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関西アートシーン~ツムテンカクの世界 interview

―――この「ツムテンカク」は、ご自身たちの作品を出す場を作るために始まったと伺いました。最初から地域活性化活動を目的にされていなかったのですか?
山田氏:今も地域活性って謳ってないよね(笑)

皿田氏:今回、企画書にも「場づくり」という文言を入れています。最初はそういう「地域活性」という大義名分が要るんだろうなと思ってたんですが、だけどやればやるほど、おかしな事をしなくちゃいけなくなって。

本来これって本当に要るの?って皆で会議で話し合った結果、要らないということになりました。僕たちがしたいのは「場つくり」であって、その中に地域の人達に入ってもらえれば活性になるだろうと。

今回僕はイベントの協賛担当なんですが、協賛資料の中にもしっかり「場をつくるために応援したい企業さまの協賛をお願いします」と書いています。社会貢献的な部分もありますけど、それは一番最後の記載になっています。

クリエイティブなところに意識があって、応援したいという企業さんもおられます。でも僕らはイベントにモノを出すだけじゃなくて、形になってビジネスとして結びつくことが目的ですから、企業とマッチングさせることをウェイト置くように考えています。
―――いろんなジャンルもあって、あれもこれもあるから参加できる、という「場」なのですか?
山田氏:「あれもこれもあるよ」というより「あれもこれも無いよ」ですね。無いから何でも持ってきても大丈夫なんです。

皿田氏:東京には個人でも出せる場があります。例えば個人で個展をやっても人は来るけど、大阪だと誰も来ない。何かを仕掛けても、どこで誰がやってるかわからない。

知らない人は全く知らないということが大阪にはあって、情報伝達はとにかくゆるい。そこで僕らは関わる人を増やしてコミュニティで伝達することによって人を集めるという方法をとっていこうとしています。
―――お皿1枚しか用意しないというのは、出したいモノがあれば自分で出し方を考える、ということなんですね?
皿田氏:そうです。通常の枠があって、この何mから何mの中に何かを出しませんか?というのは、クリエーターズマーケットのような、小さなモノを作ってる人だけの「場」なので、自分を発表したいという人の「場」となると、こちらでサイズを決められないんです。

堤氏:戸惑う人も多いです(笑)

皿田氏:サイズの提示ってないの?ってよく聞かれます。でもここに出したいと思う人は、そこまでに積み上げてきたモノがちゃんとあるはずで、既成の枠の中に納まるようではダメなんです。場に負けてしまいますから。
―――出展者の審査はあるのですか?
皿田氏:審査はありません。審査しなくてもなかなか山には登れない。やっぱり険しい山なんです。場所は僕らが交渉して無料にしていただきますし、広報も僕たちがしますが、こちら(運営側)がお金を出すことはないので、自分で(お金を)集めなければいけないですし、自分で考えて形として出さなくちゃいけない。開催日に辿りつくまでには、相当脱落していきます。
―――出展内容について、コンセプトに合う合わないものや、クオリティのレベルに関しては?
皿田氏:基本的にメインのコンセプトが「ツム=積む」なので、時間を掛けて、自分のオリジナルを積み上げてきた人なら誰でも何でも出展できます。でも山が低いほど、出す「場」を自分で作れないですね。

枠の中に納まらないと出せない、掛けた時間が少ない、クオリティが低い、また昨日今日考えて作ったモノでは場は持たないです。

堤氏:審査基準はほとんどないのですが、それよりも入ってからのプロセスが他のイベントより大変だと思います。普通のイベントなら、条件審査をクリアすれば通過できるというプロセスがありますけど、ツムテンカクの場合、その「条件」が無いんです。 

皿田氏:これだけじゃもたないなと思うとフォローアップもします。こういう人と一緒にやりませんか?こういうシュチュエーションでやってみませんか?というマッチングですね。すると急にクオリティが上がります。見たこと無い空間が出来たりしますから。
―――プロとアマは関係ない?
皿田氏:僕は個人的にはそう思います。クオリティが高い人も低い人も、プロもアマも「積み上げて発信する」という意味では同じ。でもクオリティが低いと、やはりお客さんからの直接的な反応も低くなるので、自然と淘汰されますね。

逆にクオリティの高いプロの方たちには予め、こういう場ですけど大丈夫ですか?と確認します。でもほとんどの方からは、一般の人達に見てもらうという場がないし、直接的な声を貰えるから有難いと言っていただけます。

堤氏:最初は懸念していましたけど、回を重ねるごとに気にならなくなりましたね。運営側としては年々クオリティの高い方に、どんどん参加してもらおうと意図的に目指しています。が、だからといってクオリティの低い人たちを切り捨てるということもないです。

皿田氏:もし世界的なバイヤーが来て、あの人面白いとなれば、次の日その人はスターになるかもしれない。そんな可能性もありますから、面白い面白くないの判断を僕たちができるのかということなんです。

素人にケが生えた感じに見える人も、実はすごいことをやってるのかもしれない。そこはあえて追求はしないでおこうと。でもギリギリでアブナいんですよ(笑)

山田氏:個人的には引くこともあります(笑)

皿田氏:うわーってね(笑)逆にいうと、街が整っているわけじゃないので、そういうシチュエーションがあっても全然おかしくないんです。

山田氏:青山でやるのとはワケが違うから(笑)

堤氏:ブルックリンみたいな場所と思ってる人も多いですからね。

皿田氏:そういう世の中になったんだと思うんです。今はWebを使って自己発信が相当できるようになった。昨日まで隣で喋ってた人が、ある日突然世界的なスターになるという可能性もある。だからこそヘンなモノサシは必要ないんです。そんな新しいムーブメントになると思いますね。
堤 庸策
建築デザイナー
 
1979年、東京都生まれ。徳島県育ち。国立阿南工業専門学校制御情報工学科3年修了。専門学校アートカレッジ神戸卒業。田頭健司建築研究所を経て、EU,USA放浪後、2006年フリーランスで活動開始。2008年設計事務所『arbol』設立。2010年GREEN BLUE株式会社設立。[受賞歴]2011年DSAディスプレイデザイン協会特別賞 地域賞受賞/2012年JCDデザインアワード2012金賞受賞

クリエーターズシェアオフィス FACTO http://facto.jp/
GREEN BLUE株式会社 http://www.green-blue.jp/
山田 敬宏
プロダクトデザイナー
 
1972年、愛媛生まれ。神戸芸術工科大学、工業デザイン学科卒業後、メーカー・デザイン事務所勤務を経て、1999年に有限会社リプル・エフェクトを設立。インターフェイス・プロダクトデザインを中心としたユーザーエクスペリエンスデザインを担当。日本デザイン・ソサエティ副代表。ヒューマンアカデミー大阪校 非常勤講師。[受賞歴]2009年sound innovation (designboom competition) 入選/2009年第10回シヤチハタニュープロダクトデザインコンペティション 美術出版社賞 受賞/2011年DSAディスプレイデザイン協会特別賞 地域賞受賞

有限会社リプルエフェクト
HP: http://www.ripple-effect.org/
皿田 亮朋
インテリアデザイナー
 
1974年、広島生まれ。大阪モード学園インテリア学科卒業後、株式会社ピクデザイン事務所にて、インテリアデザイナーとして商空間を中心としたデザインを手掛ける。商空間デザイン以外にも、商品開発から販売プロモーション・展示会までを一貫して行うデザインプロデュース集団『D×K』を共同主宰。[受賞歴]2005年大阪デザイナーズウィーク2005クリエイターズヘイベイ出展/2010年 JCDライジングデザイナーオブザイヤー2010ノミネート/2011年 DSAディスプレイデザイン協会特別賞 地域賞受賞

デザインプロデュース集団 D×K(ディーバイケー)
HP: http://design-by-k.com/

株式会社ピクデザイン事務所
HP: http://www.pcdesignoffice.com/
撮影:菅野 勝男/取材:2013年3月
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2013/03/14


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