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哲学から見る現代社会の「議論」 vol.2

堀氏:日常的にコンフリクトのある社会文化の中で揉まれると、鍛えられますよね。日本社会はその点、少々温室的な環境です…。それが一概に悪いとは言えないんですけれどもね。

岩本氏:それが国内の議論であれば、まだなんとかなるかもしれないのですけれど、そこに海外からの視点がどうしても絡んできますから、そこで自分の殻の中に入り込んで、甘いところだけ見てしまっていたら、これはやっぱり外交も通商もできなくなってしまうと思うのです。

堀氏:相手に良い顔したいんですよ。外国人と話す時に日本人はいつも愛想笑いしてしまう。あれは何なのかね(笑)

岩本氏:私は外国人の上司と対峙しても、愛想笑いする余裕はありませんでしたけれど(笑)

堀氏:ビジネスの関係に愛想笑いなんて通用しないですよ。根本をもう少し掘り下げると、日本人の人間関係の中に、そういう風に関係を作る仕組みがあるんですね。

例えば日本の人称代名詞で言うと、子供が産まれると夫婦でありながらご主人のことを「おとうさん」と呼んだり、舅にあたる人を自分の祖父でもないのに「おじいさん」と呼んだりしますよね。その最たる例が、小さな男の子に「ボク」って話かけるでしょう?こんな呼び方、英語でも、何語でも、考えられない。相手に一人称単数形で呼ぶんですよ、「ボク」って。(笑)

岩本氏:確かにそうですね(笑)

堀氏:これはいったい何なのか。相手と1対1で面と向かうことが避けられてるのだと思うんです。或いは面と向かわないようにできている。つまり家族という自分を含む、グループ全体で相手との関係を計っている。パーンと1対1でぶつからない。家族の中でも夫婦間でママとかパパとか言っているのは、子供の視点から見てるわけで、夫婦が1対1で相対していないんです。
岩本氏:私の父が母に向かってママ、ママと言うので、いつも母が「私はあなたのママじゃない」って必ず言っていたのを思い出しました(笑)

堀氏:お母様はモダンなセンスを持ってらっしゃるんです(笑)でもそれが一概に悪いのではなくて、それをベースにしてもいいけれど、たわめていくというか、ある程度個人尊重へと持っていかないと、早い話が民主主義もできないだろうと思いますね。

そうなると日本の伝統を裏切るんじゃないかと言う人もいるけれど、とにかく相手とまず輪を作れるかという心配が常にありますから、グループの一員でない人と遭遇するとどうしていいかわからない。それで愛想笑いになってしまう。逆に言うと、グループの外の人に対しては信頼感の薄い社会なのかもしれませんね。

岩本氏:そんな気もしますね。

堀氏:意見が違うことを恐れてしまう。そこに複雑な日本特有の人間関係がある。でもこれがまたすぐ短絡して、だから日本人はダメなんだとう言うことになるんですが、そうではなく事実がどうなってるのかを冷静に把握する事が先決じゃないかと思いますね。

岩本氏:そうですね。良い悪いではなくて、そういう人なんだということが事実だから、じゃあどうしましょうかという次なる展開ですよね。今は皆、なんとなくここら辺でゴニョゴニョ言ってるだけで終わってしまう。これだと進化しにくいですね。
 
堀氏:私自身もね、苛立つと結構憤慨する方なんです(笑)

岩本氏:そうですか(笑)そのようにはお見受けしないですけれど。

堀氏:憤慨するんです(笑)憤慨が先に立つと知性を失う。つまり倫理的な要請を優先させがちなんですね。それだと、客観的事実を知るのが先決だという知的な姿勢を失いかねない。
岩本氏:先ほど先生が仰っていた討論番組も、結局皆さん憤慨したことを直情的にお話をされていて、そこでおしまいになる。あの姿が議論だと思っている人が多い気がするんです。

堀氏:そうですね。一方では全くそれを表さないNHKのようなところもありますが。

岩本氏:ええ。だから本当の意味での議論とはどういうものかというロールモデルを、多くの日本人は見たことないのかなと。

堀氏:そうです。見ていないということは大きいですね。

岩本氏:例えばアメリカ大統領選の党首討論会を見ていても、典型的な海外の議論の方法だと思うのですが、それが良い悪いではなく、あの人たちはああいうスタイルの議論をする人たちなんだと。

堀氏:そうですね。彼らにも問題もありますけどね。レトリックやパフォーマンスで乗り越えようとするような。

岩本氏:ええ。またそこの部分を含めても、受け手側の姿勢のようなものがあると思うんですね。議論とは何かというような。

堀氏:そうですね。ありますね。

岩本氏:例えば私と先生の意見が、ものすごく相反することであっても、たぶん私は先生と議論できますし永遠に語れますけれど、それが不愉快だと思わないと思うんです。でも個人攻撃に終わってしまうような議論には参加したくないですね。

堀氏:意見に反対すると人間を攻撃するかのように思う人もいますからね。

2013/11/19


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