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■ CREATIVE #06
時代の潮流をつかむ視点 vol.2
時代を超えた先のトレンドを掴む

佐野氏:大阪で208坪のスタジオを作ったのが7年前で、それに味を占めて奈良でさらに大きいスタジオを作ろうとしてたんです。図面も書いて見積もりもして。そのころですね、社長に知り合ったのは。
佐戸川氏:関西で根を張ってやろうとしてたのね。
佐野氏:ええ、でもなんか違うなと思ってたんです。「東京進出を考えてるんです」って社長に何気なく言ってみたら「おいでよ」って言われて。あの一言で決めましたね。
佐戸川氏:結構無責任に言うけどね、俺(笑)
佐野氏:それは後でわかりましたけど(笑)タイミングですかね。ああ、やっぱりここ(奈良)じゃないなと。それで東京進出を決めたんです。
でも実際に東京に出てみたら、1,2年はほとんど仕事がなかったですね。本当にキツかった。
佐戸川氏:東京ってやっぱり最も激戦区なわけじゃない。その激戦区に出てきて最初の頃、スタジオ作ったよね。あれ長くなかったね。
佐野氏:2年くらいで辞めました。恥ずかしい話ですけど、当時は周りの関係者に「これから東京でたくさん仕事来るからよろしく」なんて言って回ってたんですね。するとみんな「はあ?」って顔するんです。
なんでそんな顔するのかわからなかったんですけど、でも東京なら絶対仕事は来るって思い込んでましたね。それから1,2年ずっと営業に回ってたんですけど、ぜんぜん仕事って来ないんだってわかりました。
佐戸川氏:来ないよね(笑)
佐野氏:で、みんなが笑っていた理由がやっとわかりましたね。バカにしてたんだなと。そんな甘くねえよ。ということだったんですね。じゃあどうしたらいいんだろうと真剣に考えましたね。
佐戸川氏:みんな笑うなら、俺は最後に笑ってやるぜと?(笑)

ぼくはカメラマン辞めたら何にもないですから、何かアイデアを出さないといけない。そこで合成やCDといろいろやってみたり、新しくスタジオを作ってみたり。
佐戸川氏:どうもあのHAPのスタジオ(港区にある佐野氏のスタジオ)はうちの最初のスタジオに似てるよね。
佐野氏:はい、真似しました。
佐戸川氏:まあ、うちはデザイン事務所だから、当然のことながら新しいデザインをあのスタジオで発表したんだけど、それを見て、これからはこういうトレンドなんだという空気を捉えたんでしょ?
佐野氏:ええ。パクりました。
佐戸川氏:あーいいよねえ(笑)。パクんなくちゃだめだね(笑)やっぱりみんな聖人君子じゃないんだから、世の中こういう風に動いているにも拘わらず、俺は違うんだと言ってもしょうがないからね。
素直に「これはいけるかもしれない」と感性で捕らえたら自分でやってみる。それが正解かもね。俺もそういう意味では貢献してるんだね(笑)
佐野氏:ええ、あの場所にお客さんがどんどん来てるって、何なんだろうと思いましたね。
佐戸川氏:僕の仕事の大半、少なくともインテリアデザインというのは、人間が生活する環境や道具全てを対象としてるわけで、たとえば家だったりオフィスだったり、あるいはホテルだったりレストランだったりと、全部が僕のデザインの対象なんだよね。
全部が対象になるってことは、そこに関連する仕事をしている人たちがだんだん同質化してくるんだ。一つのデザインがあって、それをパクる人がいて、それをまたパクる人もいて。そうやって影響しあって、一つの方向が埋まってくる。それで時代の流れを作るってことになる。
でも僕らはクリエーターだから、またそれを超えたことをやらなくてはいけない。時代を超えた先の方向性とかトレンドを発表しなければいけない。それを示唆することで我々の職業が成立すると思ってるんだ。
佐野氏:トレンドの情報って必要ですね。大阪と東京って、情報量が桁違いに違うんですね。仕事に追われてると情報を収集している時間がない。僕はカメラマンを辞めたときに、経営者として情報を収集して吸収することが一番重要だと思いましたね。

それに集中していくよりも、「写真」の周辺事業をするという視点に、実はビジネスセンスがあったんじゃない?
今までのものに関連して新しいビジネスを構築するって経営革命だよね。
佐野氏:写真業界で成功してる例が二つありましてね、1つは本格的プロフェッショナルなBtoBで、もう1つはBtoCのポートレート業者なんですね。でも両者は写真のクオリティが全く違う。
この間に存在する我々ができることは何かと考えて、良いインテリアのなかでクオリティの高いポートレート撮影をやってみたいと思ってたんです。
そこにこのスタジオに出会って。ちょうどタイミングがマッチングしたんですね。スタジオ業とポートレート業を絶対ここでやってやろうと思いましたね。
佐戸川氏:思い立ったらすぐやっちゃうんだもんねえ(笑)。やりたいと思ったことをタイミングが来たら一気にやっちゃう。でもその決断力だよね。
今なにかと決められない人が多い。やるのかやらないのかグズグズしてなかなか決めない。それがさ、ズバッと決められる人ってすごく魅力的なわけよ。
今の経営者って考えすぎちゃう。じゃなくて「感性で行動せよ」とぼくは言いたいんだ。人間ってそんなに考えて考えて考えたからって、良い結果が出るとはかぎらない。今の時代、全ての情報が一瞬に入ってくるんだから、スパッとひらめいたことをやればいいんだよ。
佐野氏:そうですね。このスタジオをやったのもひらめきですね。理屈を考えてたらできなかった。
佐戸川氏:ひらめくって、なにも突然に出てくるわけじゃないんだ。いままでいろんなことが全て蓄積されて、温存されてきたものが、ある瞬間に開くことがひらめきなんだ。
だから成熟社会になればなるほど、そういひらめきで動くようになると思う。でも、そこで決めなきゃいけないのに、決めないヤツが結構多いんだ。
佐野氏:なんで決められないんでしょうね。
佐戸川氏:周りを気にするからだよ。周りから見た自分を気にする。だから決断する作業が弱ってくる。決断が長引くと絶対結果が悪くなる。
佐野氏:でも実際、失敗って少なくないですよね。
佐戸川氏:そうさ。でも失敗の数じゃない。失敗することを恐れたり、人がどう思うかなんて考えるからダメなんだよ。どうせ人に見られてるんだから、人に迷惑をかけること以外は自分で解決できるんだから。
2012/07/04