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士業・プロとしてのこだわりとは vol.3

経営者のサポーターとして
松田氏:経営のサポートとしての存在ゆえに、経営面での判断を求められることもありますが、弁護士の先生にもありますか?

暁氏:経営判断の一つとしての法的なフレームのようなものは提案しますが、最終判断は経営者自身に委ねざるをえないですね。

でも、大阪の中小企業の社長に多いように思いますが、「わしゃ、わからん、あんた決めてくれ」という経営者も少なくないですね。とはいっても、出資もしていないのに、こちらが決めるというわけにはいきません。

松田氏:ひところのベンチャーがさかんなとき、士業の中にもチームを組んでベンチャー企業をサポートしようというのが多く見られました。

でも、なかなか成功事例が出なかった要因の一つに、製品の拠り所となる基本技術は完成した、そこまではいいけど、さてこれをどうやって作ろうとか、どうやって売ろうとかの前に、売った後の利益の何%が自分の取り分だと主張する経営者が多かったことだと思います。

利益を出すに当たって一番重要な生産技術や販路確保をまったくの他人任せにし、基本技術の開発者としての優位性ばかりを主張するというか(笑)。

そこでは、ある程度の経営サポートというか、経営者が商品として完成させ、それをどう売るのかについて、経営者自身が判断できるように持って行くことも重要だと思うんですね。

暁氏:そういうときは、やはりつっこんで、経営についてもアドバイスをするのですか?

松田氏:しますね。でも、自分の専門分野のみから見たアドバイスですし、そのための情報を頂戴できないと難しいですが。

暁氏:弁護士の場合、あまりクライアントの経営に関わり、入りこんでしまうと、冷静な視点を失ってしまう可能性があるので、それはかえってしないほうが良い場合があるように思いますね。でも、クライアントの想いは別で、やはり悩ましい部分ですね。

松田氏:私の場合、事業計画や今後の事業展開を考えて、この特許を取るとどうなるかというこちらの見解は言います。特許を取るというのは、コストもかかりますし会社の負担も大きい。どこまでの費用対効果を出せるか、そのあたりのさじ加減は難しいんですけどね。

でも、事業にとって「イケる」と思えば、我々の仕事は権利を発生させてナンボですから勝負に出ますね。
「正義」とは誰のためか
暁氏:案件を受けるとき、まずはそれがクライアントの利益になるか、それが社会的に意味があることなのかどうかを冷静に考えます。

もちろん、事務所の経営もありますから、自分の思いだけを優先するわけにはいきませんが、クライアントの想いに共感する場合には、経営的視点を一時的に忘れて戦うことを選択することもありますね。

少々、こちらが苦労すると思っても、できるところまでやはり勝負します。だけど、クライアントの利益にならないことや正しいと思えないことはやっぱり受けられない。
ここだけはゆずれない点ですね。

松田氏:正義がなければ、法を仕事とする我々は、他人の代理をやってられないのですが、自社の健全な経営があってこそ、正義云々なんですね。

すべては正義の上に立つという言葉は、正しく美しいかもしれませんが、それはある意味キレいごと。私たちも組織の長として、まず自社の運営が成り立って始めて他社を守る正義を貫けると思うんです。

暁氏:正義については、弁護士になったころから、その意味を考え続けえていますね。クライアントの利益が、相手方にとっては利益とならない。そこで思ったことは、それぞれの立場ごとに言い分がある、つまり立場が変れば正義もかわる。クライアントの立場の正義を守ることが我々の仕事なのかもしれません。

松田氏:クライアントの利益のためにアツくなる。これが私たちの共通する正義ですね
松田 朋浩
弁理士
朋信国際特許事務所 所長
 
特許等産業財産権取得のための手続代理その他の知的財産に関する法的サービスの提供、ブランディング、経営課題に合致した知的財産の発掘、発見、調査、権利行使の提案など幅広い業務を行う。機械全般、油圧機器、事務機器、メカトロ、ビジネスモデルなどに主な実績を持つ。また、実務家向けの特許翻訳に関するセミナーやベンチャー企業、OSAKA MUNICIPAL BUSINESS SCHOOL塾生を対象としたセミナー、産学提携の支援研究など、知的財産支援活動に積極的に取り組んでいる。大阪産業創造館 あきない・えーど経営サポーター(知財)/中小企業サポートネットワーク(スモールサン)ゼミOSAKA 副会長 朋信国際特許事務所
HP: http://www.hohshin.com
暁 琢也
弁護士

日本のみならず中国のクライアントも多数抱え、国内・国外の企業を相手方とする各種契約交渉、紛争対応等幅広い業務を行う。上海華東法政大学院で法学修士号を取得した経歴を有し、中国案件においては、中国の文化・習慣も踏まえたうえでの最良の紛争解決を行うことを得意とする。また、中国法務に関する論文・連載を多数執筆している。 また提携先の中国の法律事務所と協力し、現地対応等、事案に応じたサポートを行っている。日中法律家交流協会会員/大阪弁護士会渉外実務研究会幹事/近畿大学法学部非常勤講師(平成22年4月~現在) あかし法律事務所
HP: http://www.akashilaw.com
撮影:菅野勝男/取材:2011年11月

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