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■ CREATIVE #03

人の想いを創る商業建築 vol.3

良いものとは何か
亀井氏:今より良くなることっでますます難しい。いっそ、もう一度この建物を建てた時代のキャスティングに戻ってみるってどうなんだろう。

西本氏:いやーそれって僕は反対。この建物が建てられた時代って、今より格差が大きかったと思うんですね。今では考えられないコストと時間をかけて作っていたはずなんです。

今って、いくらお金があったとしても事業採算性を考えると、そんなにコストも時間もかけられない。建築はもう、一部の富裕層だけのものでなくなってるんですね。

できるだけ簡素化してシンプルな案件にして事業化する、その流れは今後も変わらないと思うんですね。なにがって、やっぱりコスト面ははずせない。

亀井氏:ヨーロッパでさえ、今は合理的ですからね。でも上海なんかは、驚くほどコスト(情熱)をかけた建物も増えてきています。

西本氏:昔よりもハードルは高くなってますね。モノに対する要求は高くなってる。けど、お金は出さない。でも良いものを作りたい。。

亀井氏:シンガポール、マレーシアなどの建築事情を見てても、この建物(船場ビルディング)に作り方が近いところってありますね。今の日本の合理化された建築事情には決してない。ということは、それが世界のスタンダードになる可能性もあるかもしれない。。

西本氏:建築家スタンスの発想だなあ(笑)でも、ある意味そういうスタンスで作ってもらわないと、僕らキャスティングするほうとしては困ることもありますけどね。まあ、規模というより、「この物件は世界で一番」という意気込みは欲しいですから。

亀井氏:うーん、きっと、そういう建物のほうが収益を産むわけだし、世界の人たちが来て、ここにこういうモノがあるんだと思われるものを作れる環境は欲しいですね。

西本氏:「良いものをより安く」って、どの業界でも言われてるわけですが、つまりどこまで踏み込むか。損益分岐を下げることにもなる訳だけれど、業界の掟破りなところに気にしないで踏み込んでいかないとできない。

これからますます、大企業と中小企業との格差って大きくなってきますから、中小企業にできることって、今までの常識を覆すこと。そこなんかなと思いますね。

亀井氏:まず西本さんが扱われてる商材ってデザインをきちっとされてる。そこから、高いものをどう安くするかを考えられてるんだと思いますね。だからこそ、出来上がったものも一流に見える。

東南アジアや中国の建築家も、そこをがんばってるんですね。どう安くするかということを一生懸命語り合ってる。それってすごく良いことだと思うんです。

日本にも、もっともっと使えるもののバリエーションが増えてくれば、デザインする人が楽しめて、情熱も注げることもできるし、よいものが作れるようになって、本物が生き残れるようになるんじゃないかなと思う。
本物とは何か
西本氏:実はクライアントには、最初の段階では、情熱ってなかなか明確になっていないか、気づいてないことが多いんですね。

大凡のクライアントの要望は収益を上げることであり、さらにそれを坪単価で考えるわけです。

ですが、僕はあえて、坪単価を上げることだけを考えずに、その建物の付加価値をつけることで、建物全体の収益を上げる方向で考える。そういう発想で、クライアントに提案してることはありますね。

亀井氏:ありますね。やはりイメージを言葉にするって、こちら側で提案することが多い。それを可視化することが僕らの仕事ですからね。

良いものが出来上がったときのドキドキする高揚感。実は自分の裸をみられるようで、ちょっと恥ずかしい・・・でも心地良い(笑)

西本氏:良いもの、本物って何かと考えると、やはり長く残るもの、つまりその街に長くあり続けるものなんですね。

それにはもちろん構造的にも、デザイン的にも、それに街並み、文化的にも見てよいものではもちろんあるんですが、さらに重要なのって「使われ方」。

使われ方が間違ってたら、借りてくれる人がいないから経済的に成り立たない。経済的に成り立たないと、結局は長く残らない。そうしたハードとソフトのバランスが取れたものこそが、「良い建築物」であり、本物だと思いますね。

亀井氏:僕らの仕事は芸術ではないので、その後どう使われているかは気になります。でもそれって、考えるだけでワクワクしますね。
西本 真悟
不動産コンサルタント
株式会社タグボート
 
不動産再生コンサルティング。省エネルギーコンサルティング。建築コスト削減のためのコンサルティング。不動産再生とは、用途やデザイン、機能が時代にマッチしなくなり、収益を生まなくなってしまった土地や建物を生まれ変わらせる仕事です。「その不動産の価値をもっとも引き立たせる使い途はなにか?」「その使い途で集まってきて欲しい人達はどんな人達か?」「その人達にもっとも訴えかけられるデザインをするにはどのデザイナーや建築家を起用するのが一番効果的か」それを実現するために必要なファイナンスやオペレーション、そしてそれを長期的に維持していく為のメンテナンスの分野までコンサルティングしています。

株式会社タグボート
HP: http://www.tug-boat.net/
亀井 晋
株式会社 H&K建築事務所
副所長
 
「企画」「デザイン」「構造」「設備」「保守」まで一貫した設計概念 に基き、顧客のあらゆる要望に応え、環境に配慮したより良い環境(省エネルギー)の創造を目指し、最適な空間を提供します。業務内容:建築物並びに都市開発、都市基盤の企画・設計及び工事監理

株式会社 H&K建築事務所
HP: http://www.kameidesigners.com/
撮影:菅野 勝男/取材:2012年2月

2012/02/02


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