HOME» ■ CREATIVE #03 »人の想いを創る商業建築 vol.2
■ CREATIVE #03
人の想いを創る商業建築 vol.2
人が人を動かす

じゃあ、この建物をどういう建物にしたいかといったときに、このイメージを打ち出すには、どんな監督を起用して、どんな役者が出てくるか。
プロデューサー役の僕がストーリーのアウトラインを作って、それぞれの役の組み合わせを考えることだと思うんですね。だけど、監督がいない映画(建物)っていっぱいあるんですよ。
亀井氏:ノンフィクション?
西本氏:いや、「こんな感じ」ってストーリーも考えずに作っちゃうんですよ。文化祭みたいにね(笑)
亀井氏:ひとつのパターンね(笑)
西本氏:そうそう。じゃあ、なんでプロデューサーが大事かというと、有名な監督と有名な役者を揃えたからって良い映画はできないんですね。そもそも、そんなにお金のかかる人ばかり揃えて予算はどうすんのって(笑)
亀井氏:そうそう。いろんなしわ寄せが出ますよね。
西本氏:そうなると興行として成り立たない。でも、ある一方でお金はない。じゃあどうするのってなったときに、やりくりするのもプロデューサーの仕事ですね。
亀井氏:広報というか、PRも必要になりますしね。

そうなると作品のオーラも自然にできてくるんですね。大体が予算が足りないとなると、大抵の場合、監督が高いから変えようかとか、役者を安い人に変えようかとなる。
でも、それをしちゃうと考えていた世界観が表現できなくなるから、僕らはそこで削るんじゃなくて、舞台の予算を削るとか、見えない部分をやりくりする。
やっぱり、作る段階から、ロングラン興行になるにはどうしたら良いか、そこまで考えて建築をプロデュースする人が、いままで日本にいなかったということなんでしょうね。
亀井氏:そうですね。僕もめぐり合ったことがないですね。
西本氏:この業界でそのポジションを認めてくれるって、まだまだなところがあって、風当たりは強いですけどね(笑)
亀井氏:うーん。そうでしょうね。どうしても場所から入らざるを得ない現実ってあるから。。僕たち作り手って結局、超アナログですしね(笑)
でも、情熱がわかると、一生懸命作ろうとしますけどね。こんなん無理かもなあと思ってても、なんかそのクライアントの情熱みたいなものが乗り移って、うまくプランニングできることってあるんですね。パズルが解けるように。

今までと違うものを作ることって、やり方が不条理、難しいというより簡単で、根拠を持って主張すると意外と通る。
何も根拠がないことで違うやり方をするだけでは、ただの破壊者になってしまう。実はこうだからこうなんだよときっちり理論づけて、そこで面白いものを作ることがたぶん正解なわけで、でもそこまでの作業する人が少ないんですね。そこがすごく不満(笑)
いわゆる建築家でなくて、ただ「設計をする人」とか、施工者の中には従来のやり方に固執する人が多いですね。
亀井氏:うーん、なるほどね。おそらく西本さんって、ここまでのリスクを考えてるから、ここまで一緒にやろうよ、ということを言うんでしょうね。
後先まで考えてるよ、と言ってくれる。だから作り手は安心して一生懸命できるんですよ。後先のことを考えてくれる人が別にいる安心感から。
西本氏:実際、後先のことを考えないとできないですよ。でも、実際の現場って、「まあまあ、後でなんとかするから」って、結局なんともならないって多いですもんね。
亀井氏:そうそうそう。逆はいつまでをいくらで、ってことだけ。

誰かが、第三者が責任を持たなくちゃ。ただでも、ちゃんと説明していかないといけませんけどね。
亀井氏:僕ら建築デザイナーっていうのは、やはりコストやタイムマネジメントっていうのが一番問題になって、そこを軽減できれば、本来の「作る」ことに集中できますから、やっぱりそういう仕事ができるとうれしいですね。
西本氏:本来、プロデューサーがすべきことを、建築家の先生たちや施工者たちが肩代わりしすぎなところがあるんですね。
事業主がいて、施工者がいて、建築家がいて、やっぱりパワーバランスって存在する。そこでお互いの立場から、いろんな言いたいことも出てくるんですが、なんとなく言えない。。
でも、僕らプロデューサー役の人間が、あるときは事業主の立場で、あるときは施工者や建築家の立場でと、代わりに伝えていかなければ、良いものって作れない。そうやっていままでのやり方を変えていかないと建築の世界も不動産の世界も変わっていけない。というか、変えていかないと生き残っていけないですから。
2012/02/02