■ MANAGEMENT #04

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■ MANAGEMENT #04

商標と特許の知財マネジメント vol.3

今後の知財マネジメント
松下氏:特許の場合、思い入れは強いが、ビジネス性に弱い。商標の場合は、ビジネス性が先行して思い入れが弱い。といった傾向があると思う。

技術者が、こんな技術があれば良いなと思って作ったとしても、ビジネスにならないこともある。この事業全体として、ここでこういう特許とったらこの事業はいけるという観点に立ってほしいね。

これまで僕たち弁理士は、技術者側に立って特許を取ることだけを考えてきたけれど、これからの立ち位置は、経営陣と技術者との間に入ってその事業を三者の共同作業として考えなくてはいけない。そうでないと、(特許を)取る意味がない。

鶴本氏:従来の特許ってどっちかというと、自己満足というか、名誉的なレッテルのために取られることが多かったですからね。

松下氏:部品メーカーだったら、その部品自体に特許をとって性能的にライバル部品メーカに優位に立とうとするのが普通だよね。でも、完成品における位置づけでて他の部品との関連性で、より利便性を上げていく提案をし、そこに特許を絡めてしまえば、完成品メーカーは他に頼めないという使い方もできる。

鶴本氏:そういう売り込みもアリですね。

松下氏:そう。経営者が特許をとっても儲からなかったという話が多い。それは役に立つ特許を取ってなかったから。

最初に将来どう役に立つかどうかを考えて、使い方も含めて特許をとらなければ意味がないよね。

今は特許の使い方もどんどん変わってきている。以前は、自分の競合先に対して権利行使するためだけで取っていたけれど、今は他社とうまくアライアンスを組むための武器として使うことが増えてるね。

鶴本氏:商標の場合、商品やサービスへの思い入れをいかに商標に入れるかが大事と思います。その際、商標を採択するときに外部の使い方もポイントになりますね。

例えば、「その商標、商品やサービスのコンセプト等とちょっとズレてるよね」ということになった場合や思い入れのあるのだけれども先行商標が存在しているといった場合等、うまく僕たち外部の専門家を活用して欲しいですね。

また、クライアントがどうやって売っていけばいいか等で悩んでいることがありますが、マーケティングの面からも、実際に使うお客さんにアンケートをとってみるのがいいと思うんですよ。自分の良さってよくわからないもので 自分が気づかないところを気に入ってくれているかもしれない。

強みをあらわすのに、この名前でいいのか、思いはちゃんと伝わっているのかの検証にもなる。でも、まず営業も含めて、社内でちゃんとその商品やサービスに対する思い等は意志通観してほしいですね。

社内で作り手と売り手が違う場合、やっぱり現場でも売りたいと思わないものは売れない。こだわってやるんだったら、消費者、需要者だけでなく、しっかり内部にも思いを伝えることですね。

ところで最後ということで、一つ質問です。この仕事をしていて何が一番うれしいですか?

松下氏:特許や商標があったから、こんなビジネスができましたと、事業との関連で結果がでることが、一番うれしいよね。
鶴本 祥文
弁理士
古谷国際特許事務所

1975年9月 徳島生まれ。大阪大学法学部法学科卒 。[得意とする分野]内外国商標・意匠出願、不正競争防止法を含む知的財産権法務、知的財産価値評価 [主な活動]日本弁理士会/知的財産価値評価推進センター副センター長/日本商標協会 ブランド価値評価方式作成特別委員会委員/関西大学大学院商学研究科 非常勤講師(商標・意匠・不正競争防止法他)/日本商標協会 ブランド・マネジメント委員会委員 [所属学会、会員]日本商標協会/日本知財学会/ブランド戦略研究会/関西特許研究会 [主な著作・論文]2007年10月『知財経営戦略と知財価値評価』パテント、共著/2008年3月『知って得するソフトウエア特許・著作権(五訂版)』アスキー出版、共著/2008年10月『商標の類否判断における取引実情』企業と発明 2009年3月/『不使用取消審判における「社会通念上同一の商標」』パテント、共著
ブログ:http://www.furutani.co.jp/tsurumoto/
松下 正
弁理士
古谷国際特許事務所

1958年10月 神戸生まれ。立教大学法学部卒。[得意とする分野]ソフトウエア・ビジネスモデル特許出願、侵害訴訟、コンピュータプログラムの著作権 [主な活動]平成19年度日本弁理士会 ソフトウエア委員会委員長/関西大学大学院商学研究科非常勤講師(特許法・著作権法) [所属学会、会員] 日本ライセンス協会/著作権情報センター/ソフトウェア情報センター(SOFTiC)/ソフトウエア著作権協会(ACCS)/アジア弁理士協会日本部会コピーライト委員会(APAA) [主な著作・論文]2008年3月『知って得するソフトウエア特許・著作権(五訂版)』アスキー出版/2009年10月『知っておきたいソフトウェア特許関連判決(その17)』パテント誌2009年11月号

古谷国際特許事務所
HP: http://www.furutani.jp/
FB: tadashi.matsushita
撮影:菅野 勝男/取材:2011年12月

2011/12/09


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