■ INNOVATION #02

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■ INNOVATION #02

組織内部からのイノベーション vol.2

コミットメントの難しさ
川崎氏:僕たちのスタンスって、社長は理解が深いけれど社員が気がつかない場合と、逆に社員は気がついているけれど社長が違う方向に行ってることってある。

後者の場合、社長と対峙しないといけない場面ってあるんだけど、村川さんの場合はどうされてますか?

村川氏:あるある。ここはまさに大い語りたいとこなんだけど(笑)

我々は経営者の意思決定によって依頼があるわけで、経営者と目的をコミットすることが前提ですね。

でもいざ入ってみると経営者がずれていくって場合は少ないですが、意外とある。そうなると再度コミットするために真剣に対峙しますね。

川崎氏:それって、一緒に飲みながらってされます?

村川氏:私はあんまりクライアントと飲みにいかないです。飲めないってものあるけど(笑)

経営者とのコミットが崩れてきた場合、まず現場から先に変えてみようとチャレンジすることもあるんですね。現場を変えるのって得意なんだけど、コミットができてない場合、時には経営者からストップかかることもありますね。

最終的には経営者だから、そんな場合はもうこれ以上はってお断りしますね。結果出せないから。川崎さんはどうしてる?

川崎氏:企業の経営者って規模が大きくなると、経営者業に徹することができるけど、院長って、特に開業医の皆様は病院が流行れば流行るほど、自身が医師としての仕事が増えてくるんですね。

そうなるともう、マネジメントとか財務まで手が回らない。しかも特別な医療技術が必要な施設では、院長本人のスタンスを変えることは不可能に近いんです。

今の開業医の先生方って、自分の医療をしたいからとか、止む無く親のあとを継いでって人がほとんどだから、経営者としてのスタンスを持って運営している人ってとても少ない。

だから「経営者としてこうあるべきですよ」という話は、ゆっくり食事しながらや飲みながらになるんです。 そこで院長の夢や人生観や家族のことを聞きながら、その中にあるべき姿とかを伝えたり、先の目標を一緒に作っていくしかないんですね。

村川氏:医療経営の土俵はどうしても「医療」の現場だから、そこの場所を変えて話することも必要なんですね。

川崎氏:ぼくもそこになかなか踏み込めなかったんですね。医師という方々は、大学を卒業していきなり「先生」になるから、何の実績もなく、社会人としての人格形成をする時間もなく、いきなり別格扱いになってしまう。

さらにスタッフからも業者さんからも一目置かれる存在になってしまうので、自分の中に切り込んでくる人ってなかなかいないし経験もない。

だけど、僕たちの立場って、そうした中に切り込んでいかないと、信頼は勝ち得ないし、本質的な改善ができない。遠慮せずに入っていく必要があるんですね。

時々「なんであんたにそんなこといわれなくちゃいけないんだ」とか、「あんたに何がわかるんだ」とか、激怒されることもありますけどね(笑)

村川氏:相手がつっこんでもらいたくないところにこそ、本質ってあることが多いわけで、傷口に単に絆創膏を貼りますってだけではなくて、膿みを抉り出すことからスタートしましょうだから、切り込んで行くことって絶対重要ですね。

コンサルって2つのタイプがあって、一つは相手が望むものを形にするのが得意なサポート型コンサルで、もう一つはチェンジマネジメント型。

変えるっていうのは戦略だけじゃない。変革にブレーキになって一番ネックなのは実は組織なのであって、そこを変えなければいけない。

組織って実はどろどろしてて人の価値観がうねっているわけで、そんな中に手をつっこむって本来はかなり苦しい。当人同士だとぶつかりあうし、お互いに角が立つから、第三者が入るのが一番スピーティに変われる。

川崎氏:ほとんどの先生たちは基本、自分に自信を持ってるんです。でも自分が正しいかを確認する機会がない。しかも院長って立場から自分の困っているところや弱さって絶対人に見せられないんですね。

だからこそ対話の中で、気にしていることは何か、武装して完璧を見せていても本当は何を知りたいかを聞き出す必要があるんです。

村川氏:中小企業の経営者は立場上のプライドというより、たたき上げが多いからか戦うことを前提としているので、医療系よりもコミットし易いかもしれないですね。でも中には改革の主導権を経営者自身が握りたいといった場合、そのタイミングや手法の価値観が擦れ合ったりすることはありますね。 2代目とか。

それでも現場で改革の主旨を理解できる内部リーダーをできるだけ早期に作り上げることがポイントになってくるから、経営者そのものというよりは、リーダーがあとの結果をきちんと引き受けられるようになれけば改革はほとんど成功しています。

川崎氏:野村監督の「エースと四番がいれば、チームは機能する」という言葉のように、エースがいたり、軸になる四番がいると組織は機能し易いけれど、その人がどういう軸になるかが大きく影響すると思いますね

村川氏:軸になる四番がすでに存在すればいいんだけど、トップがいて現場がフラットな組織が結構多いんですね。その中からリーダーをどう探すか、誰を軸にするか。

そんな場合、一旦私が現場のリーダー役になって、次のリーダーと一緒に現場で改革の渦をつくりだすパターンが多いですね。

川崎氏:現場にリーダーがいない場合って医療の現場にも多いです。院長はじめ、事務長に看護師、それぞれが専門職であるがゆえに全体をまとめるのって難しい。しかも院長が男性なのに対してあとのスタッフが圧倒的に女性が多い。

こうした特殊な組織は一般のマネジメントは通用しにくい現状があるし、院長自身がまとめ役になるのは非常に難しいんですね。

村川氏:そういう意味では、医療業界にコンサルタントって必要性は大きいね。

川崎氏:第三者性って、企業であったり病院であってもやはり必要だと思うんですね。組織の運営の仕方や継続の仕方ってだんだん高度になってきてるから、中の人間だけで、思い込みで動かすことが危険になってくる。第三者の中立な意見や見方を取り入れていくことで、組織はいつも健康状態を健全に保てるんじゃないかと思う。

村川氏:我々の役割って何かと考えると、知識なんて本やネットで情報が溢れているわけで、経験や知識ってあって当然だけど、第三者的な目線が唯一、もっとも意味があるんじゃないかと思う。

川崎氏:第三者性にも、「客観的第三者性」と「主観的第三者性」があるけれど、私たちの立場って「主観的第三者性」が必要で、客観的に「こうしたほうが良いんじゃないですか」というのではなくて、「自分が院長だったらこの問題をどう解決するだろうか」とか「この決断をして本当に良いのだろうか」とかを主観的に考えることが必要だと思う。それが今、本当に必要とされるコンサルタントなんじゃないかな。

村川氏:コンサルというと、どうも押し付けのイメージがあるようだけど、やはり一緒に考えていくって大事だと思うし、特に今必要とされているのは、そういうプロセスだよね。

2011/12/09


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