■ MANAGEMENT #07

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■ MANAGEMENT #07

セキュリティ業界を女性目線で変える vol.2

京師氏: 個人情報って求めている側からすると「宝」なんです。医療機関のカルテには高額取引される情報も含まれていますし、飲食や美容業界、何にしても必要とする側の価値があるから持ち出そうとする。最近の手が凝っているものだと、企業に直接侵入すると不法侵入で犯罪になりますから、出入り業者を使う場合も。そこまでする価値があるんですね。

小橋氏: 手っ取り早い小遣い稼ぎになってしまうんですね。

京師氏: そうなんです。個人情報は1人あたり1万円ほどで取引されていると聞きますから、100人だといったい・・という感じで。例えば今一般の方がお金を借りる際、金融機関は審査できますが、年収や住居など幅広い情報がカンタンに閲覧できるんですね。でもそもそもどこからその情報が出てきているのかというと、やはり誰かが売っているから。知らないうちに情報が売られているんです。

小橋氏: でもそのリスクを認識していても、費用となると別問題ですよね。

京師氏: そうなんです。リスク対策は、何も起らなければマイナスという認識なんですね。逆に何か起きた場合、お得になるコストだと思うんですが。よくパソコンにセキュリティソフトを入れてるから大丈夫だと言う方もおられますけど、私ですらパソコンを起動させるログインのパスワードくらいならすぐ突破できます。

金融機関などのサイトで使われているログインパスワードも簡単にわかってしまいます。それをプロとしている人になると、どれだけ瞬殺で入れるか。情報というものはたくさん漏れていると考えていただいても良いので、企業は個人よりももっとセキュリティにお金をかけていただかないといけないですね。そこにお金をかけることで、企業としての社会的責任を果たせると思うんですけれど。
小橋氏: CSRという言葉でも、それなに?という中小企業はまだまだ多いですよ。

京師氏: モノやサービスを売るだけじゃなくて、企業として何を目指してるのかを伝えていくことの一つに、お客様の情報を守るという姿勢を打ち出していただかないと。

小橋氏: 「公」の基準が日本の場合、あいまいで明確じゃないんですね。正しいことを守りましょうと言っても、その正しい基準が何なのか解らない。コンプライアンスの基準でも、何を守るのかあいまいなところが問題ですね。

京師氏: 日本人は人より先になにかをやるという意識が低くて、周りの様子を見てから、皆で一緒に歩んでいこうというようなところがありますね。逆に先行く人はちょっとヘンだとか、大丈夫?ってクエスチョンをつけてしまったり。

周りがやっているかいないかと、基準を置くところが低いんです。時代を先行く企業になろうと思えば、周りがやってなくても自社だけは取り入れていくことで、やはりあの会社は違うなと、逆にお客様から信用を得られると思うんです。

小橋氏: 今の日本人の危機意識をどんな風に見ておられます?

京師氏: 日本人の防犯に対する意識もここ最近やや高まってきていて、内閣府の調査でも約8割の国民がなんらかの不安を持ってるという調書が出ているんです。かといって何かしているかというと、ほとんどの方は何もしてらっしゃらないと思うんですね。

日本は海外に比べてまだまだ安心ですよね。銃が日常的にあるわけでもないですし。今すぐ殺される危機にさらされていることも少ない。でもだからといって安心できる状態でもない。人よりちょっと何かするだけでも助かるし、何もしないと被害にあう確率が高い。つまりは確率論なんです。

小橋氏: 確率論でもいつ何が起るか誰にもわからないんですけどね。
京師氏: そうなんです。いつ自分に順番が廻って来るかという話です。個人宅にしても、お隣がカギ1つだったら、自分のところは2つつける。店舗でも隣の店に防犯カメラが無ければ、自分の店にはつける。盗られるものなんて何も無いから、とよく聞くんですけど、どの基準で仰っているのでしょうか?と思うんですね。高価なものは置いてないかもしれないけど、一番大事なものは命ですから。万が一家族や従業員に何かあればいったいどうするのでしょう。

小橋氏: リスクというのは意識しないとリスクじゃないんですね。私はタバコをやめたんですけど、タバコは体にリスクがあるという理解はあっても、それが自分にとってどの程度のリスクなのかという認識がなければ、タバコは吸い続けていたかもしれない。それも確率論で、自分にとって何パーセントの確立でガンになるかという数値的に理解するということが重要で、いくら寝ている子に危険ですよと話をしていても意味が無いのと同じなんですよね。

京師氏: そうですね。100%絶対はないにしても、少しでも安全に近づけるということが大切なので、なぜ必要なのか、またそれによって何を得るのかだと思うんですね。

小橋氏: ある大学教授によると、日本人はゼロリスク症候群で、安全に対して100%の安全を求める傾向がある。つまりリスクが無いことが良いことだという感覚を持っているそうです。でもゼロリスクなんてどこにも無いんですね。人の価値観によって違う安心と違って、安全という基準を明確にしなければいけないですね。企業のリスクマネジメントと個人のセキュリティとは次元が違うのかもしれないですれど、結果、損害が発生することは同じなので、まだまだ啓蒙活動は必要でしょうね。

京師氏: 事件が起きてから動くのは警察の仕事。警察が表稼業だったら、私達の業界はどちらかというと裏稼業なので(笑)どうしてもとっつきにくいイメージがあるんです。そこはお洒落でさわやかなイメージをモットーに変えていきたいですね。
京師 美佳
防犯アドバイザー
セキュア・アーキテクト代表

商社の営業職を経て2001年3月錠前師資格取得後、セキュリティ企業へ就職。法人営業部の責任者を務める中、2002年10月防犯設備士取得。その後、防犯ガラスメーカーにてセキュリティ事業部長就任。防犯アドバイザーとして防犯診断や電話での相談受付、セミナーなど、幅広く活動を行う。2005年5月京師美佳セキュア・アーキテクト設立。2009年11月一般社団法人全国住宅等防犯設備技術適正評価監視機構理事に就任。現在も、講演、テレビ・新聞・雑誌など、多方面で防犯の啓蒙活動を展開中。専門:住居・ビル・店舗の防犯対策、街頭犯罪対策、ネット関連の防犯対策、盗聴・盗撮対策、ストーカー対策、学校・子供の防犯対策、医療機関の防犯対策など

HP: http://www.kyoshimika.com/
小橋 壽也
経営コンサルタント
有限会社グッドウィル
代表取締役

1959年生れ、高知県出身。幼児教育出版会社、広告企画制作会社、都市開発シンクタンク、経営コンサルタント会社を経て、平成5年にグッドウィル経営研究所を創業。様々な経験を活かし、創業・起業支援、ベンチャー支援、第二創業・経営革新支援、企業再生支援など企業の成長戦略や変革プロジェクトのコンサルティング実績がある。専門分野は、CI計画・経営戦略・新規事業開発、営業戦略・マーケティング戦略・ブランド戦略・販売促進分野、リスクマネジメントまで幅広い対応ができるゼネラルコンサルタントである。 関わった会社は、従業員1人の個人企業から上場企業まで、多種多様。 「儲かる経営」を信条に、ベンチャー・中小企業の「経営参謀」として活躍中。「クールで大胆、ホットで繊細」を基本にした、現場主義のコンサルティングには定評がある。平成14年、技術開発ベンチャー企業の設立に参画するなど、ベンチャー企業の育成に力を入れ、資金調達や組織作り、マーケティング戦略の指導にあたっている。社団法人大阪能率協会・登録コンサルタント(経営革新支援室・委員)/社団法人日本経営協会・客員講師/関西IT百撰アドバイザー/大阪府中小企業再生協議会・支援専門家/起業支援「ドリームゲート」アドバイザー(経済産業省・後援)

有限会社グッドウィル
HP: http://www.goodwill-net.co.jp/
FB:toshiya.kobashi
取材:2013年6月
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2013/06/25


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