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■ FINANCIAL #03

逆発想で安心を増やす投資とは vol.2

「つみたて投資」世界の背景
仲川氏:「ドルコスト平均法」の反論として、例えば日本の株価は1989年の12月末に日経平均株価が史上最高値38,915円という値がついてから、今では7,000-8,000円。ずっと下がってきていますね。

そこでいくら小分けして安く買っていても、こうずっと下がっていると結局損になるじゃないかと言われますが、「つみたて投資」でも、やはり効果は無かったのですか?

星野氏:そうではないですね。日経平均株価が38,915円の頃から、ずっと「つみたて投資」していた場合、途中でなんと9回も黒字化している時期がありました。

仲川氏:9回も? ずっと値下がりしているのになぜ黒字化するんですか?

星野氏:日経平均株価が下がってくると、たくさんの量を買えますから、値段が元に戻らなかったとしても、ある一定のところまで上がれば黒字化するんですね。

仲川氏:つまり、ずっと価格が下落する過程の中で、毎月同じ額を買い続けることによって、買える「数量」が増えてくる。下がれば下がるほど全体の買付平均コストも下がる。

株価は一直線にずっとさがりっぱなしでなくて、下がって上がって下がって上がってと、反発局面が何回かありますから、その過程の中で平均買付コストを上回ってプラスになることが発生するということですね。

星野氏:ええ。瞬間といっても1989年末からずっと「つみたて投資」した場合も、途中で30%くらいの利益を出ている期間もありました。

仲川氏:ほんとですか。それってすごいことですね。もし、1989年に一時金でまとめて買って持ち続けていたとしたらプラスになる機会って1回もなかったわけですから・・・。

そういう人は途中で売ってしまって、もう投資は辞めているかもしれませんけれど、「つみたて投資」している人は、ずっと下がっている中でも、30%も利益が出る局面があったり、9回もプラスになる場面があったんですね。途中で損せずに辞めるチャンスが9回もあったということにもなりますね。

星野氏:そうです。1990年頃の投資信託の残高で見ると、日本は約60兆円、アメリカはドル100円で換算すると、約100兆円。それが20年後にどうなったかというと、日本はほぼ横ばいであまり変わっていませんが、アメリカは10倍の1000兆を超えています。

なぜそれだけ差が開いてしまったかの要因のひとつに、アメリカの株価が4倍近く上がって、日本は3分の1に下がったということがあります。

日本はこの20年下落しか経験していませんから、投資に対するネガティブイメージを持っていますし、値が下がることのアレルギーが浸透してしまっているんですね。だからこそ「つみたて投資」の特徴は日本人に受け入れやすいんでしょうね。

仲川氏:株価の値上がり、値下がりだけが、1,000兆円と60兆円の差になったんですか?他の要因はなにがありますか?

星野氏:やはりアメリカの場合、投資家が確実に増えていることですね。それはまさに確定拠出年金401KとかIRA(インディビジュアル・リタイアメント・アカウント)等の投資制度によって増えたということが背景にあります。

仲川氏:投資を行いやすいような制度を国が備えているということですね。

星野氏:アメリカの場合、日本のように社会保障も充実していませんし、グリーンスパンFRB議長による、地方銀行が一気に潰れてしまうような政策もあってと、より自己責任色を強めていった時期でしたから、そこを境にアメリカのミューチュアルファンド、投資信託の保有世帯数は90年から一気に増え、現在では9000万人くらいに増えています。それはまさに401KやIRAつまり「つみたて投資」が浸透したということですね。

面白いのは2000年末、アメリカのICIという投資信託協会が行った投資家の意識調査では、アメリカ人はサブプライムショックが起きても、リーマンショックが起きても、投資に対してすごくポジティブなマインドを持ってるんです。

仲川氏:ポジティブっていうと?

星野氏:約80%以上の人が投資に対して自信があると回答しています。日本は全然ですけれど。

仲川氏:そりゃ、これだけ長期間継続して下がってると日本人は自信持てないですよね(笑)。

でもアメリカの人も、リーマンショックやサブプラムショックでは、かなりの方が痛手を負ったでしょうし、401Kにしてもちょうど出口だったの人たちが、私達の年金はどうなるのって報道されていましたよね。

星野氏:ええ。痛手といっても瞬間的だったんですけどね。当時1年間だけ下がりましたけど、また翌年にはもどっています。

たしかにあの瞬間に当たってしまった人たちは気の毒でしたが、ちょうどアメリカも日本の団塊の世代とほぼ被りますが、ベビーブーマー世代が退職してきますから、これからなんですよ。

仲川氏:「値下がりが怖くない」ってキーワードですね。値動きが上がったり下がったりすることに過敏に意識しなくてもいいということは、本に書かれている「値下がり安心効果」なんですね。

星野氏:私たちは損にものすごく敏感で、人間の脳は「利益」に対して2倍から2.5倍くらい「損」に敏感であると。

仲川氏:「プロスペクト理論」ですね。

星野氏:ええ、ダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞をとった理論で、人間は50%50%で儲かるのか損するのか判らないことはやりたくない。その上、日本人はずっと値下がりの嫌な経験をしてきていますから、だからこそ「値下がり安心効果」を一番先に提唱しています。

 

2012/09/13


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