサイトを知らなければ。つまりローカルなことを知るためにはグローバルを知らないといけないということですね。自分たち日本人のエッセンスを極めるというか。

十三氏: やはり木を見て森を見ずでは全体がわからないですからね。ここ最近あらためて言われていることですが、やはり重要なのは現場力なんですね。

五感で感じる市場の旬というものをどのように捉えてどのように発信していくか。それが最終的には顧客満足に繋がっていく。ファッションのブランド戦略として一番需要なことは現場力。それと専門性ではないかと思います。
十三 千鶴
エスモードジャポン
大阪校 ディレクター
 
㈱阪急百貨店マーチャンダイジング推進部チーフコーディネーター、顧問コーディネーターを歴任。エスモードジャポン大阪校講師、各種ファッション関係セミナーの講師として活躍。㈱TCカンパニー代表取締役

エスモードジャポン
HP: http://www.esmodjapon.co.jp/
陶山 計介
関西大学商学部教授

1950年 岡山県生まれ。京都大学大学院経済学研究科 博士後期課程単位取得。博士(経済学)。研究分野:ブランド・マーケティング。常に現場に目を据え、トヨタ、リクルート、JH、ハウス食品、イズミヤ、大阪府等多数の企業、各種団体の幹部研修も行い、産学交流を推進している。 文科省、経産省等の専門委員や大阪ブランドコミッティ・プロデューサー等、学外活動多数。英国エジンバラ大学マネジメントスクール 客員教授(2002年)
[学会・研究会活動] 日本商業学会前会長/日本広告学会元理事/日本広報学会元理事/一般社団法人 ブランド戦略研究所理事長

[主な著書・訳書] 『ブランド・エクイティ戦略』(共訳 ダイヤモンド社 1994年)/『ブランド優位の戦略』(共訳 ダイヤモンド社 1997年)/『バリュースペース戦略』(共訳 ダイヤモンド社 2004年)/『マーケティング戦略と需給斉合』(中央経済社 1993年)/『日本型ブランド優位戦略』(共訳 ダイヤモンド社 2000年)/『マーケティング・ネットワーク論』(共編著 有斐閣 2002年)/『大阪ブランド・ルネッサンス』(共著 ミネルヴァ書房 2006年)等

関西大学 陶山研究室
http://www2.itc.kansai-u.ac.jp/~suyama/

一般社団法人 ブランド戦略研究所
http://www.brand-si.com/
取材協力:一般社団法人 ブランド戦略研究所/取材:山部 香織/撮影:菅野 勝男/取材:2013年01月

2013/01/15


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