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■ MANAGEMENT #04

商標と特許の知財マネジメント vol.1

商標と特許の知財マネジメント

今回は同じ特許事務所で働く二人の弁理士、松下正氏と鶴本祥文氏の対談です。商標と特許、それぞれにご専門は異なりますが、従来の「権利取得」に特化したこれまでの弁理士業務から、クライアントの事業展開を視野に入れた総合的なコンサルティングへと、企業のニーズに合わせたサポートに力を注いでおられます。クライアントへのアプローチや手法の違いから、より強力なビジネスパートナーとしての弁理士視点を語っていただきました。
特許と商標~知財マネジメントの違い
松下氏:僕は特許がメインで、鶴本君は商標を主にやってるよね。知財マネジメントの面から見て、特許と商標ってどう違うと思う?

鶴本氏:知財マネジメントの面からの違いというといきなり難しいので、先ずはクライアントさんの違いから話しますね。

商標のクライアントさんって、あまり知財に慣れていない方が比較的多いかもしれないですね。専門知識を持ち合わせていないというか。なので、専門用語はあまり使わないようにはしています。

松下氏:たとえば、どんな用語だったりする?

鶴本氏:たとえば「類似する」という法的に大事な概念もいろいろ難しいので、「似ているか似ていないか」といったカンタンな言葉に替えたりしています。

松下氏:アプローチの違いとかは?

鶴本氏:楽しさの度合いは違うような気がします。特許の場合は「こんなものを発明しました!」って持ってこられますね。アイデアを考えた人は、それを聞いて欲しいっていう思いがすごく強くて、周りも「それってすごいなあー」ってなるから、こちらも楽しくなります。

松下氏:特許って、発明者からすると、まるで自分の子供みたいなものなんだろうね。

鶴本氏:自分の分身でしょうね。

松下氏:そうそう。だから、「こんな良いものを発明したから、なんとか特許取れませんか?」と言われる。逆に言うと思い入れが強すぎることも往々にしてある。

鶴本氏:そうですね。だから、「これは他にもありそうだから、ちょっと(特許は)取りにくいですね」というと、めちゃくちゃ落胆されますね。

松下氏:そうだね。そんな場合、「(特許が取れるか取れないか)あなたが決めるのですか?」と言われてしまうことがある。自分や自分の子供を否定された気持ちになるんだろうね。

そうじゃなくて、「私はあなたの話をじっくり聞いて、審査官に伝えるけれど、こういう理由で拒絶された時に反論できる点を探しだしたいので細かな点までお聞きしているんです」って言うようにしている。どちらかと言うと、クライアントとは同じ立場で、審査官と対決するという姿勢だね。

鶴本氏:なるほど。そうでない場合の反応って?

松下氏:その人の中で「弁理士にダメと言われた」だけが残る。発明への思いが強いゆえにそういう反応になってしまう。

内容的には審査官と同じことを言うんだけど、クライアントの立場に立っていかないと、顧客満足度は低くなるね。

鶴本氏:それって、昔からしてました?

松下氏:正直、最初はできなかったね。一般論としてだろうけれど、「弁理士の先生が、ちゃんと話を聞いてくれなかった」と聞くことがあって、ああ、自分もそう思われていたかなと。それからだね。商標はそんなことってない?

鶴本氏:例えば、商標が登録できるかのポイントである似ているか似ていないかということって、人の感覚的な話ですからね。元々商標は一般消費者に見せることを想定されている対象なので、自分の分身というより、客観的に考えられるのかもしれませんね。

松下氏:「ちょっと難しいですね」と言ってもそんなに否定された感はない?

鶴本氏:あまりないでしょうね。似てるか間違うかというのは誰が判断するかというと、消費者ですから。

松下氏:それでも、クライアントから「似てるかもしれないけど、これぐらいは区別されるんじゃないのか?」って言われたらどう説得する?

鶴本氏:その時は具体例を出します。ボクはクライアントの話を聞いてるから客観性に欠けるので、第三者に聞き込み調査したりします。100%じゃないけどこういう意見もありますよとか。

松下氏:ときどき「どう思います?」っていろいろ持ってくるのがそれね?

鶴本氏:そうです。一般人の感覚で聞いて見るのはよくやりますね。僕の個人的な見解じゃなくて、こういう傾向があるからと持っていくんです

松下氏:なるほど、そういうことだったんだ

 

2011/12/09


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