■ MARKETING #03

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■ MARKETING #03

感性トレンドで見るマーケティング vol.3

次期アナログハード期の時代を乗り切るには

内藤氏: アナログソフトの気持ちを引きずったまま組織経営やリーダーシップをとっていると、時代の流れとは反してしまうかもしれないですね。

手塚氏: よく「君はどう思う?」と相手の話をゆっくり聞くような、いわばカウンセラータイプのリーダーは、これからはちょっとキツい。

そんなこと聞くよりも、ちゃんと指示してくださいという気持ちに、若い人は変わっていってしまいますから。

内藤氏: そうですね。ある程度の指針を示してくれって。

手塚氏: 向かう目的、理想像を見せてくれて、ひっぱっていってくれる人のほうが求められてくるんです。
内藤氏: そう考えると山本五十六というのは、それに近かったのかもしれない。
「やって見せ 言って聞かせてさせてみせ 褒めてやらねば人は動かじ」

手塚氏: ああ、たしかに。

内藤氏: どっちかというとまだアナログなので、完全に指示するというよりは、やりながらケアしていくのも大事ですね。山本五十六ってちょうど映画になりましたね。なにも今でなくても良いのに、ここで映画になるのはやはり意味があると思う。

手塚氏: リーダー像として求められてきてるんでしょうね。

内藤氏: 理想的なリーダーシップ像って時代時代に変わってくるので、それを察知しながら組織運営を変えていく必要はありますね。

手塚氏: NHKの朝のドラマ「カーネーション」のモデルになった小篠綾子さんの時代ってアナログソフト期のデザインなんですね。

フリルがいっぱいあって、複雑なデザインで、生地もお金かかってる。そんなアナログソフト期のデザインを量産してしまうという話が出てきます。でもこんなデザインは古いと思っているお嬢さんの直子は、イブサンローランのサックドレスのようなスッとしたものが良いと思ってるんだけど、お母さんはその良さがわからない。

ちょうど今と同じアナログソフト期からアナログハード期への切り替りの時代をやってるんですよ。お嬢さんたちはもうハード期に気持ちがいってるんだけど、お母さんの気持ちはソフト期に残ってしまっている。それで量産したドレスは売れなかった。
  内藤氏: 企業のトップも時代の流れに敏感であれば良いんですけど、これがなかなか難しい。

先日の講座でも経営者の方が何人かおられて、やはり男性は自分に感性があるとあまり思っていないんですね。

手塚氏: 男性は感じていても言葉で表現できない方が多いですから。

内藤氏: そう、右脳で感じてても左脳で出てこない傾向があるから、理論的に理解できると、なんとなくモヤモヤ思っていたことが、ああそうなんだって腑に落ちるみたいですね。

手塚氏: それと、ぱっと何か思いついて、さっと行動するタイプ。女性には圧倒的に多いんですけど、なんかわかんないけど売れてきたという方は要注意ですね。
人によってアナログ期で活躍できる人と、デジタル期で活躍できる人がいるんですけれど、女性は特にアナログのハードかソフトにピークが来る方が多い。

アナログソフト期の感覚って女性的なんですけど、コシノさんのお母さんはその時代だったからまくいった。でも、さあ時代が終わりになるって言ってもやっぱり自分の好きなことを続けてたいじゃないですか。でもそれでそのまま続けちゃうとコケてしまう。

内藤氏: 経営者は自分がやってきたことに対してものすごく自信がありますからね。

手塚氏: 売れると自信もついてこのやり方で良いんだって思っちゃう。だけど必ず続かない。

内藤氏: 2013年からは今まで持ってきたものをかなりリニューアルする必要がありそうですね。それはメジャーなブランドも同じですよね。

手塚氏: ブランドはそのイメージってものがあるから、急には変えられないし、真逆のことをすると「ブランドらしさを失う」って言われてものすごく嫌いますね。

内藤氏: シャネルなどのブランドってどうしてきたんですか?

手塚氏: シャネルって元々は男性的なデザインだったんです。スーツもドレスもシンプル。でもアナログソフトの時代は、カールラガーフェルトというデザイナーを採用して、女性的で、装飾過剰で複雑なデザインの洋服を売り出したんです。それがシャネルらしいかどうかは別で。でもそのカールラガーフェルトのデザインした服は売れましたね。

内藤氏: なるほど。じゃあ企業も時代に合わせて、例えばデジタルハードに強い企業ならアナログソフトな人を入れるってことですね。

手塚氏: そう。自分が全くキライなタイプと組めるかどうか(笑)
内藤氏: 企業経営ってそこですね。

手塚氏: そうなんですよ、それができるかどうかって大きい。でも器用な人なら自分が変わるってこともできますよ。

内藤氏: それはなかなか難しいんじゃないですか?(笑)
手塚氏: 結局のところ、たくさんメニューを揃えていた居酒屋さんが、ウチはこれが一番美味しいというものだけでやっていけるか。またそういうものを作り出せるかどうか。そういう戦略ですね。

内藤氏: それって実は難しい(笑)勇気がすごくいる。だって今まで売れてきたわけだから、ナゼわざわざ絞らなければいけないか理屈がわからないし、それでうまくいかなかったらどうしようって不安になるのが普通。でも変わらないといけないしで迷いますよね。

手塚氏: そう。まだまだいけると思う人って、このまま続けて、いつかどうしようもなくなったら考えようと思うから変えられない。同じ商品でいいんですよ。その見せ方とか、お客さんがどういう気持ちに変わってきてるかに合わせるだけなので、実はそんなに難しいことじゃない。

内藤氏: もう周りがじわじわと変わってきているはずなのでそれを察知すること。

手塚氏: 早いところはもう出てますね。飲食系などはかなり早い。

内藤氏: コンシューマーのほうがトレンドの変化に敏感ですから、BtoC事業で3年後の商品を今開発するといった企業となると、今のトレンドに合わせては危険。

まさに来年からは本質を見極めていくといった商品が売れていくと思いますよ。あの雑誌の付録についた「バッグ」ようなものはもうなくなっていく(笑)
  手塚氏: あれだけ増えたらもう欲しくないです(笑)

内藤氏: 付録のような付加価値よりも中身で勝負。やはり長くやってきた経験に意味がある。

手塚氏: こうなるとむしろ今まで不遇の時代をすごしてきたなと感じている方のほうがチャンスがあるかも。
内藤氏: 逆にね。自分の商品が売れなくなった人はもうダメかと思ってしまうんですが、人の気持ちって変わってくるので、突然ブレイクがまた戻ってくるかもしれない。

手塚氏: だけど、たいていの人はそのサイクルが戻ってくるまで辛抱できないですけどね。

内藤氏: 長くやってきたものをプロとして提供することが注目されてくる。今までは自己愛というか、ベクトルが自分で、自分さえよければの時代でしたが、これからは本質を望む「プロフェッショナル」という言葉が尊ばれますよ。

手塚氏: いつも勝ち続けている人っていないですからね。でも時代に求められていることを教えてくれる人が周りにいないといけませんけどね。

内藤氏: それに感性って脳の直感力ですからやっぱり健全な体が必要ですよ。

手塚氏: そうそう、情報って体の全方向から取得してて、それを顕在意識に持ってくるにはやっぱり健康と体力は必須。感性を鍛えるには、ずばりちゃんと朝日にあたる。早寝早起きと栄養ですね。

内藤氏: 朝日が昇るのを見るとやる気出ますからね(笑) 意外に原始的なことが重要で、まさに人間の本質なんですね。

手塚氏: ええ。感性を使わないと人生しょぼくなりますから(笑)

PROFILE

 
手塚 祐基 内藤 光一
Yuki Tetsuka Koichi Naito
感性アナリスト プロダクトデザイナー 感性アナリスト
株式会社感性リサーチ 株式会社感性リサーチ
感性リサーチ研究員
東京芸術大学卒業後21年間、腕時計デザインに携わる。 2006年、黒川伊保子氏に師事し感性理論を学ぶ。

現在は、語感分析、男女脳の嗜好性の違い、脳の感性が生む流行法則などの研究を生かし、製品開発コンサルティングや、アジアX主催シンガポール講演、筑波大学感性認知脳科学専攻研究セミナーなどの講演を行う。

大前研一のアタッカーズ・ビジネススクール補助講師
感性リサーチ研究員
1997年早稲田大学人間科学部卒業。
在学中、英国国立ランカスター大学で心理学を学ぶ。専攻分野は、動機付け理論、組織行動学。卒業後は、NTT東日本、外資系コンサルティング会社での勤務を経て、株式会社感性リサーチに研究員として所属。

現在は、感性アナリストとして、感性マーケティングの講師や企業のネーミングコンサルティングなどに携わる。

著書に「売れる!!ネーミングの秘密」(成美文庫)がある。
URL:http://www.kansei-research.com URL:http://www.kansei-research.com
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「感性トレンド・マーケティング」講座は下記にて行われています。
◆黒川伊保子氏の『感性マーケティング講座』
大前研一氏のアタッカーズ・ビジネススクール
http://www.attackers-school.com/course/kansei.html


 
 

2012/04/05


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