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■ CREATIVE #01

設計デザインと空間 vol.1

設計デザインと空間

今回は住宅・店舗・商業施設等を主に設計されている一級建築士のお二人、susumulabの森田ススム氏と株式会社A1・ID設計の井戸 正氏の対談です。対談場所は大阪・豊中市にあるA1・ID設計さんの「家づくりカフェ」。イタリア郊外のレストランのような、緑と光あふれるサロンで行いました。長年の大親友でいらっしゃるお二人は、普段からデザイン談義を重ねつつ、互いに譲らない良きライバルでもあるそうです。今回の対談では、いつも通りのスタイルでというご希望で、ワインを飲みながらのディープトークになりました。クリエイティブでプロフェッショナルな世界を本音のみで語っていただきました。
デザイン(設計)とは空間を創ることでしょうか
森田氏:えらい話やな。

井戸氏:空間っていうか場所?

森田氏:場所と空間は違う。

井戸氏:こういう空間を作ろうと思ってやってるわけじゃないからなあ。

森田氏:人によっては、「状況」という言葉を使ったり、「場」という言葉になったり。

井戸氏:たとえば、ここ(井戸氏設計事務所内の「家づくりカフェ」)だったら、お客さんに気持ちよく居てもらいたいという想いがあったから、そこが先やね。こんな空間を作りたいではなくて、想いが先かな。

森田氏:ボクは、空間が先にあることもあるな。逆にそういうところに引っ張り込んで、何かが出てくることもあると思うから。

井戸氏:それって「ヒラメキ」なんやない?クライアントと話して、場所見て、敷地見て、それだったら、こんなんが良いかなというカタチのヒラメキ。イメージっていうか。

森田氏:カタチになってるわけじゃないんだけど、空気みたいなものだと思う。床があって、壁があって、天井があって、その位置関係とか、テクスチャーとかで空間ができるわけなんだけど、そういうものじゃなくて、本来作りたいものは、「場」というか、あ、これだったら、こういうことかなっていう、その想いのようなものが降りてくるということがあるなあ。

井戸氏:そこって一番面白い。そういうヒラメクところ。それを原点に、話し込んでいくと結果そうなってくることって、醍醐味やね。

森田氏:そういうの、わりとある?

井戸氏:まあ、あるね。

森田氏:こんど郷土資料館みたいなのをやるんだけど、明治時代の木造建築。まだ現地に行ってないけど、デジカメの小さい写真だけちらっと見た。だけど、ヒラメクんやね。ヒラメキってのは、決してカタチにこだわっているわけじゃないんよ。

井戸氏:あるよね。こういうのかなってのが。

森田氏:そうそう。

井戸氏:そういう人と仕事したいよね。

森田氏:基本的には、そういう人としか仕事できないね。

井戸氏:森田君の場合は、一人で考えて組み立てていけるよね。ウチの場合は、スタッフがいるから、みんなの気持ちもあるし、いろいろあるけどね。

森田氏:そこが一番、ボクらの場合、違いとして面白いよね。そっちは組織やけど、こっちは一匹狼。基本的には、わがままだから、気に入らんときは、バックレるし(笑)。

井戸氏:うん。バックレるよな(笑)。

森田氏:みんなで作るって、最終的には一つの結論に導いていくわけで。でもチームでないとできないことってある。ボクだったら自分の名前で動いているけど、井戸さんとこの場合はさ、みんなで作ったものということになるんやね?

井戸氏:みんなで作ってるけど、自分は参加してるってカタチ。中心になることもあるし、パーツで参加することもある。それが楽しい。そのほうが、良いものができることがある。

森田氏:それって肩の力が抜けてるっていうか、要するに客観的に見れるからいい。

一人で入り込むときに一番ダメなのがそこ。コンペなんかのときに一番思う。自分が一番と思い込んでるから、落ちたときって結構ヘコむ(笑)。

井戸氏:オレも2つ負けた。

森田氏:2つくらいやったら、いいやん。

井戸氏:何に負けたと思う?スタッフのアイデアに負けた。

森田氏:あーそれはさ、それも含めた「井戸さんとこの設計」だから、それでいいの。

井戸氏:だってちょっと淋しいやん(笑)。

森田氏:あーそれは社長としてのプライドやね。そんなもん早く捨てたほうが良い(笑)。

井戸氏:いや、困るわ(笑)。

森田氏:以前、ものすごく考えて、深いしくみの設計を作ったのに、佳作にもならなかったことがある。なんでこれが!と思ってショックやったな。

井戸氏:思うような形にして、認めてもらおうと思ったら、ボクは、みんながいなかったらできてないよね。今回の幼稚園のデザインもそうやね。模型の引きがよかった。スタッフが作ったんだけどね。

森田氏:必ず模型?

井戸氏:うん、必ず模型。でも、最終的になにが決め手になったかっていったら・・

森田氏:人柄やろ?

井戸氏:うん 人柄。って、なによ(笑)。

森田氏:きっと、なにかありそうと思われたんだ。ギャンブルやな。

井戸氏:違うって、信頼感(笑)。ま、でも、特別スゴイこともないし、悪いところもないって感じだけど。

森田氏:特別スゴイこともないってことは、たとえば、幼稚園である以上、子供たちが持ってる感性や感覚を育てるために何が必要かというと「場所」。

建物って、そんなに「幼稚園です」ってやる必要はない。ぼくならそういうコンセプトでいくな。子供たちが主人公になれるように、いつでも戻ってこれるようなものとか。

井戸氏: それそれそれ。

森田氏:そこになーんか、タコみたいなもの作ったって、それでどうなの?て話でしょ。

井戸氏:戻ってきたくなるっていうのは、子供たちに、小さい頃の「原風景」を作りたいということ。ウチの住宅づくりのコンセプトと同じやね。

森田氏:「普通」ってのは、かんたんなことじゃない。普通を普通にするって難しい。

そこに居て欲しい子供のことを考えたら、一番大事なとこって、ここなんやろ?この、ど真ん中。(園庭)

井戸氏: そそ。なんでそんなのわかるん?プロ?(笑)。

森田氏:天才やからな(笑)。

2011/11/11


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